ドイツの極右「クーデター」は国家治安部隊がお膳立てしたのではないか?(要点)
キット・クラレンバーグ氏の記事の要点。ドイツ史上最大の強制捜査は、偽旗作戦の一部だったのではないかと云う推測を述べている。
Suspicions of state security set-up in Germany’s far-right ‘coup’

2022/12/07、ドイツ史上最大規模の警察の強制捜査が行われた。3,000人の警官が、ドイツ全土とオーストリアとイタリアにまで及ぶ130の施設を強襲した。この結果、ドイツ政府転覆を企てたとして25人が逮捕され、議会を襲撃し、議員を逮捕し、貴族のハインリヒ13世ロイスが率いる君主制を復活させようとしいたとして告発された。
逮捕されたグループは Reichsbürger(帝国市民)と云う運動の一部で、これはドイツ連邦共和国の正当性を否定していると言われている。この国は実際には主権国家ではなく、第二次世界大戦後に米国と英国によって設立された企業だと云うのだ。
有名人や国会議員数名も逮捕された。逮捕の現場にはジャーナリストの一群が招待され、リアルタイムでその様子が記録され、世界中の報道機関に略瞬時に写真が配られた。逮捕された各容疑者に対して125人の警官が動員された計算になるが、この比率は明らかに異常で過剰だ。
シュピーゲル等の主要紙がこの件について詳細な記事を公開した素早さを考えると、特定の記事は襲撃の前に予め用意されていたのではないかと推測する人も居る。ドイツ公共放送連盟のジャーナリスト、ゲオルグ・ハイルはこの前日に「明日は多くの『独占』記事が出回るだろう」とツイートしているが、これはその後削除された。
ドイツ国営放送DWは、彼等が政府を打倒する現実的な見通しを持っていなかったことを認めているにも関わらず、多くの政府当局者達は、陰謀家達は危険で狂っていると云う話を広め、それを理由に、既に厳格な銃規制を更に強化すると云う主張を行った。
2021年4月、ロックダウンに対する大規模な抗議行動を受けて、ドイツ連邦憲法擁護庁(Bundesamt für Verfassungsschutz/BfV。日本の公安調査庁の様な組織)は新しい監視用のカテゴリーを発表したが、今回の動きはこうした治安・諜報機関による国民監視の権限を拡大することは確実だ。ロックダウンに対する抗議はCOVID-19制限の対象にはならないと憲法裁判所が裁定を下していたにも関わらず、実際には数千人が逮捕された為、これはドイツの三権分立をも侵害する動きだ。
帝国市民の支持者21,000人の内、BfVが「極右」と推定しているのは約5%に過ぎないが、BfVは国内の極右に対して広範囲に監視と浸透を行っている為、この数字の信頼性は高い。
2001年、超ナショナリスト組織である国民民主党(NPD)の合憲性が連邦憲法裁判所で争われた時、その多くのメンバーと要人が、BfVの覆面捜査官や情報提供者であることが判明して、調査は2003年に崩壊した。つまり極右組織が、全てではないにしてもその一部が国家資産だったことが暴露されてしまった訳で、例えば反ユダヤ主義のパンフレットは秘密捜査官が書いたものだった。
2011年にNPDの禁止を求める要求が出された時、BfVは反対したが、130人の情報提供者(半分はネオナチ)のネットワークが崩壊してしまうと云うのがその理由だった。
2022年4月になって初めて帝国市民がBfVのアンテナに引っ掛かったと云う公式の物語は信じ難い。帝国市民は2020年3月に9人の移民が死亡した発砲事件の後、中央政府によって禁止されているし、BfVの2021年の年次報告書でも取り上げられている。BfVはかなり早い段階で陰謀の詳細を把握していたと、BfVの局長も証言している。少なくとも、BfVの工作員が組織内に浸透するだけの時間的余裕は十分に有った筈だ。
逮捕劇は当初「第四帝国が回避された?」とまで騒がれたが、当局は何故その後沈黙を守り、12/12に連邦議会で一連の非公開の会議が開かれた他は、音沙汰無し。この展開も不自然だ。
メディアの突然の沈黙は、2017年の別のクーデターの陰謀で逮捕された極右「フランコA」が、実際にはドイツの精鋭特殊部隊司令部のより広範な計画 "Day X" の一部であったことが判明した時の展開を思い起こさせる。この時件はその後紆余曲折は有ったが、連邦軍内に極右感情が広まっているのではないかとの疑念を引き起こした。
現在のドイツがネオナチやファシストの本拠地であるのは事実だが、彼等が国の憲法秩序を脅かす可能性は殆ど無い。但し国家社会主義地下組織(NSU)は多くのBfVの情報提供者と直接、定期的に接触しており、間接的に諜報部から資金を受け取っていたことが確認されている。第二次大戦後、NATOは秘密のファシスト軍のネットワークを組織して、暗殺やテロ等を実行させてそれを左派の仕業に見せ掛けると云う作戦を繰り返し(有名なのはイタリアの「グラディオ」)、これを「治安対策強化」の口実として利用して来た歴史が有る。
2022年を通して、食料・エネルギー不足に対する大規模な抗議行動が繰り返されて来ており(大手メディアでは殆ど報道されていない)、ショルツ政権に対する支持率は既に大幅に低下している。ウクライナへの武器援助と対ロシア制裁に反対するAfD(ドイツの為の選択肢)に対する支持率は記録更新に迫っており、2024年の国政選挙がどう転ぶかは分からなくなって来ている。
西洋諸政府は最早COVID-19パンデミックの恐怖を煽って大量監視や言論統制、社会的統制システムの拡大を正当化することが出来なくなっている為、新たなテロの脅威を煽っている。ドイツの諜報部が偽旗テロ計画を望んでいたとしたら、「極右のクーデター阻止」はこの思惑にピッタリだったと言える。
Suspicions of state security set-up in Germany’s far-right ‘coup’

2022/12/07、ドイツ史上最大規模の警察の強制捜査が行われた。3,000人の警官が、ドイツ全土とオーストリアとイタリアにまで及ぶ130の施設を強襲した。この結果、ドイツ政府転覆を企てたとして25人が逮捕され、議会を襲撃し、議員を逮捕し、貴族のハインリヒ13世ロイスが率いる君主制を復活させようとしいたとして告発された。
逮捕されたグループは Reichsbürger(帝国市民)と云う運動の一部で、これはドイツ連邦共和国の正当性を否定していると言われている。この国は実際には主権国家ではなく、第二次世界大戦後に米国と英国によって設立された企業だと云うのだ。
有名人や国会議員数名も逮捕された。逮捕の現場にはジャーナリストの一群が招待され、リアルタイムでその様子が記録され、世界中の報道機関に略瞬時に写真が配られた。逮捕された各容疑者に対して125人の警官が動員された計算になるが、この比率は明らかに異常で過剰だ。
シュピーゲル等の主要紙がこの件について詳細な記事を公開した素早さを考えると、特定の記事は襲撃の前に予め用意されていたのではないかと推測する人も居る。ドイツ公共放送連盟のジャーナリスト、ゲオルグ・ハイルはこの前日に「明日は多くの『独占』記事が出回るだろう」とツイートしているが、これはその後削除された。
ドイツ国営放送DWは、彼等が政府を打倒する現実的な見通しを持っていなかったことを認めているにも関わらず、多くの政府当局者達は、陰謀家達は危険で狂っていると云う話を広め、それを理由に、既に厳格な銃規制を更に強化すると云う主張を行った。
2021年4月、ロックダウンに対する大規模な抗議行動を受けて、ドイツ連邦憲法擁護庁(Bundesamt für Verfassungsschutz/BfV。日本の公安調査庁の様な組織)は新しい監視用のカテゴリーを発表したが、今回の動きはこうした治安・諜報機関による国民監視の権限を拡大することは確実だ。ロックダウンに対する抗議はCOVID-19制限の対象にはならないと憲法裁判所が裁定を下していたにも関わらず、実際には数千人が逮捕された為、これはドイツの三権分立をも侵害する動きだ。
帝国市民の支持者21,000人の内、BfVが「極右」と推定しているのは約5%に過ぎないが、BfVは国内の極右に対して広範囲に監視と浸透を行っている為、この数字の信頼性は高い。
2001年、超ナショナリスト組織である国民民主党(NPD)の合憲性が連邦憲法裁判所で争われた時、その多くのメンバーと要人が、BfVの覆面捜査官や情報提供者であることが判明して、調査は2003年に崩壊した。つまり極右組織が、全てではないにしてもその一部が国家資産だったことが暴露されてしまった訳で、例えば反ユダヤ主義のパンフレットは秘密捜査官が書いたものだった。
2011年にNPDの禁止を求める要求が出された時、BfVは反対したが、130人の情報提供者(半分はネオナチ)のネットワークが崩壊してしまうと云うのがその理由だった。
2022年4月になって初めて帝国市民がBfVのアンテナに引っ掛かったと云う公式の物語は信じ難い。帝国市民は2020年3月に9人の移民が死亡した発砲事件の後、中央政府によって禁止されているし、BfVの2021年の年次報告書でも取り上げられている。BfVはかなり早い段階で陰謀の詳細を把握していたと、BfVの局長も証言している。少なくとも、BfVの工作員が組織内に浸透するだけの時間的余裕は十分に有った筈だ。
逮捕劇は当初「第四帝国が回避された?」とまで騒がれたが、当局は何故その後沈黙を守り、12/12に連邦議会で一連の非公開の会議が開かれた他は、音沙汰無し。この展開も不自然だ。
メディアの突然の沈黙は、2017年の別のクーデターの陰謀で逮捕された極右「フランコA」が、実際にはドイツの精鋭特殊部隊司令部のより広範な計画 "Day X" の一部であったことが判明した時の展開を思い起こさせる。この時件はその後紆余曲折は有ったが、連邦軍内に極右感情が広まっているのではないかとの疑念を引き起こした。
現在のドイツがネオナチやファシストの本拠地であるのは事実だが、彼等が国の憲法秩序を脅かす可能性は殆ど無い。但し国家社会主義地下組織(NSU)は多くのBfVの情報提供者と直接、定期的に接触しており、間接的に諜報部から資金を受け取っていたことが確認されている。第二次大戦後、NATOは秘密のファシスト軍のネットワークを組織して、暗殺やテロ等を実行させてそれを左派の仕業に見せ掛けると云う作戦を繰り返し(有名なのはイタリアの「グラディオ」)、これを「治安対策強化」の口実として利用して来た歴史が有る。
2022年を通して、食料・エネルギー不足に対する大規模な抗議行動が繰り返されて来ており(大手メディアでは殆ど報道されていない)、ショルツ政権に対する支持率は既に大幅に低下している。ウクライナへの武器援助と対ロシア制裁に反対するAfD(ドイツの為の選択肢)に対する支持率は記録更新に迫っており、2024年の国政選挙がどう転ぶかは分からなくなって来ている。
西洋諸政府は最早COVID-19パンデミックの恐怖を煽って大量監視や言論統制、社会的統制システムの拡大を正当化することが出来なくなっている為、新たなテロの脅威を煽っている。ドイツの諜報部が偽旗テロ計画を望んでいたとしたら、「極右のクーデター阻止」はこの思惑にピッタリだったと言える。
- 関連記事
-
-
アヘン収入の厄介な問題(要点) 2023/02/20
-
麻薬がウクライナ軍を通じて欧州に溢れ返る(要点) 2023/02/20
-
ドイツの極右「クーデター」は国家治安部隊がお膳立てしたのではないか?(要点) 2023/02/19
-
カセム・ソレイマニ将軍:レジスタンスの指導者、戦略家、家庭的な男 2023/02/18
-
ウクライナ:平和を求めて(抜粋) 2023/02/17
-
スポンサーサイト