現代世界を生き抜きたいなら、先ずは巨大な嘘を見抜こう
Anthony Cartalucci(現Brian Berletic)、Nile Bowie 著、Subverting Syria: How CIA Contra Gangs and NGO's Manufacture, Mislabel and Market Mass Murder のレビュー。
マスコミが所謂「シリア内戦」と表現している出来事の真相については、私は数年間見抜けなかった。まぁ2011年と云うと、他の多くの日本人と同じく、私もまた国内問題で頭が一杯であって、個人的にも(災害とは関係無いのだが)生活が激変したことも有って、とても他国の問題にまで頭を使う精神的な余裕が無かった。きちんと向き合おうと思ったのはそれから二、三年して生活が落ち着いてからだ。TVや新聞が伝えていることが恐らく極めて歪んでいて、嘘も混じっているであろうことは、行間を読めば容易に推察出来たのだが、語られていない所で具体的にどんな力学が働いているのかが解らない。取り敢えず思い付く儘あれこれ調べてみて判ったのは、日本語環境では(他の多くの国際問題についてもそうだが)この問題の表面的なことしか知ることは出来ない、と云うことだ。まぁ日本のTVや新聞なんてのは、私は昔からCIAの手先のプロパガンダ機関程度にしか思っておらず、元々期待していなかったのだが、代替メディアであるオンラインの独立系のニュースサイトや、書籍に関しても事情は同様で、TVや新聞が隠し事をしたり事実を歪曲したり嘘を吐いたりしていると云うことまでは突き止めることが出来たものの、それだけではどうにも腑に落ちない点が多かった。後から振り返れば、これらは質の高いジャーナリズムや地政学分析の水準を満たしていなかったのだと解る。
それでまぁ、外国(と言っても略英語圏だけだが)の情報源を頼りにしてみたものの、これも後から振り返ってみれば、西洋諸国の大手メディアはこの時点で既に完全に大政翼賛化していたので、これも殆ど役に立たなかった。資本の集約、オールド・メディアの衰退に伴う報道の質の劣化とスポンサーの影響力の増大、インターネットの普及による収益構造の変化、9.11後の西洋社会全体で繰り広げられたこれまで以上の言論統制等々によって、西洋社会の大手メディア業界からは、言論の自由の多様性などとっくに失われ、大企業メディアは殆ど諜報部と一体化してしまい、完全に新冷戦プロパガンダのマイクロフォンと化していたのだ。個人的に特に混乱させられたのが、アル=ジャジーラの変質だ。アラブ世界初のグローバル・メディアとして、私は比較的信頼の置けるメディアだと思っていたのだが、スポンサーであるカタール政府がシリア侵略に加担した所為で、アッと云う間に他と変わらないフェイクニュース満載の西洋のプロパガンダ装置のひとつに成り下がってしまった。後に当時の辞任した元幹部がインタビュー記事で、「15年掛けて作り上げて来たものを、半年で失ってしまった」と嘆いていたのを覚えている。アル=ジャジーラは他の西洋大手メディア同様、今でも質の高い記事を発表することも有るが、基本的に国際情勢については新冷戦プロパガンダ・マシンの一部として機能しているので、要注意だ。恐らく大量のフェイクニュースの塊である西洋大手メディアのゴミ報道からも、きちんと行間を読めば、或る程度までは真相に辿り着くことが出来たのではないかとも思うが、こう思うのはまぁ後知恵であって、実際に適切に行間を読んで点と点を繋いで状況の全体像を導き出すには、それ相応の知識と熟練が必要だったろう。取り敢えず嘘も含めて集められるだけの情報を集めて篩い分け作業を続けてみれば、その内真相が見えて来るのではないかと思って、無差別な情報収集を行なってみたことも有ったが、これは失敗に終わった。やはり最初から嘘と事実とをきっちり区別するには、もっと知識と経験の有る人の導きが必要だ。
私の真相究明作業はここで行き詰まってもおかしくなかったのだが、幸いなことに、ネットの世界には広大な別の選択肢達が広がっていた。この時期、大本営メディアからは本物の反戦ジャーナリストや識者が完全に姿を消す一方で、そこから排除された多くのジャーナリストやアナリストや研究者達が、雨後の筍の様に次々と新しいニュースサイトやブログ等を立ち上げたのだ。どうやら私の求めていた情報を提供してくれるらしい Global Research や Antiwar.com 等の数々の非常に質の高いニュースサイトや言論サイトから徐々に裾野を広げ、ヴァネッサ・ビーリィ氏やエヴァ・バートレット氏の様な、実際にシリアを訪れて調査を行っているジャーナリスト達の存在や、シリア状況も含めて、国際報道の嘘についてデバンキングを行っている無数の優秀な情報発信者達の存在を知ることが出来たのだ。これらは指数関数的に相互作用を及ぼし、戦争プロパガンダの嘘を見抜く主な方法が本だった時代とは比べ物にならない位、嘘を見抜くのに必要な情報に辿り着く速度と範囲を飛躍的に高めた。インターネットの普及はまた、一般市民が一次ソースを確認する能力をも劇的に高めた。情報をマスコミが殆ど独占していた時代は終わり、テクノロジーの向上と普及が齎した情報の民主化とでも呼ぶべき事態が、人々の世界観や言説空間の在り方を根底から変革し始めたのだ。これに適応出来た人間は、場合に依っては殆どリアルタイムで嘘を見抜くことが出来る様になるし、次にどんな嘘が繰り出されるのか予想出来ることも有る。
但しこれは自分が何を探すべきかを心得ている人達に限った話であって、SNSの普及はまた、戦争プロパガンダの嘘に反対すると云う意味での反戦主義者が、西洋諸国では最早絶滅危惧種になってしまった現状をも暴露した。戦争に反対するには何よりも先ずその戦争が正確に何を意味しているのかを理解せねばならないのだが、新冷戦プロパガンダの拡大強化に合わせて自分の頭をアップデート出来ている市民は殆ど居なかったのだ。その結果、完全に新冷戦モードに洗脳され切った人々が当たり前になり、嘘ではなく本物の戦争に反対する人々は、陰謀論者だのロシアや中国の工作員だのと呼ばれて、メジャーな言論空間に於ては完全に周辺化されることになった。情報技術の革新はメディア・リテラシー格差の拡大を齎し、世界観の二極化を引き起こした。これが最も顕著に浮き彫りにされたのは2022年以降新たなフェーズに入ったウクライナ紛争だ。西洋の新冷戦プロパガンダの嘘を鵜呑みにする人達は、自分では戦争に反対しているつもりで第三次世界大戦を支持し、戦争プロパガンダの嘘を批判する人達は、前者から戦争を支持している狂人だ、ロシアの工作員だと罵られ、その言論の自由を行使する場を制限されている。
シリア「内戦」と呼ばれているものは、実際には西洋諸国・湾岸諸国・トルコ・イスラエルによる、イスラム過激派を代理勢力として利用したハイブリッド・テロ侵略戦争だ。所謂シリア「内戦」報道なるものは、一から十まで嘘で固められたフェイクニュースの塊だ。こうした心理戦(NATOの新用語を使えば「認知戦」)が常態化した現実を生き抜くには、与えられた情報を常に疑い、その真贋を確認する能力と習慣が不可欠になる。その為には、正しい情報にアクセスする為の経路を日頃から自分なりに模索しておく作業が重要だ。戦争プロパガンダに洗脳されてしまうと、「敵」、つまり帝国が標的とする対象を非人間化することに、何の疑問の躊躇いも抱かなくなる。日々垂れ流される「人権侵害」「独裁者」「権威主義体制」「侵略者」「軍事的脅威」等々のフレーズは、こうした非人間化を促す為の心理的トリックだが、こうした「相手は道徳的に劣った存在だ」と云うメッセージの洪水に慣らされてしまうと、相手の立場に立って物事を考える想像力が失われ、相手を理解する為に知識を得ようとする意思が消滅してしまう。そうならない為には、物凄く時間と手間の掛かることでは有るが、ひとつひとつの嘘に根気強く抵抗して行かなくてはならない。
私が本書を読んだのは2019年にもなってからで、この頃には本書で指摘されている様な諸事実は既に粗方知ってしまっていたのだが、それでもやはり状況を再確認する為には読んで良かったと思う。この本の初版は2012年だそうだが、この本には私が最初に知りたかった基本的な情報が詰まっている。もっと早くにこの本の存在を知っていれば、あれこれ試行錯誤する必要も無かったのに………とは思うが、まぁその試行錯誤の過程で私も色々と学習したので、それが無駄だったとは思わない。
著者の一人、ナイル・ボウイ氏はアジア・タイムズの特派員。もう一人のアンソニー(トニー)・カタルッチ氏は地政学分析に優れた方で、私は Global Research への寄稿で知ったのだが、2021年からは Brian Berletic と云う名(こちらが本名らしい)で、主に The New Atlas と云う Youtubeチャンネルで情報発信を行っている。私自身もそうなのだが、検閲が強化された為にTwitter等のプラットフォームから現在追放されている。軍隊経験者と云うことも有って、軍事に関する分析には定評が有り、2022年にウクライナ紛争が新フェーズに入ってからは、彼の戦況分析動画は、かなりマイナーな分野であるにも関わらず、投稿したその日の1万ビューを超えるのが常だ。デバンキング作業を行うに当たって、無論彼は自分の主張を裏付ける諸々のソースを挙げる訳なのだが、その作業が実に丁寧で、視聴者や読者が自分でその作業を追試することが出来るように常に気を配っており、個々の情報の軽重を判断する為のヒントも色々与えてくれている。単に結論だけを一方的に与えられるのではなく、「何故その結論が正しいと言えるのか」と云う検証プロセスに関心が有る方にお薦めだ。情報リテラシーを鍛えたいなら、こうした地道な作業を積み重ねて行く経験が何より重要だろう。
今は戦時だ。マスコミの「戦争報道」なるものは、実際にはそれ自体が戦争遂行の一部であって、大衆洗脳の為の心理攻撃だ。自立した思考を養い、権力者に騙されずに生き、本当に戦争に反対したいなら、与えられた情報は全て一旦カッコに入れる必要が有る。シリア「内戦」、ロシアによるウクライナ「侵攻」や「対ロシア制裁」、中国の「ジェノサイド」や「軍事的挑発」、DPRKの「核の脅威」、COVID-19「パンデミック」やパンデミック「対策」、「SDGs」や「気候変動」etc………挙げればキリが無いが、全ては嘘に基付くプロパガンダだ。別に私がここで言ったことを信じる必要は無い。全て自分自身で検証して判断すれば良い。問題なのは、洗脳された人々は検証せず、事実を確認せず、現実を直視せず、それを全く問題だとは思わないことだ。彼等は事実に合わせて自分の考えを変えるのではなく、自分の信念に合わせて事実を取捨選択したり捻じ曲げたりする。嘘を暴くことは嘘を吐いたり嘘を信じたりすることよりも難しいし面倒だが、彼等は簡単な道を選ぶ。それではいけない。自分が洗脳されていたことは、洗脳が解けた後でしか気付けないが、早目に気が付いておけば、被害も浅くて済む。洗脳状態が深まると、その信念体系は現実を無視して自己拡大再生産の悪循環に陥って引き返すのがより難しくなる。そうなりたくなければ、個人として先ず出来ることは、健全な懐疑精神を保持し、文脈を理解するのに必要な知識を学び、与えられたひとつひとつの情報について判断を急ぐ前に確認するのを怠らないことだ。本書も含めて、その助けとなってくれる足掛かりは探せば色々と存在する。だが探さなければ見付からない。情報ガラパゴス化が著しい日本人は、特に必死にならないとヤバい。
マスコミが所謂「シリア内戦」と表現している出来事の真相については、私は数年間見抜けなかった。まぁ2011年と云うと、他の多くの日本人と同じく、私もまた国内問題で頭が一杯であって、個人的にも(災害とは関係無いのだが)生活が激変したことも有って、とても他国の問題にまで頭を使う精神的な余裕が無かった。きちんと向き合おうと思ったのはそれから二、三年して生活が落ち着いてからだ。TVや新聞が伝えていることが恐らく極めて歪んでいて、嘘も混じっているであろうことは、行間を読めば容易に推察出来たのだが、語られていない所で具体的にどんな力学が働いているのかが解らない。取り敢えず思い付く儘あれこれ調べてみて判ったのは、日本語環境では(他の多くの国際問題についてもそうだが)この問題の表面的なことしか知ることは出来ない、と云うことだ。まぁ日本のTVや新聞なんてのは、私は昔からCIAの手先のプロパガンダ機関程度にしか思っておらず、元々期待していなかったのだが、代替メディアであるオンラインの独立系のニュースサイトや、書籍に関しても事情は同様で、TVや新聞が隠し事をしたり事実を歪曲したり嘘を吐いたりしていると云うことまでは突き止めることが出来たものの、それだけではどうにも腑に落ちない点が多かった。後から振り返れば、これらは質の高いジャーナリズムや地政学分析の水準を満たしていなかったのだと解る。
それでまぁ、外国(と言っても略英語圏だけだが)の情報源を頼りにしてみたものの、これも後から振り返ってみれば、西洋諸国の大手メディアはこの時点で既に完全に大政翼賛化していたので、これも殆ど役に立たなかった。資本の集約、オールド・メディアの衰退に伴う報道の質の劣化とスポンサーの影響力の増大、インターネットの普及による収益構造の変化、9.11後の西洋社会全体で繰り広げられたこれまで以上の言論統制等々によって、西洋社会の大手メディア業界からは、言論の自由の多様性などとっくに失われ、大企業メディアは殆ど諜報部と一体化してしまい、完全に新冷戦プロパガンダのマイクロフォンと化していたのだ。個人的に特に混乱させられたのが、アル=ジャジーラの変質だ。アラブ世界初のグローバル・メディアとして、私は比較的信頼の置けるメディアだと思っていたのだが、スポンサーであるカタール政府がシリア侵略に加担した所為で、アッと云う間に他と変わらないフェイクニュース満載の西洋のプロパガンダ装置のひとつに成り下がってしまった。後に当時の辞任した元幹部がインタビュー記事で、「15年掛けて作り上げて来たものを、半年で失ってしまった」と嘆いていたのを覚えている。アル=ジャジーラは他の西洋大手メディア同様、今でも質の高い記事を発表することも有るが、基本的に国際情勢については新冷戦プロパガンダ・マシンの一部として機能しているので、要注意だ。恐らく大量のフェイクニュースの塊である西洋大手メディアのゴミ報道からも、きちんと行間を読めば、或る程度までは真相に辿り着くことが出来たのではないかとも思うが、こう思うのはまぁ後知恵であって、実際に適切に行間を読んで点と点を繋いで状況の全体像を導き出すには、それ相応の知識と熟練が必要だったろう。取り敢えず嘘も含めて集められるだけの情報を集めて篩い分け作業を続けてみれば、その内真相が見えて来るのではないかと思って、無差別な情報収集を行なってみたことも有ったが、これは失敗に終わった。やはり最初から嘘と事実とをきっちり区別するには、もっと知識と経験の有る人の導きが必要だ。
私の真相究明作業はここで行き詰まってもおかしくなかったのだが、幸いなことに、ネットの世界には広大な別の選択肢達が広がっていた。この時期、大本営メディアからは本物の反戦ジャーナリストや識者が完全に姿を消す一方で、そこから排除された多くのジャーナリストやアナリストや研究者達が、雨後の筍の様に次々と新しいニュースサイトやブログ等を立ち上げたのだ。どうやら私の求めていた情報を提供してくれるらしい Global Research や Antiwar.com 等の数々の非常に質の高いニュースサイトや言論サイトから徐々に裾野を広げ、ヴァネッサ・ビーリィ氏やエヴァ・バートレット氏の様な、実際にシリアを訪れて調査を行っているジャーナリスト達の存在や、シリア状況も含めて、国際報道の嘘についてデバンキングを行っている無数の優秀な情報発信者達の存在を知ることが出来たのだ。これらは指数関数的に相互作用を及ぼし、戦争プロパガンダの嘘を見抜く主な方法が本だった時代とは比べ物にならない位、嘘を見抜くのに必要な情報に辿り着く速度と範囲を飛躍的に高めた。インターネットの普及はまた、一般市民が一次ソースを確認する能力をも劇的に高めた。情報をマスコミが殆ど独占していた時代は終わり、テクノロジーの向上と普及が齎した情報の民主化とでも呼ぶべき事態が、人々の世界観や言説空間の在り方を根底から変革し始めたのだ。これに適応出来た人間は、場合に依っては殆どリアルタイムで嘘を見抜くことが出来る様になるし、次にどんな嘘が繰り出されるのか予想出来ることも有る。
但しこれは自分が何を探すべきかを心得ている人達に限った話であって、SNSの普及はまた、戦争プロパガンダの嘘に反対すると云う意味での反戦主義者が、西洋諸国では最早絶滅危惧種になってしまった現状をも暴露した。戦争に反対するには何よりも先ずその戦争が正確に何を意味しているのかを理解せねばならないのだが、新冷戦プロパガンダの拡大強化に合わせて自分の頭をアップデート出来ている市民は殆ど居なかったのだ。その結果、完全に新冷戦モードに洗脳され切った人々が当たり前になり、嘘ではなく本物の戦争に反対する人々は、陰謀論者だのロシアや中国の工作員だのと呼ばれて、メジャーな言論空間に於ては完全に周辺化されることになった。情報技術の革新はメディア・リテラシー格差の拡大を齎し、世界観の二極化を引き起こした。これが最も顕著に浮き彫りにされたのは2022年以降新たなフェーズに入ったウクライナ紛争だ。西洋の新冷戦プロパガンダの嘘を鵜呑みにする人達は、自分では戦争に反対しているつもりで第三次世界大戦を支持し、戦争プロパガンダの嘘を批判する人達は、前者から戦争を支持している狂人だ、ロシアの工作員だと罵られ、その言論の自由を行使する場を制限されている。
シリア「内戦」と呼ばれているものは、実際には西洋諸国・湾岸諸国・トルコ・イスラエルによる、イスラム過激派を代理勢力として利用したハイブリッド・テロ侵略戦争だ。所謂シリア「内戦」報道なるものは、一から十まで嘘で固められたフェイクニュースの塊だ。こうした心理戦(NATOの新用語を使えば「認知戦」)が常態化した現実を生き抜くには、与えられた情報を常に疑い、その真贋を確認する能力と習慣が不可欠になる。その為には、正しい情報にアクセスする為の経路を日頃から自分なりに模索しておく作業が重要だ。戦争プロパガンダに洗脳されてしまうと、「敵」、つまり帝国が標的とする対象を非人間化することに、何の疑問の躊躇いも抱かなくなる。日々垂れ流される「人権侵害」「独裁者」「権威主義体制」「侵略者」「軍事的脅威」等々のフレーズは、こうした非人間化を促す為の心理的トリックだが、こうした「相手は道徳的に劣った存在だ」と云うメッセージの洪水に慣らされてしまうと、相手の立場に立って物事を考える想像力が失われ、相手を理解する為に知識を得ようとする意思が消滅してしまう。そうならない為には、物凄く時間と手間の掛かることでは有るが、ひとつひとつの嘘に根気強く抵抗して行かなくてはならない。
私が本書を読んだのは2019年にもなってからで、この頃には本書で指摘されている様な諸事実は既に粗方知ってしまっていたのだが、それでもやはり状況を再確認する為には読んで良かったと思う。この本の初版は2012年だそうだが、この本には私が最初に知りたかった基本的な情報が詰まっている。もっと早くにこの本の存在を知っていれば、あれこれ試行錯誤する必要も無かったのに………とは思うが、まぁその試行錯誤の過程で私も色々と学習したので、それが無駄だったとは思わない。
著者の一人、ナイル・ボウイ氏はアジア・タイムズの特派員。もう一人のアンソニー(トニー)・カタルッチ氏は地政学分析に優れた方で、私は Global Research への寄稿で知ったのだが、2021年からは Brian Berletic と云う名(こちらが本名らしい)で、主に The New Atlas と云う Youtubeチャンネルで情報発信を行っている。私自身もそうなのだが、検閲が強化された為にTwitter等のプラットフォームから現在追放されている。軍隊経験者と云うことも有って、軍事に関する分析には定評が有り、2022年にウクライナ紛争が新フェーズに入ってからは、彼の戦況分析動画は、かなりマイナーな分野であるにも関わらず、投稿したその日の1万ビューを超えるのが常だ。デバンキング作業を行うに当たって、無論彼は自分の主張を裏付ける諸々のソースを挙げる訳なのだが、その作業が実に丁寧で、視聴者や読者が自分でその作業を追試することが出来るように常に気を配っており、個々の情報の軽重を判断する為のヒントも色々与えてくれている。単に結論だけを一方的に与えられるのではなく、「何故その結論が正しいと言えるのか」と云う検証プロセスに関心が有る方にお薦めだ。情報リテラシーを鍛えたいなら、こうした地道な作業を積み重ねて行く経験が何より重要だろう。
今は戦時だ。マスコミの「戦争報道」なるものは、実際にはそれ自体が戦争遂行の一部であって、大衆洗脳の為の心理攻撃だ。自立した思考を養い、権力者に騙されずに生き、本当に戦争に反対したいなら、与えられた情報は全て一旦カッコに入れる必要が有る。シリア「内戦」、ロシアによるウクライナ「侵攻」や「対ロシア制裁」、中国の「ジェノサイド」や「軍事的挑発」、DPRKの「核の脅威」、COVID-19「パンデミック」やパンデミック「対策」、「SDGs」や「気候変動」etc………挙げればキリが無いが、全ては嘘に基付くプロパガンダだ。別に私がここで言ったことを信じる必要は無い。全て自分自身で検証して判断すれば良い。問題なのは、洗脳された人々は検証せず、事実を確認せず、現実を直視せず、それを全く問題だとは思わないことだ。彼等は事実に合わせて自分の考えを変えるのではなく、自分の信念に合わせて事実を取捨選択したり捻じ曲げたりする。嘘を暴くことは嘘を吐いたり嘘を信じたりすることよりも難しいし面倒だが、彼等は簡単な道を選ぶ。それではいけない。自分が洗脳されていたことは、洗脳が解けた後でしか気付けないが、早目に気が付いておけば、被害も浅くて済む。洗脳状態が深まると、その信念体系は現実を無視して自己拡大再生産の悪循環に陥って引き返すのがより難しくなる。そうなりたくなければ、個人として先ず出来ることは、健全な懐疑精神を保持し、文脈を理解するのに必要な知識を学び、与えられたひとつひとつの情報について判断を急ぐ前に確認するのを怠らないことだ。本書も含めて、その助けとなってくれる足掛かりは探せば色々と存在する。だが探さなければ見付からない。情報ガラパゴス化が著しい日本人は、特に必死にならないとヤバい。
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