国連専門家:「言語道断の」西洋諸国の制裁はシリアを「窒息」させており、恐らくは人道に対する罪だ(要点)
日本人の殆どはシリアが2011年以降どの様な状況に置かれているのか全く知らないだろうと思うので、2022/11/22に国連の制裁専門家が発表した予備報告書の要点を纏めた記事を紹介してみる。これは国際法を専門とするアレナ・ドゥーハン教授が2022年の10〜11月に12日間シリアを訪問し、聞き取り調査の結果として執筆したものだ。正式な報告書は2023年9月に発表される予定だそうだが、端的に言えば、シリアは長年に亘って西洋の自称自由民主主義陣営から経済的ジェノサイドの被害を受け続けている。西洋政府の唱える人権だの人道支援など、言わせて貰えば悍ましい茶番でしかない。そんな御託を並べる前に、先ずシリアの人々を殺すのを止めろ!
UN expert: ‘Outrageous’ Western sanctions are ‘suffocating’ Syria, may be crimes against humanity
問題の予備報告書はこれ。
UN expert calls for lifting of long-lasting unilateral sanctions ‘suffocating’ Syrian people
欧米がシリアに違法に課した一方的な強制措置は「言語道断」であり、何百万もの罪のない民間人を「窒息」させている。
シリアの全人口は、飲料水・電気・燃料・食糧が深刻に不足し、生命を脅かす状況に置かれている。一方的な制裁は、「全国民に壊滅的な影響を与え」、「人権の略全てカテゴリーに壊滅的な影響を与え」ている。
「シリアの現在の破滅的且つ悪化している状況に於て、一方的な制裁を維持することは、全シリア国民に対する人道に対する罪に該当する可能性が有る。」
制裁は「家計の購買力を完全に消滅させるレヴェルまで侵食し、彼等を長期的な生きるか死ぬかの状態に陥れた。」
「課せられた制裁は、人口、特に最も脆弱な人々のニーズに対応する国家の能力を打ち砕き、現在、人々の90%が貧困線以下で生活している。」
物価は2019年以降800%以上上昇し、何十万人もの雇用が失われ、制裁により「食品・医薬品・スペアパーツ・原材料、及び国のニーズと経済回復に必要な品目」の取引がブロックされている。
西洋諸国政府は制裁には人道的例外を設けていると主張しているが、実際には国際金融機関による「二次的な制裁と過剰な遵守」が、シリアが必要な物資を輸入することを妨げており、国連機関や国際人道支援機関でさえ、シリア国内で活動することは困難だ。
今日、シリア人の半数以上が食料不安に苦しんでいる。シリア人の24%が身体に障害を負っており、14.6%が病気に苦しんでいる。
制裁はまた、政府の復興事業を妨げて「電気と飲料水の不足」を引き起こし、これが病院を含む毎日の停電、水の汚染、コレラの流行に繋がっている。
米軍とそのクルド人の代理勢力が油田が豊富な地域を占領している為、シリア政府の原油・石油派生製品の生産量は2010年以前のレヴェルの10%にまで落ち込み、更には制裁によって原油の輸入が略不可能になっているため、シリアは産油国であるにも関わらず、ガソリンと燃料の慢性的な不足に直面しており、これは暖房・輸送・産業の不足を引き起こしている。
シリアに対する制裁の殆どは、西洋諸国がシリアに対して代理戦争を仕掛けた後に行われたものだが、ワシントンの制裁は2004年にまで遡る。これは2010年、2011年と拡大を続け、2019年にはシーザー法の採択によって、事実上の封鎖にまで発展した。シリア政府に財政的・物的・技術的支援を与えたり、取引を行ったりする者は、二次制裁の対象になるのだ。
この制裁を行っているのは、米国・欧州連合・英国・スイス・カナダ・オーストラリア、そして湾岸諸国のアラブ連盟だ。
シリアは2011年以前は非常に健全な成長率を示していたが(2000〜2010年の経済成長率は年平均5%以上)、代理戦争によってGDPは90%以上縮小した。紛争が生産能力・資産・インフラの破壊・大規模な国内避難民や難民を齎し、包括的で一方的な制裁が追い討ちを掛けて経済活動の長期に亘る減速に繋がった。
2018年、シリア政府軍とその同盟軍は軍事的には大部分勝利を収めたが、その分西洋諸国による経済攻撃が激化した。シリア経済は多少の改善を示したものの、一方的な制裁と貿易制限の強化、外国企業と金融機関による過剰遵守とリスク回避、更には国が多くの戦略的国家資産・天然資源・その他の経済資源を活用出来ないことから、経済回復の道は閉ざされることになった。
今回の訪問で得たデータや報告に拠ると、シリア経済は長引く経済危機の人質となっており、インフレの拡大と通貨の頻繁な切り下げにより、家計の購買力は完全に消滅し、長期的に生きるか死ぬかの状態に陥っている。
一方的な制裁の所為で、政府は主要インフラの維持・改善や、特に遠隔地や農村部での住民のニーズに不可欠な再建・開発プロジェクトの為のリソースを確保することが出来なくなっている。
聞き取りを行った略全ての相手が、発電所や配電インフラが破壊され、火力発電所や給水ポンプに必要なディーゼル燃料やガスが手に入らず、電力と飲料水が不足していることを強調した。
ダマスカスも含め、停電が頻発している。政府は病院だけは何とか毎日10〜11時間供給しようとしているが、1日2〜4時間しか配電していない県も有る。制裁によって発電所や配電網のスペアパーツの調達が出来ず、外国企業はシリアの組織と関わりを持ちたがらず、国際的な支払いは不可能な状態だ。
同様の課題は飲料水や灌漑用水でも発生しており、多くの施設が破損し、制裁の直接的影響や、隣国トルコ(ユーフラテス川の上流)の水力発電プロジェクトの開発の所為で、シリア農地への水流が深刻に減少している。
制裁の所為で水供給網の修理・維持・開発に必要な機器やスペアパーツの調達が妨げられ、時には汚染された水が出ることもある。これが原因で、最近では2万人以上の疑い患者が出るコレラの流行が起きた。
一人当たりの飲料水供給量は激減し、多くの家庭で飲料水が届くのは数日に1〜2時間程度。シリアの農地の内、現在も灌漑が可能なのは20%に過ぎない。
車両の維持と修理に必要な部品も輸入出来ない為、公共交通も荒廃している。
仮に輸入が出来たとしても、シリア中央銀行の外貨準備高は西側諸国政府によって凍結され、つまり事実上強奪されている為、支払いが出来ない。
病院や保健センターへの電力供給は不十分で、ディーゼル発電所や発電機で補っている。頻繁に停電が起こる為に医療業務や医療機器の機能が影響を受け、患者に深刻な結果を齎している。
電力の不規則性の所為で過負荷が発生し、高価な精密医療機器が破壊的な影響を受けることも有るが、スペアパーツの調達は困難で、欧米の企業は制裁を恐れて納入に消極的だ。
シリア国民の14.6%が慢性疾患や希少疾患を罹患しており、24%が身体障害者と推定されている。なのに外国の医薬品メーカーはシリアから撤退し、企業の過剰遵守や銀行のリスク回避政策によって、現地医薬品生産の為の原材料や検査試薬を輸入出来ない。これにより癌治療・腎臓透析・多発性硬化症・高血圧・糖尿病等に必要な医薬品や、麻酔薬やあらゆる種類の癌の診断薬の調達や配送は困難を抱えている。
医薬品や医療機器は厳密に言えば制裁の対象ではないのだが、認可手続きの曖昧さや複雑さ、生産者や供給者の間で根強い恐怖心、支払い手続きの制限、これらの商品を出荷する障害等によって、実際には入手し難いものになっている。
推定22%の子供が学校に通っていない。制裁による燃料不足により、冬に電気と暖房を利用出来る学校は僅か4〜7%。そして水へアクセス出来ている学校は40%未満。
結論として、一方的な制裁は、経済的・社会的・文化的権利、健康、食料、適切な住居、適切な生活水準、清潔な水と衛生、良好な環境、インターネットへのアクセス、生命への権利等、略全てのカテゴリーの人権に壊滅的な影響を及ぼしている。
飲料水、灌漑用水、下水道施設、電気、調理・暖房・輸送・農業用の燃料、食料(粉ミルクを含む)、保健施設、医療機器・医薬品、労働・教育施設が著しく不足しており、国国民全体が生命を脅かされている為、シリアは現在、人道支援に依存した極めて脆弱な国になっている。
UN expert: ‘Outrageous’ Western sanctions are ‘suffocating’ Syria, may be crimes against humanity
問題の予備報告書はこれ。
UN expert calls for lifting of long-lasting unilateral sanctions ‘suffocating’ Syrian people
欧米がシリアに違法に課した一方的な強制措置は「言語道断」であり、何百万もの罪のない民間人を「窒息」させている。
シリアの全人口は、飲料水・電気・燃料・食糧が深刻に不足し、生命を脅かす状況に置かれている。一方的な制裁は、「全国民に壊滅的な影響を与え」、「人権の略全てカテゴリーに壊滅的な影響を与え」ている。
「シリアの現在の破滅的且つ悪化している状況に於て、一方的な制裁を維持することは、全シリア国民に対する人道に対する罪に該当する可能性が有る。」
制裁は「家計の購買力を完全に消滅させるレヴェルまで侵食し、彼等を長期的な生きるか死ぬかの状態に陥れた。」
「課せられた制裁は、人口、特に最も脆弱な人々のニーズに対応する国家の能力を打ち砕き、現在、人々の90%が貧困線以下で生活している。」
物価は2019年以降800%以上上昇し、何十万人もの雇用が失われ、制裁により「食品・医薬品・スペアパーツ・原材料、及び国のニーズと経済回復に必要な品目」の取引がブロックされている。
西洋諸国政府は制裁には人道的例外を設けていると主張しているが、実際には国際金融機関による「二次的な制裁と過剰な遵守」が、シリアが必要な物資を輸入することを妨げており、国連機関や国際人道支援機関でさえ、シリア国内で活動することは困難だ。
今日、シリア人の半数以上が食料不安に苦しんでいる。シリア人の24%が身体に障害を負っており、14.6%が病気に苦しんでいる。
制裁はまた、政府の復興事業を妨げて「電気と飲料水の不足」を引き起こし、これが病院を含む毎日の停電、水の汚染、コレラの流行に繋がっている。
米軍とそのクルド人の代理勢力が油田が豊富な地域を占領している為、シリア政府の原油・石油派生製品の生産量は2010年以前のレヴェルの10%にまで落ち込み、更には制裁によって原油の輸入が略不可能になっているため、シリアは産油国であるにも関わらず、ガソリンと燃料の慢性的な不足に直面しており、これは暖房・輸送・産業の不足を引き起こしている。
シリアに対する制裁の殆どは、西洋諸国がシリアに対して代理戦争を仕掛けた後に行われたものだが、ワシントンの制裁は2004年にまで遡る。これは2010年、2011年と拡大を続け、2019年にはシーザー法の採択によって、事実上の封鎖にまで発展した。シリア政府に財政的・物的・技術的支援を与えたり、取引を行ったりする者は、二次制裁の対象になるのだ。
この制裁を行っているのは、米国・欧州連合・英国・スイス・カナダ・オーストラリア、そして湾岸諸国のアラブ連盟だ。
シリアは2011年以前は非常に健全な成長率を示していたが(2000〜2010年の経済成長率は年平均5%以上)、代理戦争によってGDPは90%以上縮小した。紛争が生産能力・資産・インフラの破壊・大規模な国内避難民や難民を齎し、包括的で一方的な制裁が追い討ちを掛けて経済活動の長期に亘る減速に繋がった。
2018年、シリア政府軍とその同盟軍は軍事的には大部分勝利を収めたが、その分西洋諸国による経済攻撃が激化した。シリア経済は多少の改善を示したものの、一方的な制裁と貿易制限の強化、外国企業と金融機関による過剰遵守とリスク回避、更には国が多くの戦略的国家資産・天然資源・その他の経済資源を活用出来ないことから、経済回復の道は閉ざされることになった。
今回の訪問で得たデータや報告に拠ると、シリア経済は長引く経済危機の人質となっており、インフレの拡大と通貨の頻繁な切り下げにより、家計の購買力は完全に消滅し、長期的に生きるか死ぬかの状態に陥っている。
一方的な制裁の所為で、政府は主要インフラの維持・改善や、特に遠隔地や農村部での住民のニーズに不可欠な再建・開発プロジェクトの為のリソースを確保することが出来なくなっている。
聞き取りを行った略全ての相手が、発電所や配電インフラが破壊され、火力発電所や給水ポンプに必要なディーゼル燃料やガスが手に入らず、電力と飲料水が不足していることを強調した。
ダマスカスも含め、停電が頻発している。政府は病院だけは何とか毎日10〜11時間供給しようとしているが、1日2〜4時間しか配電していない県も有る。制裁によって発電所や配電網のスペアパーツの調達が出来ず、外国企業はシリアの組織と関わりを持ちたがらず、国際的な支払いは不可能な状態だ。
同様の課題は飲料水や灌漑用水でも発生しており、多くの施設が破損し、制裁の直接的影響や、隣国トルコ(ユーフラテス川の上流)の水力発電プロジェクトの開発の所為で、シリア農地への水流が深刻に減少している。
制裁の所為で水供給網の修理・維持・開発に必要な機器やスペアパーツの調達が妨げられ、時には汚染された水が出ることもある。これが原因で、最近では2万人以上の疑い患者が出るコレラの流行が起きた。
一人当たりの飲料水供給量は激減し、多くの家庭で飲料水が届くのは数日に1〜2時間程度。シリアの農地の内、現在も灌漑が可能なのは20%に過ぎない。
車両の維持と修理に必要な部品も輸入出来ない為、公共交通も荒廃している。
仮に輸入が出来たとしても、シリア中央銀行の外貨準備高は西側諸国政府によって凍結され、つまり事実上強奪されている為、支払いが出来ない。
病院や保健センターへの電力供給は不十分で、ディーゼル発電所や発電機で補っている。頻繁に停電が起こる為に医療業務や医療機器の機能が影響を受け、患者に深刻な結果を齎している。
電力の不規則性の所為で過負荷が発生し、高価な精密医療機器が破壊的な影響を受けることも有るが、スペアパーツの調達は困難で、欧米の企業は制裁を恐れて納入に消極的だ。
シリア国民の14.6%が慢性疾患や希少疾患を罹患しており、24%が身体障害者と推定されている。なのに外国の医薬品メーカーはシリアから撤退し、企業の過剰遵守や銀行のリスク回避政策によって、現地医薬品生産の為の原材料や検査試薬を輸入出来ない。これにより癌治療・腎臓透析・多発性硬化症・高血圧・糖尿病等に必要な医薬品や、麻酔薬やあらゆる種類の癌の診断薬の調達や配送は困難を抱えている。
医薬品や医療機器は厳密に言えば制裁の対象ではないのだが、認可手続きの曖昧さや複雑さ、生産者や供給者の間で根強い恐怖心、支払い手続きの制限、これらの商品を出荷する障害等によって、実際には入手し難いものになっている。
推定22%の子供が学校に通っていない。制裁による燃料不足により、冬に電気と暖房を利用出来る学校は僅か4〜7%。そして水へアクセス出来ている学校は40%未満。
結論として、一方的な制裁は、経済的・社会的・文化的権利、健康、食料、適切な住居、適切な生活水準、清潔な水と衛生、良好な環境、インターネットへのアクセス、生命への権利等、略全てのカテゴリーの人権に壊滅的な影響を及ぼしている。
飲料水、灌漑用水、下水道施設、電気、調理・暖房・輸送・農業用の燃料、食料(粉ミルクを含む)、保健施設、医療機器・医薬品、労働・教育施設が著しく不足しており、国国民全体が生命を脅かされている為、シリアは現在、人道支援に依存した極めて脆弱な国になっている。
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