fc2ブログ

ロシアの帝国主義?

ロシアと帝国主義の関係についてのジェイ・サラペル氏の興味深いエッセイ。短いので全訳してみた。ボルシェビキ政権が多民族国家ロシア帝国を分割したのは、各民族のエンパワーメントと云う一種のアファーマティヴ・アクションだった訳だが、その意図はともかくその結果を見れば、共同体としてのロシアを分断する結果を齎したのであって、現在のウクライナの領土問題等もこれらが原因だ、とする主張を最近はよく見掛ける。まぁこれは完全にロシアのお家問題なので、ロシアに行ったことすら無い一外国人が知った風に論評するのは差し控えるが、多民族国家の運営は仲々一筋縄では行かない様だ。何れにしろ、一極覇権から多極化へ向かう現在の国際社会の潮流を理解するには、西洋社会では屢々不可視化されている植民地主義の歴史をきちんと踏まえておかないことには話にはらないだろうと思う。西洋人が「俺達こそが/だけが国際社会」とふんぞり返っていられた時代は、今度こそ本当に終わるのだ。共産主義とはつまりは資本主義に対するアンチテーゼな訳だが、現実に存在した資本主義体制とは常に帝国主義や植民地主義とセットだった。だから帝国主義や植民地主義に反対する人々は、屢々共産主義者を名乗った。この点を抜きにして、理念ではなく現実に存在した共産主義について考えることはナンセンスだと思う。冷戦とはつまり植民地主義陣営対植民地解放陣営との戦いだったとも言える。
Russian Imperialism?


 1920年、レーニンは世界を「抑圧する」国と「抑圧される」国とに二分して、帝国主義とは前者が世界人口の70%を占める後者を搾取することである再定義したのだが、後者は明らかに、アジア・アフリカ・ラテンアメリカのことを指していた。

 これは、国家がど様に他国を搾取するのかと云う問題を提起している。それは主に課税・賠償金の支払い・奴隷の超過利潤によってであり、「資本を輸出する」ことによってではない(これは、英国がオーストラリアの様な入植植民地を発展させた主な方法だ)。

 皮肉なことに、ウクライナはレーニンの帝国主義論から生まれた。レーニンはロシア帝国を、征服した国々をロシア化し、彼等の国語を抑圧する「国家の監獄」だと非難していたのだ。

 ロシア帝国に対するこの罪悪感から、ボルシェビキは旧ロシア帝国内に国境を引き、各国が自決出来るようにした。プーチンがレーニンとスターリンを嫌うのは、彼等が国境線を引いた所為で、ソ連崩壊後、多くのロシア人住民がロシアの国境線の外に出てしまったからだ。

 ソ連はレーニン主義的な意味での帝国主義だったのだろうか? ソ連を「帝国主義国」と呼んだソ連嫌いのトロツキスト、トニー・クリフでさえ、ソ連が国内の共和国やワルシャワ条約の同盟諸国に低開発を強いたことは明確に否定している。

 帝国主義が国家の搾取に等しいとするならば、帝国主義国間対立とは、それぞれが内部で搾取国と被搾取国の間に国家的な線引きをする複数の帝国が対立している状態を指している。その場合、この対立は第二次世界大戦後に終わったことになる。レーニンの執筆当時、第一次世界大戦で互いに戦った国々は、奴隷化した植民地の支配権を失い、植民地諸国はソ連の援助で自由を勝ち取ったからだ。

 帝国主義国間対立と云う概念によって、レーニンは当時の地政学的現実を特徴付けた。だが、彼は1924年に亡くなっている。と云うことはつまりレーニンに忠実であろうとするならば、彼の定義を受け継いだ上で、それを第二次大戦後の地政学的現実に適用しなければならないと云うことだ。

 第二次世界大戦後、世界は次の陣営に分割された。
 A)NATOを構成し、我々が「西側」と呼ぶ、元帝国と元ファシスト国家による、米国主導の同盟。
 B)ソ連主導の社会主義陣営。
 C)アジア・アフリカ・ラテンアメリカに亘る、解放された旧植民地諸国から成る第三世界。


 これらの陣営の内、A)陣営だけが、C)陣営を犠牲にした暴力的征服によって歴史的に確立された経済的利点を維持することへの関心を引き継いでおり、ソ連/ロシアのB)陣営は常にこのA)陣営の特定の関心を弱体化させて来た、と云うのが私の主張だ。

 ウクライナは曾てはB)陣営に属していたが、2014年以降はA)陣営に加わろうとしている。しかし、NATOがウクライナの忠誠心に満足する為には、ウクライナ国内の親ロシア派住民は、民族浄化とは言わないまでも、政治的に無力化しなければならない。ドンバス地方のロシア系ウクライナ人が分離主義に傾いている理由はこれだ。

 ウクライナはNATOへの加盟を望んでいるが、それは世界の他の地域を貧しくしておくと云う関心を引き継いでいる陣営、第二次世界大戦終結後、第三世界に対して終わり無きホロコーストを齎して来た陣営に加わると云うことだ。だからこそ、キエフ政権を「ネオナチ」と呼ぶことは、鉤十字を振る過激派の単なる美学以上のレヴェルで、正確なのだ。

 ヒトラーのナチスの元々の地政学的戦略は、英国や他の「白人」帝国を、互いの違いを一旦脇に置いて、とにかく非白人世界を一緒に奴隷化すべきだと説得することだった。NATOはこの地政学的戦略の継続を体現しており、ロシアとポスト・コロニアル世界を弱体化させようとしている。

 客観的には、B)とC)の陣営は、ウクライナがA)の陣営に加わるのを阻止することに関心を持っている。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

ブログランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ PVアクセスランキング にほんブログ村 人気ブログランキング
良ければクリックをお願いします。
最新記事
カテゴリ
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR