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元米副大統領ディック・チェイニーは、米国の目標がソ連だけでなくロシアを解体することであることを認めた(要点)

ベン・ノートン氏の記事の要点。ロシアの側からすれば、問答無用で自分達を切り刻もうとする連中と、どうやったら仲良くしろと云うんだ、と云う感じなのだろうと思う。
Ex VP Dick Cheney confirmed US goal is to break up Russia, not just USSR


 米国防長官やCIA長官を務めたロバート・ゲーツの回顧録に拠れば、「1991年末にソ連が崩壊した時、ディック(・チェイニー)はソ連とロシア帝国だけでなく、ロシアそのものを解体し、二度と脅威とならないようにすることを望んでいた。」つまり問題は冷戦期に主張されて来た様にロシアの共産主義体制なのではなく、ロシアと云う大国が存在すること自体が米国にとっては目障りだったのだ。
 

「ロシアのバルカン化」はチェイニーだけでなく、米国のセキュリティ・ステートのタカ派の多くが共有するファンタジーだ。米国がロシアの安全保障上の懸念を無視し、NATOを「1インチも東に動かさない」と云う約束をあっさり破り、軍事的に包囲して不安定化しようとして来たのは不思議ではない。目的は最初からロシアの転覆だったのだ。

 米帝の主要な計画立案者ズビグニュー・ブレジンスキーも、1997年の有名な著書の中でもはっきりこう述べている、米帝の地政学的目標はロシアを封じ込め弱体化させることであると。米国の「世界的優位性」を維持する為に、ワシントンは「ユーラシアに支配力を持つ敵対的な勢力が出現するのを防ぐ」必要が有ると云うのが彼の言い分だ。つまりロシアが「脅威」と見做されるのは、それが世界を支配しようとしているからではなく、米帝が世界を支配する構想の邪魔になるからなのだ。


 ロシアを不安定化させる試みのひとつが、所謂チェチェン紛争だ。ロシアは米国がチェチェンの分離主義者達を支援した証拠を公開している。英国のジョン・ラフランドは2004年のガーディアンの記事"The Chechens' American friends"で、チェチェンの分離主義者の指導者達の何人かが西側に住んでおり、米国政府から助成金さえ与えられていることを明らかにした。「チェチェンの平和の為のアメリカ委員会 」なる組織のメンバーには次の様な人物が名を連ねていた。
 ・リチャード・パール(ペンタゴンの顧問)
 ・エリオット・エイブラムス(イラン=コントラ事件で有名)
 ・ケネス・アデルマン(イラク侵攻を「楽勝」と予言して煽った元国連大使)
 ・ミッジ・デクター(ドナルド・ラムズフェルドの伝記作家で右翼団体ヘリテージ財団のディレクター)
 ・フランク・ガフニー(好戦的な安全保障政策センターの創設者)
 ・ブルース・ジャクソン(米国軍情報将校やロッキード・マーティン社の副社長を務め、現在はNATOに関する米国委員会会長)
 ・マイケル・リーディン(元はイタリアのファシズムの崇拝者で、現在はイランの体制転換を推進するアメリカン・エンタープライズ研究所の学者)
 ・ジェームズ・ウールシー(イスラム世界を親米路線で再構築すると云うブッシュJr.の計画の主要な支持者の一人で元CIA長官)

 この面子を見ても解る通り、チェイニー界隈のネオコン陣営は揃って「ロシア解体」の野望に取り憑かれている。彼等は反イスラム教徒のイデオロギーを共有していたが(9.11後、イスラム教徒達に対して大規模な弾圧や迫害を繰り広げたのがどの国だったかは誰でも知っている筈だ。無論中国ではない)、チェチェンの分離主義者の大部分がサラフィー・ジハード主義者だったと云う事実は、彼等を悩ませなかった。「対テロ戦争」に従軍した兵士達が、リビアやシリア侵略の際にはタクフィール・イスラム主義者達を支援することに何の躊躇いも見せなかったことと同じだ。

 ネオコンは同じく中国、台湾、香港、チベット、特に新疆ウイグル自治区での分離主義運動の支援に熱心だが、その目的は人権擁護ではなく、中国を封じ込めることによって超大国としての台頭を防ぐことだ。米国の外交政策機構と、軍事ブロックとしてのNATOは、独立した大国としてロシアと中国が台頭することを防ごうとしている。

 ペンタゴンのシンクタンク、ランド研究所の2019年の報告書「ロシアの拡大」もまたこの路線を明確に裏付けている。この報告書ではモスクワの「弱点」を付け込んで取り囲んで封じ込める様々な手法について論じている:
 1)ウクライナに致命的支援を提供する。
 2)シリア反体制派への支援を拡大する。
 3)ベラルーシの政権交代を促進する。
 4)南コーカサスの緊張状態に付け込む。
 5)中央アジアでのロシアの影響力を低下させる。
 6)モルドバでのロシアのプレゼンスに挑戦する。


 6)のモルドバを除けば、米国は1)〜5)の政策を殆ど公然と遂行して来た。例えば2003〜2005年にチェイニー副大統領の主要な副外交政策顧問を務めていたヴィクトリア・ヌーランドは、オバマ政権下で2014年のウクライナでの暴力的なクーデターを支援したが、リークされた電話の内容に拠れば、ウクライナ傀儡政権のトップメンバーを選んだのは彼女だ。ヌーランドが民主党員であることはこの際関係無い。このタカ派の外交政策コンセンサスは完全に超党派なのだ。因みに彼女の夫のロバート・ケーガンは、悪名高い「新しいアメリカの世紀プロジェクト(PNAC)」の共同創設者で、長年共和党員だったが、2016年のヒラリー・クリントンの立候補時にあっさり民主党に鞍替えした。ロシアと中国が米国の一極覇権に挑戦すること拒否する、と云う点に於ては、共和党だろうと民主党だろうとやることは同じなのだ。
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