2022年に米国が欧州に対して覇権を再確立することに成功した5つの方法(抜粋)
地政学アナリスト、アンドリュー・コリブコ氏の、2022年に新冷戦の現状を振り返る上で参考になると思った論説から、ポイントを抜粋してみた。
The Five Ways That The US Successfully Reasserted Its Hegemony Over Europe In 2022

この論説は、2022/09/27にロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ事務局長が発表したワーキング・ペーパー「新しい西洋の結束と世界秩序」を紹介しつつ、それが見落としている点を補完したものだ。NATOのナチ陣営は2022年に完全に新冷戦モードに突入し、ロシアがこれに対して和解を期待することは最早不可能になった訳だが、この論説では米国がこの状況を作り出した手口をざっくり概説している。
Western consolidation and asymmetric bipolarity
1)EUをロシアから切り離す為に、インフルエンサーのネットワークと価値観が利用された。
米国の諜報機関は、大陸に深く浸透したインフルエンサーのネットワークを利用して、ロシアに対する客観的な国益(特に経済的利益)を一方的に譲歩するようEUに強要した。また、所謂「西洋の価値観」なる曖昧な概念を利用して、ロシアの特別作戦は自国の安全保障上のレッドラインを守る為の軍事作戦ではなく、西洋の存亡を脅かすものであるかの様に見せ掛けようとした。
2)リベラル全体主義が、ロシアに対する「自衛」反応として兵器化された。
旧冷戦終結後、EUに広まったリベラル・グローバリズムのイデオロギーに内在する全体主義的傾向は、米国により、欧州ブロックとロシアの「デカップリング」を不可逆的なものにする為に兵器化された。米国の知覚管理者は、横行するロシア恐怖症等のその最もファシズム的な兆候を刺激して、所謂「ロシアの侵略」から「西洋の価値を守る」為に必要だと云う偽の口実の下に、最終的にこれを表面化させた。その結果、両者の間に和解し難い食い違いが生じることになった。
3)EUに新たな属国主義を定着させる為に、第二次世界大戦的発想が操作された。
上述の二つの展開によって、ロシアを第二次世界大戦の様な存亡に関わる脅威と考える様になった結果、EUは容易に操作されて米国に主権を明け渡した。そうしなければ「新たなヒトラー」がウクライナの後に自分達を征圧しに来ると誤って信じたからだ。米国に軍事政策の支配権を与えることによって、欧州人は「戦争努力」の為に無限の犠牲を払うことを要求される様になったが、それは事実上、欧州経済をも米国に従属させる結果に繋がった。
4)米国が誘発した欧州間の「友好的競争」が欧州を分断する。
欧州は既に中央集権化の傾向を見せていたが、これは偽りの「ロシアの脅威」に直面して前例を見ない程加速されることになった。だが米国は狡猾にも「共通の戦争努力」の一環として、それら属国諸国の間での「友好的競争」を誘発し、それらが分裂した状態に留まり、決して団結して米国に対抗しないようにした。これは中欧・東欧(CEE)の主導権を巡るドイツとポーランドのライヴァル関係を助長するもので、英国の「ジュニアパートナー」によって、それらは「分割統治」目的で無期限に維持されることが期待されている。
5)人為的に作り出されたアフリカの食糧&燃料危機は、ダモクレスの剣として振り翳されている。
西洋の対ロシア制裁はアフリカの食糧&燃料危機を人為的に作り出したが(それが無ければ危機が起こることは無かった)、これはその後、事実上の新冷戦ブロックのリーダーである米国によって、EUの属国諸国に対するダモクレスの剣として振り翳されることになった。EUが本気で歯向かうと云う最悪のシナリオが展開した場合、米国はアフリカに未曾有の政治不安を引き起こす為にこれらの体系的な危機を悪化させるだろう。そうなれば必然的に、制御不能な移民の津波がEUへ押し寄せることになる。
これら5つの展開により、米国は衰退していた一極覇権を欧州に於て再確立することに成功した。ウクライナ紛争は米国によるロシア支配戦略の一環であると同時に、欧州分断統治支配戦略の一環でもある。米国は進行中の中国との新たなデタントに於ても、中国がアジア太平洋地域の安全保障の関心について譲歩しない場合、米国は「価値観」に訴えてEUにその経済的利益を犠牲にさせ、中国に対する制裁に参加するよう脅迫する可能性も考えられる。
The Five Ways That The US Successfully Reasserted Its Hegemony Over Europe In 2022

この論説は、2022/09/27にロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ事務局長が発表したワーキング・ペーパー「新しい西洋の結束と世界秩序」を紹介しつつ、それが見落としている点を補完したものだ。NATOのナチ陣営は2022年に完全に新冷戦モードに突入し、ロシアがこれに対して和解を期待することは最早不可能になった訳だが、この論説では米国がこの状況を作り出した手口をざっくり概説している。
Western consolidation and asymmetric bipolarity
1)EUをロシアから切り離す為に、インフルエンサーのネットワークと価値観が利用された。
米国の諜報機関は、大陸に深く浸透したインフルエンサーのネットワークを利用して、ロシアに対する客観的な国益(特に経済的利益)を一方的に譲歩するようEUに強要した。また、所謂「西洋の価値観」なる曖昧な概念を利用して、ロシアの特別作戦は自国の安全保障上のレッドラインを守る為の軍事作戦ではなく、西洋の存亡を脅かすものであるかの様に見せ掛けようとした。
2)リベラル全体主義が、ロシアに対する「自衛」反応として兵器化された。
旧冷戦終結後、EUに広まったリベラル・グローバリズムのイデオロギーに内在する全体主義的傾向は、米国により、欧州ブロックとロシアの「デカップリング」を不可逆的なものにする為に兵器化された。米国の知覚管理者は、横行するロシア恐怖症等のその最もファシズム的な兆候を刺激して、所謂「ロシアの侵略」から「西洋の価値を守る」為に必要だと云う偽の口実の下に、最終的にこれを表面化させた。その結果、両者の間に和解し難い食い違いが生じることになった。
3)EUに新たな属国主義を定着させる為に、第二次世界大戦的発想が操作された。
上述の二つの展開によって、ロシアを第二次世界大戦の様な存亡に関わる脅威と考える様になった結果、EUは容易に操作されて米国に主権を明け渡した。そうしなければ「新たなヒトラー」がウクライナの後に自分達を征圧しに来ると誤って信じたからだ。米国に軍事政策の支配権を与えることによって、欧州人は「戦争努力」の為に無限の犠牲を払うことを要求される様になったが、それは事実上、欧州経済をも米国に従属させる結果に繋がった。
4)米国が誘発した欧州間の「友好的競争」が欧州を分断する。
欧州は既に中央集権化の傾向を見せていたが、これは偽りの「ロシアの脅威」に直面して前例を見ない程加速されることになった。だが米国は狡猾にも「共通の戦争努力」の一環として、それら属国諸国の間での「友好的競争」を誘発し、それらが分裂した状態に留まり、決して団結して米国に対抗しないようにした。これは中欧・東欧(CEE)の主導権を巡るドイツとポーランドのライヴァル関係を助長するもので、英国の「ジュニアパートナー」によって、それらは「分割統治」目的で無期限に維持されることが期待されている。
5)人為的に作り出されたアフリカの食糧&燃料危機は、ダモクレスの剣として振り翳されている。
西洋の対ロシア制裁はアフリカの食糧&燃料危機を人為的に作り出したが(それが無ければ危機が起こることは無かった)、これはその後、事実上の新冷戦ブロックのリーダーである米国によって、EUの属国諸国に対するダモクレスの剣として振り翳されることになった。EUが本気で歯向かうと云う最悪のシナリオが展開した場合、米国はアフリカに未曾有の政治不安を引き起こす為にこれらの体系的な危機を悪化させるだろう。そうなれば必然的に、制御不能な移民の津波がEUへ押し寄せることになる。
これら5つの展開により、米国は衰退していた一極覇権を欧州に於て再確立することに成功した。ウクライナ紛争は米国によるロシア支配戦略の一環であると同時に、欧州分断統治支配戦略の一環でもある。米国は進行中の中国との新たなデタントに於ても、中国がアジア太平洋地域の安全保障の関心について譲歩しない場合、米国は「価値観」に訴えてEUにその経済的利益を犠牲にさせ、中国に対する制裁に参加するよう脅迫する可能性も考えられる。
- 関連記事
-
-
2022年のアフリカに於ける5つの地政学的展開(要点) 2023/01/05
-
ソウル在住、平壌に忠実な市民等(要点と補足) 2023/01/04
-
2022年に米国が欧州に対して覇権を再確立することに成功した5つの方法(抜粋) 2023/01/04
-
スーダンの12月革命が5年目に入る中、反クーデター政権デモで更に数百人が負傷(要点) 2022/12/31
-
報告:CIAはロシア国内で破壊工作攻撃を命じている(要点) 2022/12/29
-
スポンサーサイト