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習近平のサウジアラビア訪問と大西洋主義の転覆(要点)

中国の習近平主席のサウジアラビア訪問を受けてのマシュー・エレット氏の記事。つまりは「時代はユーラシアだぜ!大西洋の連中ばっかり見ていると、時代の波に乗り遅れるぜ!」と云うこと。暗く悲惨なニュースばかりが続く昨今だが、世界全体を見渡してみればこうした明るい兆しも見える。正直に言ってしまうと、ここでエレット氏が挙げていることにも不穏な懸念材料は少なくないのだが、まぁ絶望するだけなら何時でも出来る。少しは希望のタネと云う栄養をやらないことには、精神はゆっくり窒息死する。
Xi Jinping’s Visit to Saudi Arabia and the overthrow of Atlanticism



 ・習近平主席のサウジ訪問に続き、2022/12/09からは初の中国・アラブ首脳会議が開催。中国外務省はこれを「中国・アラブ関係発展の歴史に於ける画期的なマイルストーン」と呼んだ。

 ・習近平主席が前回サウジを訪れたのは2016年:新たに発足した一帯一路構想(BRI)にサウジを引き込むのが目的だった。

 ・その3ヶ月後、モハメド・ビン・サルマン皇太子(MbS)はサウジ・ヴィジョン2030を発表。

 ・同年、両国は第4世代のガス冷却原子炉建設についての覚書に署名。

 ・2017年には両国は650億ドル相当の契約に署名。石油化学の統合・エンジニアリング・精製・調達・建設・二酸化炭素回収、アップストリーム/ダウンストリーム開発に焦点を当てている。

 ・両国の貿易は2020年から2021年に掛けて39%増加し、873億ドルに達したが、他方サウジと米国の貿易は2012年の760億ドルから2021年には僅か290億ドルにまで激減している。

 ・現在両国の貿易の一部は、中国人民元で支払われている可能性が有る。これはドルの覇権を約束するペトロダラー・システムに対する根本的な脅威だ。

 ・サウジ主導によるイエメン侵略や、レバノン・シリア・イラクで経済的荒廃が続いているものの、サウジは近年トルコイラク、そしてイランとさえ、緊張を緩和し、良好な交友関係の再確立を目指す動きを見せている。湾岸諸国は今までシリアのアサド政権打倒に血道を上げていたが、これもBRIの介在により関係が改善する兆しを見せている。

 ・イランはBRIの南ルートの戦略的ハブとして機能する大ユーラシア・パートナーシップの重要なプレーヤーであり、且つロシア・イラン・インド主導の国際南北輸送回廊(INSTC)の要。イランとイラクを結ぶシャラムチェ・バスラ鉄道は建設の最終段階で、シリア国境まで延長される可能性も有る。協力の環境が整ったのは、中国の四半世紀に及ぶ経済外交の成果が大きいが、これよりは小規模なものの、最近のロシアの参加も重要。ロシアは今後数年間でイランの天然ガスと石油に400億ドルを投資する予定。

 ・サウジはこの夏バイデンの石油増産要求を拒否しただけでなく、全体的な石油生産を削減して世界の石油価格を押し上げた、米国離れを見せ付けた。その一方でサウジはエジプトやトルコ、それにアルジェリアと並んで、多極化の世界的ハブそのものと言えるBRICS+に参加する予定であり、更にはエジプトと共に上海協力機構への関与も深めている。

 ・中国の投資家は長い間、紛争に苦しむ西アジアを敬遠して来たが、様々な権力ブロック間の利益の安定と調和の可能性が高まるにつれて、長期的な経済投資に対する関心も高まっている。2022年8月にはサウジと中国の石油企業は2017年の協力協定を拡大し、新しいプロジェクトに乗り出している。

 ・最も興味深いのは相互接続性の展開。2018年には中国鉄道建設会社によって、メッカとメディナの450kmを僅か2時間で結ぶ高速ハラメイン鉄道が完成している。これを、2015年に完成したリヤド〜アル・ハディーサ間の2,400kmの南北鉄道に接続しようとする議論が現在行われている。そして全ての湾岸協力会議(GCC)加盟諸国を結ぶ460kmの鉄道が建設中であり、これはアラビア半島の技術・貿易・製造ハブの改革を促進している。GCCは2021年には「サウジ・ランドブリッジ」と云う2,000億ドルの高速鉄道(ペルシャ湾〜紅海)に全面的な支援を与えているが、これは中国が投資する5,000億ドルのメガ・プロジェクト、NEOMとも合致している。


 ・調和とウィンウィンの協力と云うこの新しい化学反応が、イエメンその他での紛争を終わらせてくれることを願いたい。ロシアと中国の外交努力に加えてイランの協力が得られれば、荒廃した紛争地帯の復興の為の交渉が始まる可能性が有る。

 ・上記の展開を見ていると、2009年に公開された「アフリカの角の橋」が再起動するかも知れないとも思えて来る。これはジブチとイエメンをパイプラインと鉄道で繋ぐ構想で、全長29km、吊り幅は世界最長の5kmと云う代物。2011年に西洋諸国が仕掛けた一連のカラー革命である「アラブの春」と、2015年に西洋諸国の支援でサウジが主導して始めたイエメン侵略により、この構想は脱線して頓挫してしまったが、大西洋主義者が支配するドル・システムから解放された新しい経済構造の下での文明間協力が進めば、その新しい精神がこの構想に再び生命を与えるかも知れない。
Al Noor City Djibouti and Yemen




*おまけ
 写真は私がTwitterで拾ったものだが、MbSが米中首脳を迎えた時のもの。バイデンは拳で迎え、習近平は握手で迎えている。
 
Xi Jinping’s Visit to Saudi Arabia and the overthrow of Atlanticism
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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