フランス大使:米国の「ルールに基付く秩序」は西側の支配のことで、国際法に違反している(要点)
2022/11/14にワシントンCDのシンクタンク、Quincy Institute for Responsible Statecraft が主催したパネルディスカッション、「アメリカは多極化世界に向けて準備が出来ているか?」に於て、フランスの元駐米大使ジェラール・アローは、米国の国際法を無視した覇権主義的政策を公然と批判した。まぁ目を開けていれば子供であろうと、どの国が常習的に国際法違反を繰り返しているかは一目瞭然なので、端的な事実を事実としてきちんと認められる人が欧州の政治エリート層の中でもまだ絶滅していないのは大変結構なことだ。「相手の立場になって考えてみる」と云うのは別に政治的な思想信条と呼ぶ程のものではなく、単なる当たり前の大人の人付き合い上の知恵に過ぎないが、この極くごく普通の当たり前のことが全く出来ないのが今の西洋の現実だ。
French ambassador: US ‘rules-based order’ means Western domination, violating international law

以下、アローの発言からの抜粋。
「率直に言って、私はこの『ルールに基付く秩序』と云う考え方に、終始極めて懐疑的でした。
個人的には例えば、いいですか、私は国連の常任代表だったんですよ。我々は国連が大好きですが、アメリカ人は余りそうではりません、御存知の様に。
実際、国連のヒエラルキーを見てみると、そこに居るのは全員、我々の仲間です。事務総長(アントニオ・グテレス)はポルトガル人です。韓国人の潘基文(パン・ギムン)もそうです。事務次長の部下達を見渡してみると、本当に全員がアメリカ人、フランス人、イギリス人等々の何れかです。世界銀行やIMF等を見てもそうです。
これが第一の要素です。この秩序は我々の秩序なのです。
第二の要素は、実のところこの秩序は、1945年のパワーバランスを反映していると云うことです。安全保障理事会の常任理事国を見て下さい。
本当にこのことは忘れられがちなのですが、中国とロシアが拒否権を行使して反対しなければならないとしたら、それは安保理が殆どの場合、つまり95%の場合、欧米寄りの多数派を抱えているからです。
つまりこの秩序は率直に言って———これについては皮肉も言えるのですが———、アメリカ人は基本的にやりたいことは何であろうと、彼等が定義する国際法に反することも含めて、やってしまうと云うことです。
それが、世界の他の国々がこの秩序に対して抱いているイメージなのです。
私が居た時には、国連は魅力的な場所でした。全ての国の大使が居て、彼等と会話をすることが出来ました。彼等が投影する世界のヴィジョン、彼等の世界のヴィジョンは、 絶対に『ルールに基付く秩序』などではありません。それは西洋の秩序です。
そして、彼等は我々を二重基準や偽善云々と非難する訳です。
ですから、この『ルール』に関する問いが本当に重要な問い掛けなのかどうか、私には分かりません。
我々がすべき最初の評価は恐らく、フランス語で言うところの『相手の靴に足を突っ込む』、つまり相手の立場に立って、彼等が世界をどの様に見ているかを理解しようとすることなのかも知れません。」
「西洋の要塞を再建しようとするのは止めましょう。それは我々の外交政策の未来であってはならなりません。」
そして彼は、西洋は他国を平等に扱うべきだと訴え、米国の対中国「封じ込め」政策を批判してこう言っている:
「アジアは冷戦時代のヨーロッパの様にはなりたくないのです。『竹のカーテン』を持ちたくないのです。自分達の陣営を選びたくないのです。
オーストラリアは自国の陣営を選択しましたが、これは特殊なケースです。しかし、インドネシア、タイ、フィリピンは自国の陣営を選ぶことを望んではいません。我々は彼等に、自国の陣営を選ぶことを要求すべきではありません。
ですから我々は中国と対話する柔軟な政策を行う必要が有ります。対話によって彼等は安心しますし、それは彼等の利益を理解しようとすることでもあり、また単に西洋の覇権を維持しようとする非妥協的な方法以外で、我々の利益を明らかにする方法でもあります。」
「アメリカ人は或る意味で、既にブロックでの大物として世界に進出しました。1945年には世界のGDPの40%を占めていたのです。
この事実は、アメリカの外交とは何かを説明してくれます。アメリカの外交官の言葉、アメリカ外交の言葉は、『リーダーシップ』です。
実際のところ、外国人が何時も驚かされるのは、アメリカの外交政策について議論が有ると直ぐに、『リーダーシップを取り戻さなければならない』と言われることです。リーダーシップ。他の国々はこう問うかも知れません、『何故リーダーシップなのか?』。」
彼はま西側メディアの中国に否定的な報道についても批判している:
「ヨーロッパや欧米の新聞を見ると、中国は前進し続け、決してミスを犯さず、如何なる困難にも直面せず、世界征服に向かっている一種のダーク・モンスターであるかの様な印象を受けます———例えば、中国人は1日20時間働く、休暇を欲しがらない、彼等は気にしない、彼等は世界を支配従っている。」
若し北京から世界を見てみようとすれば、我々は次の様なことを真剣に考えることが出来ます———中国の全ての国境は多かれ少なかれ不安定であり、或いは脅威に曝され、非友好的な国々と向き合っている。まぁ、それが中国の見方なのです。
恐らく彼等は自分達の状況を改善したいと思っています。我々はそれを認めるべきだと言っている訳ではありませんが、しかし、一方にとっての防衛措置は、他方から見れば常に攻撃的に映ることを忘れてはなりません。
ですから、中国には中国の利益が有ることを理解しましょう。いいですか、独裁国家にだって正当な利益は有るのです。そしてこれらの利益をよく見て、自国の利益との妥協点を見出すようにしましょう。」
「私がワシントンに居た時、2018年10月のハドソン(研究所)でのペンス副大統領の(タカ派反中)演説の直後だったのですが、ワシントンDCで多くの中国の専門家に会った時、彼等にこう伝えようとしてみました:あのですね、あなた方(米国)の船は中国の海岸から200マイル、アメリカの海岸から5,000マイルの所でパトロールしていますが、若し中国の船があなた方の海岸から200マイルの所でパトロールしていたなら、あなた方はどんな反応をしますか?
明らかに、私の話相手は私の言っている意味を理解していませんでした。ですがこれが重要なのです。つまり、相手の合理的な利益を真剣に理解しようとすることが。」
French ambassador: US ‘rules-based order’ means Western domination, violating international law

以下、アローの発言からの抜粋。
「率直に言って、私はこの『ルールに基付く秩序』と云う考え方に、終始極めて懐疑的でした。
個人的には例えば、いいですか、私は国連の常任代表だったんですよ。我々は国連が大好きですが、アメリカ人は余りそうではりません、御存知の様に。
実際、国連のヒエラルキーを見てみると、そこに居るのは全員、我々の仲間です。事務総長(アントニオ・グテレス)はポルトガル人です。韓国人の潘基文(パン・ギムン)もそうです。事務次長の部下達を見渡してみると、本当に全員がアメリカ人、フランス人、イギリス人等々の何れかです。世界銀行やIMF等を見てもそうです。
これが第一の要素です。この秩序は我々の秩序なのです。
第二の要素は、実のところこの秩序は、1945年のパワーバランスを反映していると云うことです。安全保障理事会の常任理事国を見て下さい。
本当にこのことは忘れられがちなのですが、中国とロシアが拒否権を行使して反対しなければならないとしたら、それは安保理が殆どの場合、つまり95%の場合、欧米寄りの多数派を抱えているからです。
つまりこの秩序は率直に言って———これについては皮肉も言えるのですが———、アメリカ人は基本的にやりたいことは何であろうと、彼等が定義する国際法に反することも含めて、やってしまうと云うことです。
それが、世界の他の国々がこの秩序に対して抱いているイメージなのです。
私が居た時には、国連は魅力的な場所でした。全ての国の大使が居て、彼等と会話をすることが出来ました。彼等が投影する世界のヴィジョン、彼等の世界のヴィジョンは、 絶対に『ルールに基付く秩序』などではありません。それは西洋の秩序です。
そして、彼等は我々を二重基準や偽善云々と非難する訳です。
ですから、この『ルール』に関する問いが本当に重要な問い掛けなのかどうか、私には分かりません。
我々がすべき最初の評価は恐らく、フランス語で言うところの『相手の靴に足を突っ込む』、つまり相手の立場に立って、彼等が世界をどの様に見ているかを理解しようとすることなのかも知れません。」
「西洋の要塞を再建しようとするのは止めましょう。それは我々の外交政策の未来であってはならなりません。」
そして彼は、西洋は他国を平等に扱うべきだと訴え、米国の対中国「封じ込め」政策を批判してこう言っている:
「アジアは冷戦時代のヨーロッパの様にはなりたくないのです。『竹のカーテン』を持ちたくないのです。自分達の陣営を選びたくないのです。
オーストラリアは自国の陣営を選択しましたが、これは特殊なケースです。しかし、インドネシア、タイ、フィリピンは自国の陣営を選ぶことを望んではいません。我々は彼等に、自国の陣営を選ぶことを要求すべきではありません。
ですから我々は中国と対話する柔軟な政策を行う必要が有ります。対話によって彼等は安心しますし、それは彼等の利益を理解しようとすることでもあり、また単に西洋の覇権を維持しようとする非妥協的な方法以外で、我々の利益を明らかにする方法でもあります。」
「アメリカ人は或る意味で、既にブロックでの大物として世界に進出しました。1945年には世界のGDPの40%を占めていたのです。
この事実は、アメリカの外交とは何かを説明してくれます。アメリカの外交官の言葉、アメリカ外交の言葉は、『リーダーシップ』です。
実際のところ、外国人が何時も驚かされるのは、アメリカの外交政策について議論が有ると直ぐに、『リーダーシップを取り戻さなければならない』と言われることです。リーダーシップ。他の国々はこう問うかも知れません、『何故リーダーシップなのか?』。」
彼はま西側メディアの中国に否定的な報道についても批判している:
「ヨーロッパや欧米の新聞を見ると、中国は前進し続け、決してミスを犯さず、如何なる困難にも直面せず、世界征服に向かっている一種のダーク・モンスターであるかの様な印象を受けます———例えば、中国人は1日20時間働く、休暇を欲しがらない、彼等は気にしない、彼等は世界を支配従っている。」
若し北京から世界を見てみようとすれば、我々は次の様なことを真剣に考えることが出来ます———中国の全ての国境は多かれ少なかれ不安定であり、或いは脅威に曝され、非友好的な国々と向き合っている。まぁ、それが中国の見方なのです。
恐らく彼等は自分達の状況を改善したいと思っています。我々はそれを認めるべきだと言っている訳ではありませんが、しかし、一方にとっての防衛措置は、他方から見れば常に攻撃的に映ることを忘れてはなりません。
ですから、中国には中国の利益が有ることを理解しましょう。いいですか、独裁国家にだって正当な利益は有るのです。そしてこれらの利益をよく見て、自国の利益との妥協点を見出すようにしましょう。」
「私がワシントンに居た時、2018年10月のハドソン(研究所)でのペンス副大統領の(タカ派反中)演説の直後だったのですが、ワシントンDCで多くの中国の専門家に会った時、彼等にこう伝えようとしてみました:あのですね、あなた方(米国)の船は中国の海岸から200マイル、アメリカの海岸から5,000マイルの所でパトロールしていますが、若し中国の船があなた方の海岸から200マイルの所でパトロールしていたなら、あなた方はどんな反応をしますか?
明らかに、私の話相手は私の言っている意味を理解していませんでした。ですがこれが重要なのです。つまり、相手の合理的な利益を真剣に理解しようとすることが。」
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