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売国奴の英国王エドワード8世

英国のタブロイド誌『サン』がスクープした1933年の映像。楽しそうにナチ式の敬礼をしているのは、

 ・エドワード8世:この3年後に英国王となる。
 ・後のエリザベス王太后:エドワードの弟であるジョージ6世の結婚相手。ジョージはエドワードの次の英国王。
 ・そして彼女の二人の子供達:後のエリザベス2世女王と、マーガレット王女。

 元々英国王室は血筋から言ってドイツ人に近いし、当時の大英帝国内部にはチャーチルも含め数多くのナチ・ファシスト支持者が居たので、これは特別例外的な光景と云う訳ではないだろう。ファシズムは共産主義の台頭や労働者運動の高まりを恐れ、進歩主義を潰したがった欧米の帝国主義者達の間で非常に人気が高かった。剛腕による帝国秩序の立て直しは、西洋が見習うべきモデルと見做されたのだ。彼等の支援や協力が無ければ、ヒトラーやムッソリーニやフランコはあそこまで権力を握ることは出来なかっただろう。
Queen makes Nazi salute in video


2022/03/27、英国ではチャンネル4でドキュメンタリー"Edward VIII: Britain's Traitor King(エドワード8世:英国の売国奴王)"が放映されて人々に衝撃を与えた。2度の離婚歴が有り、一時期はナチの外務大臣ヨアヒム・フォン・リッベントロップの愛人だったウォレス・シンプソンと結婚する為に退位した英国のエドワード8世(ウィンザー公。後のエリザベス女王の伯父)は、ヒトラーの熱心な支持者だった。1939年には戦争が始まる前に英国人にヒトラーに降伏するよう呼び掛けようとしたが、BBCはこの声明を放送するのを拒否した。彼は仏軍の弱点をドイツに提供したが、その後ドイツがフランスに侵攻した際には実際にそこを標的にした。彼はドイツが激しい爆撃を続けて英国が降伏することを望み、ドイツ人にロンドンを爆撃すること勧め、自身は親ナチの傀儡王として王座に返り咲くつもりだった。チャーチルは彼をばバハマ総督に任命して欧州から追い払ったが、その後もウィンザー公とナチとの接触は続いていた。彼は心からドイツ第三帝国と大英帝国との「和平」を望んでいた———但し、徹底的にドイツに有利な条件で。何十年もの間王立公文書館に秘匿されていたこれらを裏付ける多くの文書は、最近の方針変更によりアクセスが可能になった。
 
'Edward VIII's treachery is mind-boggling': Viewers of Britain's Traitor King question 'why Duke of Windsor wasn't executed for treason' after he told Nazis to keep bombing England during WWII

先に挙げた TRAITOR KING の著者、Andrew Lownie 氏による自著の解説。新著では大戦後のウィンザー公の動きまでカヴァーしている。欧州の王室は結婚を通じて相互に浸透して入り組んだ策謀の舞台になっているので、王室メンバーの下半身問題はそこらのセックス・スキャンダルとは次元の違う話になりがちだ。「英国王がヒトラーの工作員だった」などと云うスキャンダルが隠蔽された経緯は或る程度解明されてはいるものの、それらの経緯を支えるイデオロギーや利害の背景の解明が不十分だ。
The Traitor King


「英国のナチ国王」について、こちらは米国の視点も交えたドキュメンタリー。MI5だけでなくFBIもまたウィンザー公夫妻について詳細なファイルを作成していた。第二次大戦後の日本の歴史を昭和天皇の秘密外交抜きには語れない様に、大英帝国の歴史も、表向き「統治しない」ことになっている英国王室の舞台裏での暗躍を抜きにしては語れないだろう(英国王室にはドイツの血が濃く混じっているので、政略結婚を通じた欧州全体の人的ネットワークを視野に入れる必要が有るだろう)。第二次大戦に至る経緯について十全に理解するには、ナチの手先だったエドワード8世が果たした役割を考えねばならないだろうが、ナチを支援していた大英帝国内部の勢力は彼だけではないので、恐らくそれだけでは物語の片面だけでしかない。何れにしろ、「成り行き次第では大英帝国はナチスドイツの属国として存続していたかも知れない」と云う可能性は、帝国主義勢力同士の勢力争いとしての第二次世界大戦の理解に、通常とは別の照明を与えるものだ。
Britain's Nazi King


「愛の為の王座を捨てた」と云うロマンティックなイメージで語られるエドワード8世(エリザベス女王の伯父)の、ロマンティックではない実態。彼はヒトラーの傀儡王として、ドイツ第三帝国に支配された後の大英帝国に君臨するつもりだった。英王室がヒトラーと通じていたなどと云うスキャンダルを世に出す訳には行かないので、帝国の関係者達は彼が王位を退き無力化させ、事態の隠蔽に努めた。
The Dark Side of The Royal Family: King Edward VIII


英チャンネル4の1995年のドキュメンタリー。「英王室の一員が実はヒトラーのスパイだった」なんて、下手なサスペンス映画のシナリオみたいだが、それが裏付けの取れた史実なのだから仕方が無い。英王室は「君臨すれども統治せず」と云う建前で、まぁ日本の皇室の様に無害な「象徴」であって、慈善行為や形式的な儀式等にしか関わらない非政治的な存在である、と云うPRが普段は為されている訳だが、実際には政治的な権力は持っているし、裏で色々と国政に影響を与える様な行動も取っている(なのでまぁ、大英帝国の「ディープ・ステート」の一部だと言っても良い)。大英帝国をドイツ帝国に支配させようとしたエドワード8世(ウィンザー公)の事例は一寸極端で、明らかに一般の帝国臣民の利益には反することをやっていた訳だが、他の連中だってヒトラーにロシアを攻めさせる為に支援を惜しまなかった訳で、果たしてウィンザー公は大英帝国にとって例外中の例外的な存在だったのか、それとも帝国主義者同士の間で偶々主流から外れてしまっただけなのか、と云う疑問が湧く。何れにしろ「大英帝国はナチスドイツに敢然と立ち向かった」と云うイメージは現実とは程遠い。帝国主義勢力同士の、恐らくは一般市民の目には触れないディープ・ポリティクス(深層政治)の領域に踏み込まなければ、英=独関係のダイナミズムは理解出来ないだろうと云う気がする。
Edward VIII the traitor king - complete documentary


英王室がナチの熱心な支援者であったことは以前から知られていたが、歴史家Andrew LownieのTraitor King: The Scandalous Exile of the Duke & Duchess of Windsorとそれに基付くドキュメンタリーEdwardVIII:Britain's Traitor Kingに拠ると、エドワード8世はナチが英国を爆撃して降伏させ、その後自分が傀儡政権の王として再就任することを望んでいた。英王室にとって大英帝国とは何だったのか?
 またフィリップ・マウントバッテン公(エディンバラ公)の家族の多くもナチと関わりが有り、フィリップ自身も優生学思想の持ち主だった。現在のチャールズ皇太子がSDGsゼロ成長アジェンダの熱心な支持者であることを考えると、かなり不吉な光景が見えて来る。
New Revelations Shed Light on Nazi Roots of House of Saxe-Coburg-Gotha
 上記記事の邦訳。元英国王がナチスドイツに自国を支配させることを目論んでいたと云うのは仲々に衝撃的な事実。西側諸国によるロシア征服計画「ヒトラー・プロジェクト」には、まだ光の当てられていない領域が色々有りそうだ。
ザクセン=コーブルク=ゴータ家というナチの根源に光をあてる新たな暴露

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チャーチルの言動を見ればありうる。

 イギリス王家は影の暗躍者だとすれば、チャーチルは公然と政治権力を掌握した実際の権力者でした。

 そのチャーチルがナチスを実際に支持していたという事は、イギリス王室もそれを量買いしていたという事を意味します。
 チャーチルの根本思想であるイギリス人優位思想の頂点に君臨しているのがイギリス王室ですから、王室の意向を無視してナチスを支持していたとは到底考えられません。
 表の政治家としてチャーチルはナチスを支持したけれども、裏の暗躍者としてイギリス王家も同じことを考えていたとしても不思議はありません。
 ドイツに気に食わない劣等民族であるフランスや東欧を支配させ、イギリスは第三帝国の傘下に入り、ドイツに協力する事で大陸を間接的に支配下に置く事を考えていたと思います。

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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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