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ソ連経済の解説(『経済解説』に対する反論)(要点)

ソ連経済に関するデバンキング動画が面白かったので、要点を纏めてみた。Economics Explained と云うYoutubeの人気チャンネルが The Economy of the Soviet Union と云う解説動画をアップしていたが、他の無数の反ソ連のクズ動画と違ってあからさまにヘイト的なものではないので、一応論理的にその主張がどれだけ間違っているかを論証してみた、と云う趣向だ。共産主義や社会主義に対する非難は当たっていることも有るが、問題だらけの資本主義の実態から目を逸らさせる為のフェイクニュースであることが多い。「理想的にはこうである筈だ」と云う思い込みによって語るのではなく、具体的な文脈に即して実際にどうだったかで判断するよう心掛けていれば、状況の全体像を相対的に眺める視点が獲得出来るようになるだろうと思う。
Explaining The Economy of The Soviet Union (Responding to Economics Explained)




 ・「ソ連経済には良い仕事に対するインセンティヴが無い! 頑張っても怠けても同じ給料が貰える!」

 → 製品の質は努力ではなく業界の洗練度に関連している。日本や中国の製品は最初はゴミだったが、後に洗練して世界一の品質を誇る様になった。ソ連の場合は安く誰でも手に入れられる様な製品の大量生産がメインだったので、西洋の贅沢品との単純比較は間違っている。しかも西洋から経済封鎖を受けて優れた製品の輸入は限られており、西洋は資源の豊かな国の独裁者や軍事政権や抑圧的な政権を支援していたので、ソ連は何でも自前で作らなければならなかった。



 ・「国家投資は生産性を阻害する! 生産的でも非生産的でも必要に応じて割当が貰える!」

 → 仕事の質や量が良ければソ連の労働者は補償を受けていた(平均週9.2時間もサーヴィス残業する米国人と違って)。効率性に関して言えば、ピーター・ミュレル(現スコットランド首相の夫。間違っても社会主義者ではない)は、社会主義的計画経済の効率性は市場経済のそれと同じか、或いはそれ以上であるとの計算結果を出している。そしてリソースは「必要に応じて」割当てられる訳ではなく、国家経済計画に従って割当てられるので、怠ける管理者は当然出世出来ない。



 ・「公共部門は資源を浪費している! 給料以上の仕事をするインセンティヴが無い!」

 → これは寧ろ民間部門に当て嵌まる指摘。効率性は上昇しているのに物価は上がって給料は上がらない。給料以上の仕事をしたからと言ってボーナスを貰える人など居らず、責任と仕事が増えるだけ。社会主義経済もこの問題を抱えているのは事実だが、これを官対民の構図で捉えるのは馬鹿げている。



 ・「労働者は怠惰でやる気が無い! 経済理論ではなく政治的イデオロギーに基付いてリソースが割当てられるので、管理も杜撰!」
 → ソ連の生産性や効率性が西洋と同じで或る件については前出。割当ては入力に対して出力が最大化されるよう調整されていた。
 


 ・「問題が解決するまでリソースと人員が注ぎ込まれる! 競争市場では有り得ない無駄金が使われる! 非効率的に予算を消化した方が次の割当てを沢山貰える!」

 → 社会にとって何が生産的で効率的かを全知の市場が決めてくれるなら、人身売買や麻薬や賭博だって非常に儲かるから好ましいことになる。無料の住宅を大量生産するのは市場にとっては良い投資ではないが、人々にとっては良い。ニキビの治療・研究はマラリアの治療・研究より儲かるが、ニキビよりマラリアの方がずっと危険だ。市場が望むことと人々が望むことは屢々対立する。成長率の高い部門にはより多くが割当てられる為、非効率的な方がより多くの割当てを貰えると云うのも誤り。社会主義国家にも競争原理は存在し、社会主義競争(Socialist emulation)と呼ばれている。次の割当てを狙って可能な限り多くのリソースや予算を消化しておくと云う慣行は寧ろ資本主義社会、特に官民問わず軍事部門で盛んに行われている。例えば民間刑務所は法を厳しくするようロビー活動を行い、受刑者を増やすことで儲けを上げている。ソ連の効率性が良かったことは統計が示している。初期の経済状態は非常に悪かったのに、ソ連は世界第二位の経済大国にまで成長した。
 


 ・「公共部門は最悪だ、予算消化の為なら何でもする!」

 → 民間部門の方が優れていると云う与太話については、金融・銀行業界を見れば直ぐ嘘だと解る。度々危機を迎えては巨額の税金で度々救済して貰っているが、そのカネは一体何処へ消えた? 予算消化の為に無駄金を使う慣行については、どんな企業に務めている人でも良いから聞いてみれば良い。



 ・「ソ連は日常品を軽視して重工業を優先した! なのにソ連製品(例えば車)は低品質のものばかり!」

 → この指摘は部分的には正しいが、重工業を優先したからこそソ連はナチスドイツを倒すことが出来た。その後もソ連は冷戦の緊張状態を強いられていた事情を忘れてはいけない。ソ連は毎年何万台もの自動車を世界中の市場に出荷していたが、悪いものなら輸出出来なかった筈だ。そしてそれらは手頃な価格で買える様なものだったので、安物に高品質を求めてはいけない。それにソ連は公共交通が発達していたので、自家用車は不要な贅沢品だった。
 


 ・「経済成長も生活水準の向上も無かった!」

 → ソ連は世界第二位の経済大国で、目覚ましい経済成長と生活水準の向上を成し遂げた。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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