2022/09/01、モスクワ。MGIMOの学生、教師、教授達との新学期の会合に於けるセルゲイ・ラブロフ外務大臣の発言と質疑応答(抜粋)
2022/09/01、ロシア外務省が運営するモスクワ国際関係研究所での学生達に対するラブロフ外相のスピーチと質疑応答から、インパクトの有るものを抜粋してみた。妄想や願望ではなく地に足の着いた現実に基付いて論理的に話が出来る人に耳を傾けるのは心地が良い。これを聞いてストレートに理解出来る日本人がどれだけ居るかと想像すると頭が痛くなるが。
Foreign Minister Sergey Lavrov’s remarks and answers to questions at a meeting with MGIMO students, teachers and professors on the start of the new academic year, Moscow, September 1, 2022

「今日、休暇から戻って来た人達全員が議論している出来事は、ウクライナ周辺で起きていること、率直に言えば、西側/西洋全体が恥知らずにも、公然と、露骨に、攻撃的に我が国に対して仕掛けたハイブリッド戦争と関係が有ります。」
「漸く彼等は、この数年間我々が訴えて来たことが単なる空疎な説得や要求ではなく、我が国の死活的利益を反映していたことを理解したのです。今、彼等がヒステリックになり、前例の無い攻撃性と悪意とで自らの不備を取り繕おうとしているのがお分かりでしょう。率直に言って彼等は、平等、相互尊重、国際法の原則と諸国家の主権的平等の原則を謳う国連憲章の遵守を基礎として、この地球上の問題を処理したがりません。今起きていることは、ウクライナ国民の利益とは何の関係も有りません。西側諸国は、ロシアが世界の舞台で独立した勢力であり続けることを望んでいません。我々は歴史上、我が『パートナー諸国』(これは皮肉でそう言っているのですが)が、世界に於けるロシアの役割と地位が拡大したのに応じて、ロシアを弱体化させたいという願望を抱いた、もっと悪い時期を経験したことが有ります。私は、今回も彼等は成功しないだろうと確信しています———成功した者はまだ誰も居ません。」
「我々の結論は特に、公然と国際法を否定し、独自のルールを押し付けることを明言している西の『隣人達』から見た国際構造に関するものです。西洋人達はあからさまに、世界秩序は自分達の『ルール』に基付かなければならいと言っており、その一つがロシアの孤立です。」
「ユーラシア、ラテンアメリカ、アフリカの国々はこうした状況を目の当たりにして、この選択肢に全く満足しておりません。彼等は、西洋諸国が全ての人に押し付けようとしているルールをより良く理解し始めています。彼等は本来のアプローチ、即ち、国連憲章の土台である諸国家の主権平等———それは今日の世界の文明的、民族的、宗教的多様性の尊重を意味するものですが———そこに立ち戻ることを望んでいるのです。我々を孤立させようとする試みが行われていますが、我々は独りではありません。これらの試みは失敗する運命に在ります。特定の政治家に個人的な警告を発するなど、厚かましい圧力や恐喝、脅迫が行われているにも関わらず、80%の国々が西洋の制裁に加わっていないのです。 」
「………このグループの国々は、民主主義が単なる空虚な言葉であったり、西洋が主権国家の内政に干渉し、特定の国がどの様に生活を営むべきかについて独自の視点を押し付ける為のスローガンとして利用する道具であったりして欲しいとは思っていないのです。より多くの国々が、国際舞台に於て、全ての人が平等であり、互いに尊重し合える様な民主主義を切望しています。西洋は、国際関係を民主化することについて議論することをきっぱりと拒否し、その代わり、『ルールに基付く秩序』、つまりは西洋のルールに基付く秩序と云う独自の概念を強要しています。」
「(シェンゲン協定の壁について)私が思うに、我々は同じ道を辿るって、愚かさに対して別の愚かさで応えるべきではありません。」
「(外国人留学生に対して)我々のことをよく知れば知る程、世界が正しい道を歩む見込みが強くなります。宗主国の命令に他の全員を従わせるのではなく、協調と利害のバランスを模索するのです。」
「(欧州との関係について)それでも、教訓を学ぶのに長い時間が掛かりました。パートナー諸国が不適切な行動を取る度に、我々は『話し合う』必要が有ると考えました。そうすれば、彼等は道理を弁えて、彼等が提案し、我々が承認した『スローガン』に向かって共に進んで行けると考えたのです。そんなことは決して起きませんでした。
我々は最早幻想を抱いてはいません。ヨーロッパ人ともアメリカ人とも交渉することは不可能です。彼等は、私が先程申し上げた様なチャンネル、あらゆる形の交流を断ち切ったのです。彼等が制裁で何をしているかを考えるなら、我々は最早彼等を当てにすることは出来ません。また、安全保障や食糧安全保障、社会の加速的発展の為の重要な技術に関しても、最早当てには出来ません。全ての繋がりを断つことは有りませんが、互いに有益な関係に有る場合にのみ交流することでしょう。」
「若し非友好的諸国が我々との関係の範囲を極端に縮小したとしたら、我々はそのドアをノックしないでしょう。西洋はパートナーとして信頼出来ないと云う根本的な結論に達したことは説明しました。従って現在では、我々は制裁に加わっていない国、世界の状況をよく理解している国との協力を加速度的に促進して行きます。彼等は金融・経済も含め、西洋中心のシステムに依存することを望まず、自国の発展を保護すること望んでいます。その為にはロシア連邦との関係も含めて、関係を構築して行くことが必要になります。私は主にCIS諸国、アジア、アフリカ、中東を念頭に置いています。」
「(西洋の中国・ロシア敵視について)彼等は苦悩している様に見えます。彼等の計画が実現する可能性は有りません。アメリカやその衛星諸国が、アジア太平洋地域での協力関係を発展させる為にこの様なアプローチに固執し続けるなら、彼等は再び自らを窮地に追い込むことでしょう。そして西洋の何処かの攻撃的なサークルは、軍事衝突こそが唯一の解決策だと考えるかも知れません。西洋にはこのことを理解している人も居ますが、非常に軽視している人も大勢居ます。重要なのは、ヨーロッパが米国のこうした計画に完全に服従し、自らの意志を失い、ワシントンの言うが儘に動いていることです。ロシアと中国は、こうしたリスクをはっきりと認識しています。我々は挑発に乗らず、西洋が押し付ける対立よりも、確実にこの地域の国々にとって遙かに魅力的なアジェンダを推進します。」
「(西洋が対ロシア制裁に参加しない国を罰すると脅していることについて)外交以前に常識的に考えて、インド、中国、トルコ、エジプト、インドネシアと云った国々に対して、どうしてこの様な傲慢な公式声明を出せるのでしょうか? これらの国々が公然と脅迫される時、これらの文明には尊厳と自尊心が有ることを誰も理解していないのでしょうか? その様な要求を聞かされるのは侮辱的です。仮に私的に言われたとしても、マナー違反であることに変わりは有りません。大国が海の向こうの誰かからの命令で何かをしなければならないと言われたとしたら、その意思を押し付けようとする人々との関係に長期的にどんな弊害が齎されることでしょう。私には想像することしか出来ません。」
「(西洋が各地で戦争を紛争の火種を撒いていることについて、イラクやリビアの例を挙げて)西洋は他の多くのプロセスに於ても同様に処罰を免れており、西洋に服従し、西洋にしろと言われたことなら何でも行う属国諸国にも、この不処罰の感覚を植え付けようとして来ました。西洋はこのことを承知していて、これを自分達の利益の為に利用しています。」
「(最後に)我々は誇るべき母校であり、ロシア連邦だけでなく国境を越えて指導的な立場に在るMGIMO大学が提案するあらゆるイニシアチブを、常に支援する用意が出来ています。知識の日おめでとう!」
Foreign Minister Sergey Lavrov’s remarks and answers to questions at a meeting with MGIMO students, teachers and professors on the start of the new academic year, Moscow, September 1, 2022

「今日、休暇から戻って来た人達全員が議論している出来事は、ウクライナ周辺で起きていること、率直に言えば、西側/西洋全体が恥知らずにも、公然と、露骨に、攻撃的に我が国に対して仕掛けたハイブリッド戦争と関係が有ります。」
「漸く彼等は、この数年間我々が訴えて来たことが単なる空疎な説得や要求ではなく、我が国の死活的利益を反映していたことを理解したのです。今、彼等がヒステリックになり、前例の無い攻撃性と悪意とで自らの不備を取り繕おうとしているのがお分かりでしょう。率直に言って彼等は、平等、相互尊重、国際法の原則と諸国家の主権的平等の原則を謳う国連憲章の遵守を基礎として、この地球上の問題を処理したがりません。今起きていることは、ウクライナ国民の利益とは何の関係も有りません。西側諸国は、ロシアが世界の舞台で独立した勢力であり続けることを望んでいません。我々は歴史上、我が『パートナー諸国』(これは皮肉でそう言っているのですが)が、世界に於けるロシアの役割と地位が拡大したのに応じて、ロシアを弱体化させたいという願望を抱いた、もっと悪い時期を経験したことが有ります。私は、今回も彼等は成功しないだろうと確信しています———成功した者はまだ誰も居ません。」
「我々の結論は特に、公然と国際法を否定し、独自のルールを押し付けることを明言している西の『隣人達』から見た国際構造に関するものです。西洋人達はあからさまに、世界秩序は自分達の『ルール』に基付かなければならいと言っており、その一つがロシアの孤立です。」
「ユーラシア、ラテンアメリカ、アフリカの国々はこうした状況を目の当たりにして、この選択肢に全く満足しておりません。彼等は、西洋諸国が全ての人に押し付けようとしているルールをより良く理解し始めています。彼等は本来のアプローチ、即ち、国連憲章の土台である諸国家の主権平等———それは今日の世界の文明的、民族的、宗教的多様性の尊重を意味するものですが———そこに立ち戻ることを望んでいるのです。我々を孤立させようとする試みが行われていますが、我々は独りではありません。これらの試みは失敗する運命に在ります。特定の政治家に個人的な警告を発するなど、厚かましい圧力や恐喝、脅迫が行われているにも関わらず、80%の国々が西洋の制裁に加わっていないのです。 」
「………このグループの国々は、民主主義が単なる空虚な言葉であったり、西洋が主権国家の内政に干渉し、特定の国がどの様に生活を営むべきかについて独自の視点を押し付ける為のスローガンとして利用する道具であったりして欲しいとは思っていないのです。より多くの国々が、国際舞台に於て、全ての人が平等であり、互いに尊重し合える様な民主主義を切望しています。西洋は、国際関係を民主化することについて議論することをきっぱりと拒否し、その代わり、『ルールに基付く秩序』、つまりは西洋のルールに基付く秩序と云う独自の概念を強要しています。」
「(シェンゲン協定の壁について)私が思うに、我々は同じ道を辿るって、愚かさに対して別の愚かさで応えるべきではありません。」
「(外国人留学生に対して)我々のことをよく知れば知る程、世界が正しい道を歩む見込みが強くなります。宗主国の命令に他の全員を従わせるのではなく、協調と利害のバランスを模索するのです。」
「(欧州との関係について)それでも、教訓を学ぶのに長い時間が掛かりました。パートナー諸国が不適切な行動を取る度に、我々は『話し合う』必要が有ると考えました。そうすれば、彼等は道理を弁えて、彼等が提案し、我々が承認した『スローガン』に向かって共に進んで行けると考えたのです。そんなことは決して起きませんでした。
我々は最早幻想を抱いてはいません。ヨーロッパ人ともアメリカ人とも交渉することは不可能です。彼等は、私が先程申し上げた様なチャンネル、あらゆる形の交流を断ち切ったのです。彼等が制裁で何をしているかを考えるなら、我々は最早彼等を当てにすることは出来ません。また、安全保障や食糧安全保障、社会の加速的発展の為の重要な技術に関しても、最早当てには出来ません。全ての繋がりを断つことは有りませんが、互いに有益な関係に有る場合にのみ交流することでしょう。」
「若し非友好的諸国が我々との関係の範囲を極端に縮小したとしたら、我々はそのドアをノックしないでしょう。西洋はパートナーとして信頼出来ないと云う根本的な結論に達したことは説明しました。従って現在では、我々は制裁に加わっていない国、世界の状況をよく理解している国との協力を加速度的に促進して行きます。彼等は金融・経済も含め、西洋中心のシステムに依存することを望まず、自国の発展を保護すること望んでいます。その為にはロシア連邦との関係も含めて、関係を構築して行くことが必要になります。私は主にCIS諸国、アジア、アフリカ、中東を念頭に置いています。」
「(西洋の中国・ロシア敵視について)彼等は苦悩している様に見えます。彼等の計画が実現する可能性は有りません。アメリカやその衛星諸国が、アジア太平洋地域での協力関係を発展させる為にこの様なアプローチに固執し続けるなら、彼等は再び自らを窮地に追い込むことでしょう。そして西洋の何処かの攻撃的なサークルは、軍事衝突こそが唯一の解決策だと考えるかも知れません。西洋にはこのことを理解している人も居ますが、非常に軽視している人も大勢居ます。重要なのは、ヨーロッパが米国のこうした計画に完全に服従し、自らの意志を失い、ワシントンの言うが儘に動いていることです。ロシアと中国は、こうしたリスクをはっきりと認識しています。我々は挑発に乗らず、西洋が押し付ける対立よりも、確実にこの地域の国々にとって遙かに魅力的なアジェンダを推進します。」
「(西洋が対ロシア制裁に参加しない国を罰すると脅していることについて)外交以前に常識的に考えて、インド、中国、トルコ、エジプト、インドネシアと云った国々に対して、どうしてこの様な傲慢な公式声明を出せるのでしょうか? これらの国々が公然と脅迫される時、これらの文明には尊厳と自尊心が有ることを誰も理解していないのでしょうか? その様な要求を聞かされるのは侮辱的です。仮に私的に言われたとしても、マナー違反であることに変わりは有りません。大国が海の向こうの誰かからの命令で何かをしなければならないと言われたとしたら、その意思を押し付けようとする人々との関係に長期的にどんな弊害が齎されることでしょう。私には想像することしか出来ません。」
「(西洋が各地で戦争を紛争の火種を撒いていることについて、イラクやリビアの例を挙げて)西洋は他の多くのプロセスに於ても同様に処罰を免れており、西洋に服従し、西洋にしろと言われたことなら何でも行う属国諸国にも、この不処罰の感覚を植え付けようとして来ました。西洋はこのことを承知していて、これを自分達の利益の為に利用しています。」
「(最後に)我々は誇るべき母校であり、ロシア連邦だけでなく国境を越えて指導的な立場に在るMGIMO大学が提案するあらゆるイニシアチブを、常に支援する用意が出来ています。知識の日おめでとう!」
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