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覚えておこう、第2次世界大戦でロシアが払った犠牲(と、現代のファシスト共があなたに忘れていて欲しい幾つかの不愉快な事実)

2023/04/27のウォルター・デュブラニカ氏の記事を紹介する。第2次世界大戦については日本人の殆どは「日米の戦い」しか頭に無い様だが、全体像はそれより遙かに大きく、異なっている。このことは21世紀の国際社会に関する認識にも大きな影響を与えていると私は思うのだが、この短くも的確な記事はその為の考えるヒントを幾つかくれると思う。
A Reminder of Russia’s Sacrifice in WW2 (and other uncomfortable facts modern fascists would like you to forget)



 人類史上最大の地上戦は、1939年9月から1945年5月に掛けてヨーロッパで起こった。この戦争が終わってから75年以上が経過した。だが、第2次世界大戦は現在まで単一の資料で数値化されていない。ヨーロッパでは第2次世界大戦について多くの本が書かれている。

 定量化しておかなければならない要素が2つ存在する。



兵器

 ロシアは兵器の97%を自国で生産した。これは私がノースカロライナ州ブラッグフォート・マーティンの図書館で 1956年に読んだ機密解除された米陸軍文書に基付いている。

 ロシアが製造した兵器の内訳は以下の通り。

  自国の大砲:100%(どの国にも引けを取らない)

  自国の小火器:100% (AK-47は1947年に登場)

  自国の戦車:99% (T-34は第2次世界大戦で最高の戦車だった)

  自国の航空機:93%
 
  自国のトラック:80%

死傷者

 第2次世界大戦で戦死した欧州枢軸軍の95%は東部(ロシア)戦線で殺された。

 戦争の初期または中盤に10万人の一流兵士を殺害することは、戦争末期に100万人の二流兵士を捕虜にすることよりも大きな軍事的成果だ。

 この割合(95%)は、1939年9月から1945年5月までの第2次世界大戦の時系列分析を行うことで確認出来る。ドイツ軍人ウィリー・リースの著書"A Stranger to Myself"の序文で、英国の歴史家サー・マックス・ヘイスティングスは、枢軸国軍の95%がロシア戦線で死亡したと述べている。私がこの数字が書かれているのを見たのはこれが初めてだった。

 これらの数字は、20世紀にヨーロッパ人が巻き込まれ、数千万の命を奪った2つの内戦への反省を込めて提示されている。

 これらの紛争を回避出来た/すべきだったなら、世界はどれほど良くなり、より安全になったことだろう。

1939〜1945年

 ドイツは1939/09/01にポーランドを攻撃した。数日後、英国とフランスがドイツに宣戦布告した。

 西洋の歴史家達は、殆ど全く戦闘が起こらなかった為、1939年から1940年「まやかし戦争(PHONEY WAR)」と表現している。

フランス

 第2次世界大戦前夜、フランスは机上ではヨーロッパ最大且つ最も強力な軍隊を擁していた。1940年春にドイツ軍がパリを占領した時、彼等が失った部隊は、パヴロフ軍曹とその分隊十数人の英雄的なソ連兵が守備するスターリングラードの建物を占領しようとした(が、成功しなかった)時に失った部隊よりも少なかった。パヴロフの家は今もスターリングラードに残っている。

 フランス人は戦後25年経って漸く、ナチスと戦ったフランス人よりもナチスに協力し支援したフランス人の方が多かったことを認めた。

 最後のドイツ鉄十字勲章(米国の議会名誉勲章に相当する)は、ベルリンの戦いでフランス人に授与された。彼はフランスのS.S.シャルルマーニュ師団に所属していたが、この師団はロシア軍によって掃討された。

英国
 
 最初に英国兵士が殺害されたのは1939年12月、フランスでのことだった。1939年12月、英国は合計4人の兵士を失った。

 1940年の春、ドイツ軍は冬の休止状態を経て攻撃を開始した。フランスに居た30万の英国軍は武器を放棄して英国に帰還した。「まやかし戦争」は1939年から1940年まで続いた。

 英国はフランス侵攻中の1944年6月に大挙してヨーロッパに帰還した。フランスでの戦闘は、1943年のイタリア半島や1942〜1943年の北アフリカでの戦闘よりも、軍事的に遙かに大規模だった。

西ウクライナと白ロシア(現ベラルーシ)の解放

 1939/09/17、ロシア人はポーランド占領下のウクライナ西部と白ロシアに侵入し、約500万人のウクライナ人、ロシア人、白ロシア人をポーランドの独裁政権から解放した。彼等はロシア人による解放を歓喜して迎えた。

 カーゾン線は第1次世界大戦が終わりオーストリア=ハンガリー帝国が崩壊した時に確立された。これは、ポーランドとウクライナ及び白ロシアとの間の適切な境界を正確に定めた。

 1917〜1921年のロシア革命の間、ポーランド人はカーゾン線の東側約125マイルを攻撃して移動し、約20年間に亘って500万の非ポーランド人人口を支配した。

 ポーランド政権は抑圧的であり、ロシア人、ウクライナ人、白ロシア人が毛嫌いしていたファシスト軍事独裁政権と呼ぶのが最も相応しい。弾圧の責任者達はカティンの森で最終的な代償を払うことになった。

 現在の国境は、第1次世界大戦後に確立されたカーゾン線に近似している。
Curzon Line

ドイツがソ連に侵攻

 1941/06/22、ドイツとその同盟諸国はソ連に侵攻した。ドイツの同盟国にはオーストリア、イタリア、ハンガリー、フィンランド、ルーマニアが含まれており、合計人口は1億7,000万人だった。

 更にドイツには、ポーランド(ポーランド人は殲滅予定だった)と英国を除く、中欧及び西欧の全ての国々からの協力者達が居た。戦争の最後の1年半に於けるドイツのS.S.師団の戦闘序列は、ドイツ人よりも非ドイツ人の方が多かった。

 ソ連の人口は1億9,000万人だった。

 ドイツと西洋諸国で表明された印象に拠れば、ドイツは4〜6週間で戦争に勝つ筈だった。「まやかし戦争」は楽勝だったのだから、ソ連でも同じことが起こるのではないか?

モスクワの戦い

 ドイツはモスクワの戦いで初の軍事的敗北を喫した。この戦いは1941年11月から1942年1月まで続いた。この戦いでドイツ軍は50万の死傷者を出した。1942年3月までに、東部戦線でのドイツ軍の死傷者は合計110万に達した。ロシアで16ヵ月過ごした後、1942年11月までに、ドイツは200万の死傷者を出した。

スターリングラードの戦い

 1942年8月、ドイツ軍は精鋭の軍隊を集め、125万の兵力でスターリングラードに接近した。これらの内、帰国出来たのは僅か3万人だった。

 1942/11/19、ロシア軍はスターリングラード内の33万のドイツ軍を包囲した。この内94,000人が1943/01/31に降伏した。この内帰国したのは5,000人だけだった。

 戦闘中ロシア人は、7秒毎にどちらかが殺されていることをドイツ人に知らせる秒刻み時計を設置した。春の雪解けの頃には、血の小川がヴォルガ川に流れ込んでいた。

 スターリングラードの戦いは世界を変えた戦いと言われている。若しナチが勝っていたらどうなっていただろうか?

北アフリカ
 
 北アフリカ最大の戦いは英国が戦ったもので、1942年11月のエル=アラメインの戦いだった。同時期、ドイツ軍はスターリングラードで包囲されていた。

 エル=アラメインに於けるドイツ軍の損失は、戦死1,000人、捕虜または負傷者9,000人だった。

 この期間中、ドイツ軍は北アフリカに3個師団を、東部戦線でロシア人と戦う為に160個師団を投入していた。

 米国は北アフリカで7,000人の兵士を殺されて失った。

クルスクの戦い

 モスクワの南550マイルに位置するクルスクの戦いは、1943年7月に起こった。

 この2週間の戦いでドイツ軍は125,000人の戦死者を出し、更に375,000人が捕虜になるか負傷した。ロシア側の損失は死亡者7万人だった。

 この時までにロシアの諜報機関はドイツ軍最高司令部に浸透しており、戦闘開始の数週間前には攻撃計画を正確に把握していた。ジューコフ元帥はロシア軍に対し、発砲すべき日時、正確な時間、場所について1週間前に命令した。

 クルスクは東部戦線に於けるドイツ軍最後の攻撃の試みとなった。が、それは失敗した。

バグラチオン作戦 1944年7月

 1944/06/22(ドイツがロシアに侵攻してから3年後)、ロシア人(ジューコフ元帥率いる第1白ロシア戦線)は、白ロシアの暗号で「バグラチオン作戦」と名付けられた大規模な攻撃をドイツ軍中央集団に対して開始した。

 中央軍集団との1週間の戦闘で、ドイツ軍の死傷者は48万人だった。Dデイ(1944年6〜7月)後の6週間のフランス第2戦線に於て、ドイツ軍の死傷者は合計14万人だった。週ベースでは、これは約20対1の比率になる。

 僅か12日間で、中央軍集団は43個師団の内25個師団を失った。5週間でロシア軍は西に200マイル移動し、ワルシャワの門に到達した。ドイツ軍にとって、中央軍集団の壊滅はスターリングラードの二の舞だった。同時期に米国と英国は東に20マイル移動した。

 中央軍集団に加えて、他の3つのドイツ軍が存在した:北ドイツ軍集団、北ウクライナ・ドイツ軍集団、南ウクライナ・ドイツ軍集団。彼等は全て短期間で敗北した。

 ロコソフスキー元帥の第2白ロシア戦線が東プロイセンとバルト諸国を占領、コーネフ元帥の第1ウクライナ戦線はプラハを占領、マリノフスキー元帥の第2ウクライナ戦線はブダペストとウィーンを占領し、トルブーキン元帥の第3ウクライナ戦線はルーマニアを占領した。ハンガリー軍とルーマニア軍も同様の方法で敗走した。

 興味深いことに、人口1,000万のハンガリーが東部戦線で殺されて失った兵士の数(15万)は、ヨーロッパと北アフリカで英国が被った損失よりも多かった。

ベルリンの戦い 1945年1~5月

 1945年1月〜2月、ロシア人はポーランドのヴィスワ川からドイツのオーデル川まで進軍した。攻撃は1945/01/12に開始された。

 この攻撃は、成功したアルデンヌでのナチスの攻撃に対抗したいと云うチャーチルの嘆願により、予定より早く開始された(アルデンヌでのバルジの戦いでは、米軍は18,000人が死亡し、6万人が負傷した)。

 3人のロシア元帥、ジューコフ、ロコソフスキー、コーネフは250万の軍隊を擁し、100万のドイツ軍と対峙した。

 04/16、チュイコフ元帥率いるロシア軍が4万丁の銃で発砲した。これにより、ベルリンに先立ってゼーロー高地でドイツ軍の最後の抵抗が打ち砕かれた。ドイツ人は5万人を殺されて失った。

 僅か16日間で、第一白ロシア戦線、第一ウクライナ戦線、第二白ロシア戦線の部隊がベルリンを占領した。この勝利は、ソ連軍が物質的・精神的に敵を凌駕していたと云う事実によって可能になった。

日本
 
 太平洋では、米国によって海軍が一連の手酷い敗北を被り、そしてまた原爆によって彼等の注意が向かざるを得なくなって初めて、日本人は状況を理解した。

 当然のことながら、ロシア人は160万の部隊を満州に送り込んだ。それは日本軍将校達を恐怖させ、捕らえられることを恐れて自分の妻子を殺そうとする程だった。捕虜となった日本兵の半数は帰国出来なかった。真珠湾攻撃と南京虐殺の報いだ。

ロシア兵の性格

 ロシア兵についての最も優れた描写は、大勢のドイツ人と、戦争中ずっと従軍記者だったロシア系ユダヤ人によるものだ。

 ヴァシリ・グロスマンはこう書いている:「私はロシア兵達の真の犠牲の精神に深く感銘を受けている。戦争中、ロシア兵は白いシャツを着て聖人の様に死ぬ。前線には、想像を絶する困難に対する忍耐と諦めが有る。これは強い人々の忍耐だ。これは偉大な軍隊の忍耐だ。ロシア人の魂の偉大さは信じられない程だ。」

 スターリングラードの或るドイツ兵はこう書いた:「ロシア人は人間じゃない、鋳鉄製の生き物か何かだ。」

 ウィリー・リースは著書の中で、東部戦線に出た後のドイツ人の態度について書いているが、彼はドイツの退役軍人達がロシア兵への賛辞を公言していること記している(西洋の兵士達に対してはその様な賛辞が送られることは滅多に無かった)。

 ドイツの或る著名な参謀は戦後、ロシア兵の長所について次の様に書いている:「ロシア軍が所有する最大の資産はロシア兵だった。彼は想像を超えて忍耐力が有り、辛抱強く、信じられない程毅然として勇敢だ。ロシア人の特徴は、生と死に対する徹底的な軽視であり、西洋人にはとても理解出来ない。」

 英国のギファード・マーテル将軍はロシア兵についてこう述べた:「戦場での彼等の勇気には議論の余地はないが、最も際立った特徴は、驚く程の強さとタフさだ。」

 最後のソヴィエト連邦英雄メダルは、ベルリンの戦いの最終日に或るロシア兵に授与された。彼は英雄的にドイツ人女性とその4歳の娘を安全に救出した。救助中に彼は致命傷を負い、数日後に死亡した。この英雄的行為を誰に報告すれば良いのか尋ねられた時、彼はこう答えた。「誰も居ない。家族は全員、戦争で殺された。」

 これは最も偉大なヒロイズムだ。

ロシア人が戦った戦いは、何百万ものアメリカ人の命を救った。

ロシアはどうやって勝ったのか?

 彼等にはより優れた兵士達が居た。

 彼等はより優れた兵器を持っていた。

 彼等にはより優れた将軍達が居た。

 ドイツの将軍達は貴族出身だった。

 英国の将軍達は上流階級の出身だった。

 ロシアの将軍達は農民の出だった。

 1930年代、赤軍が戦術と作戦上の独創性を実証した結果、第2次世界大戦では巨大な戦車部隊、砲兵、歩兵、航空機から成る大規模な戦闘が繰り広げられた。

 ソヴィエトの縦深攻撃(DEEP OPERATION)の概念は、軍事概念の歴史の中でこれまでに獲得された最も先進的なアイディアを表していた。この概念がドイツ軍敗北の大きな要因だった。

 主な要素は次の通りだ:

 保持部隊
 主たる機動部隊
 予備部隊

 主たる機動部隊は衝撃効果を生み出す主要な手段で構成される。

 破壊または攻撃効果———これは防御陣地を二分することを目的とする。

 突破口を開く為の梯形陣は、防御側の配置を破壊し、防御側の重心を超えて機動力の有る集団を構築するように設計されている。

 防御側の深部に前進した後、残りの部隊を無力化する。

 縦深攻撃理論では、作戦レヴェルでの機動の基本形態として攻撃と防御を規定し、その目的として作戦衝撃を規定している。

 旋回機動パターンは、作戦攻撃によって得られる作戦衝撃の最も進んだ状態として定義された。

 「保持部隊」、「主たる機動部隊」、「予備部隊」の間の作戦相乗効果は、作戦機動を成功させる為の必須条件として定義された。

まとめ

 ロシア人とアメリカ人は共通の歴史を見直す必要が有る。アメリカ人はこれまで約10の異なる国々と戦って来たが、ロシア人とは一度も戦っていない。第2次世界大戦の勝利に対する彼等の貢献は賞賛され、記憶されなければならない。
Raising the Soviet Flag
Shostakovich: Symphony No. 7 "Leningrad" (Bernstein CSO 1989)
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何故米国はイスラエルを支持するのか? 経済学者マイケル・ハドソンによる地政学的分析(抄訳)

2023/11/12のベン・ノートン氏の記事から、異端の経済学者マイケル・ハドソン氏による地政学的分析の部分を抄訳した。知っている人は既に知っている内容ではあるだろうが、重要なことなので復習しておく。その後のインタビューは割愛したがこれも興味深い。日本のメディアでは米国のイスラエル支援を説明するに際して今だに「イスラエル・ロビーの影響」などと云う話がまことしやかに語られているが、話はもっと単純であって、ユダヤ人の歴史や宗教対立の話もこの際殆ど無視して良い。全ては(英米)帝国の地政学的戦略の問題だ。
Why does the US support Israel? A geopolitical analysis with economist Michael Hudson




 イスラエルは世界で最も重要な地域のひとつに於ける米国の地政学的権力の延長だ。このことを確認しておくことが極めて重要だ。

 現米国大統領ジョー・バイデンは上院議員だった1986年にこう発言している。

 「(イスラエルに対する米国の支持について)謝罪する必要は全く有りません。これは我々が行う最高の30億ドルの投資なのです。イスラエルが存在しなかった場合、米国はこの地域に於ける自国の利益を守る為にイスラエルを発明しなければならなかったでしょう。 米国はそこへ行って、イスラエルを発明しなければならなかったでしょう。」

 先ず第一に言うまでも無く、所謂「中東」と呼ばれる西アジア地域は世界最大級の石油とガスの埋蔵量を誇っている、そして世界中の経済インフラ全体は化石燃料に依存している。

 世界は徐々に新しいエネルギー源に移行してはいるが、化石燃料は依然として世界経済全体にとって絶対的に重要だ。そして米国政府の目標は、世界の石油・ガス市場で安定した価格を確実に維持出来るようにすることだ。

 しかし、これは単なる石油やガスよりも遙かに大きなものに関するものだ。1990年代以降、冷戦の終結とソ連の打倒以来、米軍が表明した方針は、米国が世界のあらゆる地域に対する支配を維持しようとして来たと云うことだ。

 これは1992年に米国国家安全保障会議によって、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンの中で非常にはっきり述べられている。米国国家安全保障会議は次の様に書いている:

 「(米国の)目標は、我々の利益にとって重要な地域を如何なる敵対勢力も支配出来ないようにすることである。そしてそれによって、米国と同盟諸国の利益に対する世界的な脅威の再出現に対する障壁を強化するのである。

 これらの地域には、ヨーロッパ、東アジア、中東/ペルシャ湾岸、ラテンアメリカが含まれる。この様な重要な地域の資源が固定的且つ非民主的に管理された場合、我が国の安全保障に重大な脅威が生じる可能性が有る。」

 2004年に米国政府が発表した国家軍事戦略は、ワシントンの目標は「全方位支配(Full Spectrum Dominance)」———つまり軍事作戦の範囲全体に亘ってあらゆる状況をコントロールし、あらゆる敵を倒す能力」であると謳った。

 歴史的に見て中東に関しては、米国は所謂「二本柱」戦略を採用して来た。西の柱はサウジアラビア、東の柱はイランだ。

 1979年にイラン革命が起きるまで、イランは米国の支援を受け、この地域に於ける米国の利益に貢献する独裁者、シャー、君主によって統治されていた。だが1979年の革命によって二本柱の柱の片方を失った所為で、米国にとって、この極めて戦略的な地域の支配を維持する為にはイスラエルの重要性が益々高まることになった。

 問題はこの地域の膨大な石油埋蔵量やガス埋蔵量だけではないし、世界有数の石油・ガス生産国の多くが西アジアに位置していると云う事実だけでもない。


 地球上で最も重要な貿易ルートの一部がこの地域を経由しているのだ。エジプトのスエズ運河の重要性は幾ら強調してもし過ぎることは無い。これは中東からヨーロッパへ、紅海から地中海への貿易を結んでいて、世界の輸送コンテナの約30%がスエズ運河を通過する。これは世界の全商品貿易総額の約12%に相当する。

 次に、スエズ運河の真っ直ぐ南、紅海がアラビア海に入る箇所、イエメンの海岸の直ぐ沖には、バブ・エル=マンダブ海峡として知られる地政学的に重要なチョークポイントが存在する。ここは毎日600万バレル以上の石油が通過する。
The Bab el-Mandeb Strait

 歴史的に、米国はこの地域を支配しようとして来た。それはエネルギー供給のコントロールを維持する為だけでなく、グローバル化した新自由主義経済システム全体の基盤となるこれらの世界貿易ルートを確保する為でもある。

 そして世界の多極化が進む中で、この地域に於ける米国の影響力が弱まるにつれ、米国がコントロールを維持しようとする上でイスラエルの重要性が増している。

 このことは、OPEC(石油輸出国機構)を通じた原油価格を巡る議論ではっきりと判る。この機構は最近本質的に拡大され、現在はロシアを含めてOPEC+として知られている。

 現在、サウジアラビアと、ワシントンの大敵であるロシアは、世界の石油価格を決定する上で重要な役割を果たしている。

 歴史的にサウジアラビアは米国の忠実な代理人だったが、リヤドは益々非同盟的な外交政策を続けている。その大きな理由は、中国が現在、この地域の多くの国々にとって最大の貿易相手国であることだ。

 中国は10年間、ペルシャ湾からの石油とガスの最大の輸入国だった。更に中国はグローバルなインフラ・プロジェクトである一帯一路構想を通じて、世界貿易の中心をアジアに戻しつつある。そして一帯一路構想に於て、特に「(陸)路」とは新シルクロードを指している。


 では、新シルクロードと一帯一路構想に於て、どの地域が絶対的に重要であるか当てられるだろうか?

 勿論、それは中東だ。繰り返す様にこれは「西アジア」と呼ぶ方が適切だが、実際「中東」と云う(このヨーロッパ中心視点の)用語は、アジアとヨーロッパを繋ぐこの地域の地理戦略上の重要性を物語っている。

 またこれは、何故米国が新たな貿易ルートを独自に構築して一帯一路構想に必死になって挑戦しようとしているのかも説明している。米国は特に、インドからペルシャ湾に入り、イスラエルを経由する貿易ルートを作ろうとしている。

 従ってこれら全てのプロジェクトに於てイスラエルは、世界で最も重要な地域のひとつに於けるアメリカ帝国の権力の延長として、重要な役割を果たしている。

 1986年にバイデンが、若しイスラエルが存在しなかったら米国はイスラエルを発明しなければならないだろうと発言したのはこの為だ。

 バイデンは2022/10/27、イスラエルのアイザック・ヘルツォグ大統領とのホワイトハウス会談でこうも発言している。

 「鉄壁の取り組みについても説明します———これは私のキャリアの中で5,000回も繰り返しますが———米国のイスラエルに対する鉄壁の関与は、我々の原則、我々の考え、我々の価値観に基付いています。それらは同じ価値観です。

 そして、私がよく言ったことですが、(ヘルツォグ)大統領、、若しイスラエルが存在しなかったら、我々はイスラエルを発明しなければならないでしょう。」
President Biden Hosts a Bilateral Meeting with President Isaac Herzog of Israel


 つい最近の2023/10/18にも、バイデンはイスラエルで行った演説の中で同じ発言を繰り返している。

 「私は長い間言って来ました、若しイスラエルが存在しなかったら、我々はそれを発明しなければならないでしょう」。
Watch President Biden's full remarks on the Israel-Hamas conflict


 この演説当時、バイデンは支援の為にイスラエルを訪れたが、米国と「価値観を同じくする」そのイスラエルは、ガザ地区に対して残忍な爆撃作戦を実施し、パレスチナ人に対する民族浄化を行っていた。これらは世界中の多くの専門家達「教科書的なジェノサイドの事例」と呼ぶものの一環で、国連のトップの専門家達は、パレスチナ人民がイスラエルによるジェノサイドの危険に曝されていると警告していた。

 そして米国は断固としてイスラエルを支援して来た。何故なら、ジョー・バイデンが繰り返している様に、イスラエルは西アジアに於けるアメリカ帝国権力の延長だからだ。そして若しそれが存在しなかったなら、ワシントンはそれを発明しなければならないだろう。



 マイケル・ハドソン氏のインタビューによる詳しい解説はこちら。 
Why does the US support Israel? A geopolitical analysis with economist Michael Hudson

EUはウクライナの徴兵忌避者達が正式に召集されたら国外退去させるのか?(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/12/21、ウクライナのウメロフ国防相は国外の徴兵忌避者に対して召集を掛けることを予告した。これによりEUは難しいジレンマに陥ることになる。
Will The EU Deport Ukrainian Draft Dodgers Once They’re Officially Called Up To Serve?



ウクライナ国外の徴兵忌避者達に召還命令

 2023/12/21、ウクライナのウメロフ国防相はドイツのメディアに対し、キエフは間も無く国外に居る自国民に対し、国に戻って軍隊に勤務するよう呼び掛けると語った。但し自主的に帰国しなかった場合にどうするかはまだ決まっていない。

 2022年2月以降、65万人の18~60歳の兵役年齢男性がEUに亡命し、難民として認定されてあらゆる法的保護を与えられたが、その理由は全て徴兵忌避であった為、この召集に応じる人は殆ど居ないと予想される。

 キエフは徴兵を拡大しているが、12/19のロシア側の主張に拠れば、キエフは既に40万近くの死傷者を出している。現在起こっている徴兵危機は、その穴を埋められなかったことに起因するものだ。ウクライナ国内の人口は既に大幅に減少しているので、国外に逃げた者を連れ戻さなければ間に合わないのだ。



EUが抱えることになるジレンマ

 EUは徴兵要求を拒否するだろうが、この状況はEUをジレンマに陥らせることになる。

 EUはウクライナへの融資に抵抗しているハンガリーを何とか押さえ込もうとしているが、他方、戦闘を続けるのに十分な兵力が無ければ、幾ら資金を調達しても意味が無い。だが既に正式に難民認定して法的地位を与えてしまった人々を強制送還することは出来ない。

 理論上は、亡命者達が任務の為に帰国することを拒否した場合、キエフは彼等に対して国際刑事警察機構(インターポール)の逮捕状を発行する可能性が有る。そうすればEUに対して圧力を掛けることが出来るが、これが逆効果になる可能性も有る。

 欧州の一部市民や一部野党はウクライナ難民を敵視しているが、それより多くの市民と、実質的に全ての欧州政府が、依然として彼等を支持している。が、彼等はそれぞれにジレンマに陥っている。

 ・難民敵視派:彼等は紛争の継続を支持しないが、ウクライナ難民を国外追放することは、正に紛争を継続することを意味する。
 
 ・難民支持派:彼等は難民を保護したいが、紛争も継続したい。だが紛争を継続するには難民を強制送還しないと無理だ。

 以上のことから、ウクライナがどれだけ送還を要求しようとも、難民がEU内に留まる現状に強く抗議する人は殆ど居ないと予想される。



進むも地獄、退くも地獄

 だが政策が変更され強制送還が実行されれば、大規模で暴力的な抗議活動が起こる可能性も有る。

 またユーロクラート達が現状維持を選んだ時にウクライナの要求が続いた場合にも、多くの熱狂的なウクライナ支持者達が人道的な義憤から一転してアンチになる可能性が有る。

 皮肉なことに、ウクライナの断固たる支持者達は自国の軍事援助を応援することで、人道危機に貢献していることになる。紛争を無駄に長引かせて40万近くの犠牲を出した責任を、彼等は負わねばならない。

 同様に、ウクライナに幻滅してこの危機を終わらせたいと考えている人々は、ウクライナ難民の追放に賛成する傾向が有るが、これもまた紛争を長引かせるだけだ。
 
 紛争が最終的に沈静化するにつれ、EUは流れに乗るか、より多くの肉を肉挽き機に投げ入れるか、どちらかを迫られることになる。

「降伏か、死か」———ネタニヤフ

RTの記事をベースに2023/12/22のネタニヤフの脅迫メッセージについて纏めた。
Surrender or die – Netanyahu



 2023/12/22、イスラエルのオフィル・ゲンデルマン報道官はX(旧Twitter)のアカウントで、ネタニヤフ首相の短い演説動画を投稿した。ネタニヤフは簡潔にこう言っている:

 「我々は勝利するまで戦う。

 我々は全ての目標を達成するまで戦争を止めない。

 ハマスの殲滅を完了し、人質全員を解放する。

 私がハマスに提案する選択ははとてもシンプルだ:降伏するか、死ぬかだ。

 連中には今もこれからも、これ以外の選択肢は無い。

 そして我々がハマスを殲滅した暁には、私は全力を尽くして、ハマス一味だろうとファタハ一味だろうと、ガザが二度とイスラエルを脅かさないようにする。」


 上の日本語訳は動画に付けられた英語字幕を訳したものだが、ロシアメディアRTは「これ以外の選択肢は無い」の件りは、「ハマスのテロリスト共は、最初から最後まで、歩く死人も同然だ」と訳しており、また、「脅かさないようにする」の後には、「我々が止めると考える者は誰であろうと、現実から乖離している」と云う一文を付け加えている。

 私はヘブライ語のリスニングは出来ないので自分では判断出来ないのだが、この辺は訳し方による違いかも知れない。細部はともかく、最大限の挑発を行っていることは明らかだ。

 因みに日本語メディアの報道は例によって全く参考にならない。
「目標達成まで戦争やめない」イスラエルはハマスに強硬姿勢(2023年12月22日)




 この声明はイスラエル人捕虜40人の解放と引き換えに更に1週間の「人道的一時停止」を、と云う申し出を、ハマスが拒否した直後に投稿された。動画は交渉決裂後の夜に録画されたものと思われる。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの記事に拠れば、匿名の情報筋の話として、イスラエルは人質解放と引き換えに軍事作戦を1週間停止し、ガザ地区への人道支援を拡大することを申し出た。だがハマスはこの提案を拒否し、如何なる協議だろうと先ず攻撃停止が先だと主張した。

 ハマスは10/07に推定240人のイスラエル人捕虜を捕え、推定1,200人の命を奪った。その後、ガザに対するイスラエル国防軍の攻撃によって人質数名が殺害された(と、RTは言っているが、確かに確証が取れている人質殺害はほんの数名ではあるものの、イスラエル国防軍がイスラエル人もろともハマスに対して砲撃を加えて大勢を殺害したと云う多くの証拠が存在する)。

 11月末の1週間の停戦中に互いの捕虜が交換された後、約120人が依然としてハマスに捕われていると推定されている。

 イスラエル軍はこれまでガザ北部を占領し、インフラを徹底的に破壊して来た。地元保健当局は、戦闘中に19,500人以上のパレスチナ人が死亡したと推定している。

 米国はネタニヤフ首相に対し民間人の犠牲を制限するよう求めているが、イスラエルへの軍事支援やその他の支援は継続している。イスラエルは諸外国からの反発に直面しており、イエメンのフーシは公然とパレスチナ側に味方し、紅海でイスラエル関連の船舶を攻撃している。

アルメニアへのインドの武器売却は、アルメニアの不器用なバランス取りを支援するのが狙いだ(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。インドはアルメニアに武器を輸出していて、ひょっとしたらイランも今後そうするかも知れない。これは親西洋に舵を切ったアルメニアが米仏に過度に依存しないようにさせる為のバランス調整に役立つ可能性が有る。
India’s Arms Sales To Armenia Aim To Assist Yerevan's Clumsy Balancing Act




 2023/09/19のカラバフ紛争によって、アゼルバイジャンは多極化へ、アルメニアは親西洋へと舵を切り替えた。

 インドとアルメニアの軍事関係は2020年の戦争後に拡大し始めたが、2023/12/15、インドがアルメニアにとって最大の武器輸入国として浮上していることが報じられた。

 ・インドからすれば、自国の軍需産業の輸出は少ない為、アルメニアへの輸出拡大は自国の価値を他国に証明する重要なチャンスだ。
 
 ・アルメニアからすれば、従来頼って来たロシア製兵器を、インド製と西洋製の組み合わせに徐々に置き換えることは、西洋への過度な依存を防ぐ為にも重要だ。

 但しインドの輸出品はアルメニアに届く前にイランを経由するので、今後イランがアルメニアに直接武器を輸出する可能性も有る。

 アルメニアを反ロシアに作り変えようとしている米仏と違って、インドもイランもその様な意図は持っておらず、穏やかな方法でアルメニアの西洋への依存を緩和したいと思っている。

 一方で、アゼルバイジャン(とトルコ)はカシミール紛争に於てパキスタン側に付いたので、インドとアゼルの仲が良好ではないことは否定出来ない。イランとの仲についても同様だ。従ってアゼルが上記の展開を自国に対する脅威と捉えたとしても無理からぬことだ。

 但しインドがアルメニアに輸出しているのは攻撃用ではなく防衛用のものなので、インドは恐らくアゼル(とトルコ)が懸念するかも知れないことを察知した上で、彼等を刺激しないよう注意している。

 但し同様にアルメニアに武器を輸出しているフランスの動機は、アルメニアをNATOの軍産複合体に引き込むことであり、その為に恐らく現地で支援要員が死亡したりすれば、フランスが介入を強める格好の口実になる。

 アルメニアは現在アゼルとトルコ、そしてロシアに対する被害妄想をこじらせているので、アルメニアのパシニャン首相が完全にNATO側に舵を切ったら、アゼルとトルコにとっては安全保障上の課題が生じる。最善のシナリオはパシニャンがこの方針を撤回することだが、それが無理な場合の次善のシナリオは、アルメニアが西洋に過度に依存する事態を回避することだ。

 中立国であるインドとイランによるアルメニアへの武器輸出は、その為の実際的な手段となり得る。アゼルとトルコは、アルメニアとNATOの関係を断ち切る為にジョージアと戦争をするつもりは無いが、同様に、インドとアルメニアの関係を断ち切る為にイランと戦争をするつもりは無い。アゼルとトルコは、アルメニアをNATOやインドから切り離したいとは考えているだろうが、現実には無理な話だ。

 但し米仏に対するこうしたバランス取りは、アルメニアにその気が有る場合にだけ実現可能だ。

 アルメニアはわざわざ異なるタイプの兵器をインドとフランスの両方から輸入していて、これは軍事作戦を複雑にすることになるのだが、このことはアルメニアがまだ完全にNATO寄りになった訳ではないことを示唆している。

フェイクニュース警報:モディは議会を「粛清」しなかった(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/12/21、インドが野党議員達を「粛清」したと報じられたが、恐らく彼等は自ら停職処分を望んで与党の評判を落とすことを狙っていた。背景には、来春に国政選挙を控えて、米国がインドに対する情報戦を強化していることが挙げられる。
Fake News Alert: Modi Didn’t “Purge” The Parliament



野党停職処分の経緯

 2023/12/21、セマフォル紙は「インドが野党議員の粛清後、物議を醸す刑事改革を推進」と報じた。

 この記事は、議事進行を妨害したとして141人の議員が停職処分を受けたことは「粛清」に相当すると主張し、その影響について恐怖を煽っている。

 背景としては12/13、インド国民会議が率いる新たな野党連合は与党インド人民党に圧力を掛ける目的で議会で騒動を引き起こした

 この1週間前、インド政府からテロリストに指定されている分離主義者がこの日に「議会の根幹を揺るがす」と予告していたのだが、丁度この日に複数の侵入者が議会内で黄色いガスを放出した。この事件はまだ捜査中だ。


 05/03マニプールでの暴動と同様に、これが国家安全保障の問題に関わることを考慮して、野党はこれを政治的に利用してインド人民党に討論を迫った。当時捜査が進行中だったので、詳細が明らかにされなかったのは別に不当なことではなかった。

 今回、野党はやり過ぎたので処分を受けた訳だが、その背景には前月の5つの地方選挙の内3つで連立野党が与党に敗北したことが有る。野党は来春の国政選挙に向けて、地方選挙ではもっと良い成績を収められるであろうと期待していた。なのでマニプールでも騒ぎを起こしたくはなかった。やれば大多数の国民からは良く思われないだろうことを知っていたからだ。だが地方選挙での敗北を受けて国政選挙の先行きを目にした今、彼等は警戒心を捨て去って、投票を非合法化しようと必死になっている様だ。



同時進行で起こっている印米関係の悪化

 こうした国内政治の再計算は、前述のテロ分離主義者と、彼の暗殺を共謀した容疑で匿名のインド政府職員が米司法省から起訴されていることを巡る、印米関係の悪化と並行して起こっている。

 米国の政策立案者のリベラル・グローバリスト派閥は、部分的にはイデオロギー上の同盟相手である連立野党が保守ナショナリストのインド人民党の信用を失墜させるのを助ける為に、こうした展開を支持している。

 従って、インドの野党議員達は寧ろ進んで停職処分を受けることを望んでいたと云う結論が導かれる。その目的は来春の国政選挙を控え、米国のイデオロギー上の同盟相手がインドに対して仕掛ける情報戦に貢献する為だ。

 この件を「粛清」と報じたニュースサイト、セマフォルは通常は信頼出来るメディアなのだが、今回はリベラル・グローバリストによって利用されたのは間違い無い。

 これに先立つ12/10にはワシントン・ポスト(ワポ)がインドに対して情報挑発を行っている。インドが秘密工作を行って米国の問題に干渉していると云う陰謀論を広めようとしたのだ。

 偶然か意図的なものかは不明だが、セマフォルの報道と同じ12/21にはフィナンシャル・タイムズ (FT)が、モディ首相の独占インタビューを掲載している。モディは「権威主義的」と云うお決まりの批判を否定しつつも、「これらの申し立てを浴びせる」「生態系」の権利を認めた。

 FTの彼に対する公正な扱いは、ワポやセマフォルの不当な扱いとは対照的だ。但しワポの中傷は意図的なものだが、セマフォルは恐らく利用されただけだろう。

 とにかく来春の選挙に向けて、米国の主要なメディアがインドとその指導者に対する攻撃を強化していると云う点は覚えておくべきだろう。

ロシア外務省はブチャの虐殺が仕組まれたものだったと指摘(抄訳)

TASS通信の記事の抄訳。2023/12/23のザハロワ報道官の発表では、ロシア側はブチャで殺害された人々のリスト提出を要請したが、今だに回答が無い。これはこの事件が米英の命令・支援を受けてキエフが手配した偽旗作戦であったことを示している。
Russian diplomat points to evidence of Bucha incident being staged



 2023/12/23、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はこう発言した。

 「ブチャで殺害された人々のリストを提供するようロシア当局とメディアが要請したのに、関連国際機関が返答しなかったことは、それが死体愛好家が演出した事件であったことを明らかにしています。」

 「これは米英から命令と支援を受けて、キエフ政権が手配したものです。」

 (この事件は)「1944年に第三帝国がネマースドルフで行った挑発行為」に触発されたものである(*訳注:「ネマースドルフの虐殺」については私は詳しいことは知らないのだが、Wikipediaのロシア語版記事では、西洋版とは違って、赤軍の仕業に見せ掛けたドイツ軍による偽旗作戦であった可能性が指摘されている)。



 12/19、セルゲイ・ラヴロフ外相はインタビューに語ったところでは、モスクワはブチャでの事件後に捜査が開始され、少なくとも死亡者のリストを入手することを期待していたのだが、これまでのところ何も行われていない。

 欧州安全保障協力機構(OSCE)は、何がブチャ事件の独立した調査を妨げているのかについて、TASS通信の質問を回避した。



 2022年4月、ロシア調査委員会のアレクサンドル・バストリキン委員長は、キエフ郊外のブチャで起きたウクライナ人の挑発行為を受けて、ロシア刑法第207条3項 (「ロシア軍の使用に関する虚偽の情報の公的流布」)に基付いて犯罪捜査が開始されたと発表した。

 彼はウクライナ国防省がロシア軍の信用を失墜させる目的で、ブチャで撮影されたとされる動画映像を西洋メディアに提供し、それを民間人の大量殺害の証拠だと説明したと指摘した。

 しかし2022/03/31にブチャ市長が行った声明は、他の報道と組み合わせると、ロシア軍が03/30に町から撤退したと云う事実を立証した。

 しかも、ロシア軍撤退直後にソーシャルメディア・プラットフォーム上で公開された、ウクライナ人が撮影した動画には、民間人殺害疑惑についての言及は全く無かった。

ビル・クリントンはプーチンのNATO加盟要請をソデにした

 2022/02/21にプーチン大統領が教書演説を行ったこと自体は日本でも報じられたが、その極めて重要な部分が報道からは抜け落ちていたので指摘しておく。
Address by the President of the Russian Federation on the events in Ukraine



 要点から言うと、2000年、プーチンはモスクワを訪れたビル・クリントンにロシアのNATO加盟の可能性を持ち掛けたが断られた。

 「これに加えて、これまで公の場で言っていなかったことを、私は今初めて口にします。2000年に、当時退任を控えた米国大統領ビル・クリントンがモスクワを訪問した時、私は彼に、ロシアのNATO加盟を認めることについてアメリカはどう思うか尋ねました。

 その会話の詳細を全て明らかにするつもりは有りませんが、私の質問に対する反応は、何と言うかかなり抑制されたものであって、その可能性に対するアメリカ人の本当の態度は、その後の我が国に対する彼等の実際の行動から見て取ることが出来ます。

 私が言っているのは、北コーカサスに於けるテロリスト達へのあからさまな支援、我々の安全保障上の要求と懸念に対する軽視、NATOの拡大継続、ABM条約からの離脱等です。

 そこで疑問が生じます:それは何故ですか? それは一体どう云うことなのか、目的は何なのか? あなた方が我々を友人や同盟者として見たくないのは解りました。ですが何故我々を敵にするのですか?

 答えはひとつだけです。これは我々の政治体制等に関するものではありません。 彼等はロシアの様な大きくて独立した国を必要としていないだけなのです。これが全ての質問に対する答えです。 これがアメリカの伝統的な対ロシア政策の源です。我々のあらゆる安全保障上の提案に対する彼等の姿勢はこれで説明が付くのです。」


 これは知っていた人は既に知っていた話ではあるが、プーチンが公にこの事実を認めるのはこれが初めてになるのかな? ロシアにとって面子が潰れる様な事実について、プーチンがわざわざ嘘を吐く理由は無いだろう。またこの事実を今まで公言していなかったことは、彼が米国の面子をも潰して交渉の余地を狭めてしまうことを望んでいなかった、と云うことを物語っている様にも思える。

 何れにせよ、これはNATOの存在目的に根本的な疑義を差し挟む重大な事実だ。ワシントンが本当にロシアが軍事的な脅威だと思っているのなら、何故大敵を味方に出来る絶好のチャンスをわざわざ拒否したのか? NATOが本当に「共同防衛」の為の組織なのであれば、クリントンの態度は合理的に説明が付かない(無論、ビルは千載一遇のチャンスをむざむざ逃してしまう様な底抜けの大間抜けである、と云う解釈も有り得るが)。



 因みにこの件についてビルがどう言っているかと云うと、2022/09/18のCNNのインタビューでNATOの東方拡大がロシアの軍事的な反応を引き出したのではないかと云う質問に対して、それは間違いだ、NATOの東方拡大はロシアの拡張主義の脅威に怯える国々を守る為の利他主義に基付くものだったといけしゃあしゃあと言ってのけた。
ビル・クリントン、ウクライナ戦争について語る(要点)

 「我々は適切なタイミングで適切なことを行ったと思います。そうしていなければ、この危機(ウクライナ戦争)はもっと早く発生していたかも知れません」

 どの国だって他国の言いなりにはなりたくない、と云うビルの主張はその通りだが、米国は冷戦後、旧ソ連諸国を分断してそれぞれを自分達の言いなりになる国へと作り変えた。ナチが支配する植民地にされたウクライナはその極端な例だ。そして仲良くしようと手を差し伸べて来たロシアを拒絶して、米国は一方的に外交的・情報的・軍事的挑発行動を繰り返して来た。自分達で危機を作り出しておきながら、いや危機は元々存在していたのだ、我々はそれに対処しただけなのだ、と責任を被害者になすり付けて言い抜ける詭弁の巧さと厚顔無恥さは、流石元帝国大統領と云ったところか。予備知識の無い人であれば高確率で信じるかも知れない。「良き支配者」としての帝国の自己イメージを取り繕う術に関しては、共和党よりも民主党の方が長けている。



 プーチンはその表面的なイメージが大量の嘘でごてごて塗りたくられている現実が見抜けず、2022年に最終的に軍事的な対応によって西洋全体に愛想を尽かすまで、無邪気に合理的な交渉が可能だと信じ込んでいた訳で、「冷徹な計算で動く元スパイ」と云う一般のイメージとは違って、彼はその根本に於ては素朴で愚直な人物なのだろうと思う。

 が、その彼も、2023年の12月には公の場で、自分がウブで世間知らずだった為に西洋に騙されていたことを認めている。西洋は、良き友、頼もしき同盟相手になれたかも知れない人物を、自らの傲慢さと愚かしさによって敵に変えたのだ。

ロシアの特別軍事作戦の法的根拠

サウスフロントの解説動画より抜粋。
Intensive Shelling of Donbass Residential Areas by Ukrainian Armed Forces Prior to Russia’s Recognition Lugansk and Donesk as Independent States



 2022/02/21、ウクライナ軍の砲撃を受け、ロシアのプーチン大統領は「ロシア連邦とドネツク人民共和国の間の友好、協力、相互援助に関する」国際条約に署名し、ドネツクとルガンスク両共和国を正式にウクライナからの独立国家であると認めた。プーチンは特殊部隊の派遣を決定したが、それはこの決定による以下の法的根拠に基付いている。

 ・共同防衛
 ・国境の共同保護
 ・互いの領土に基付き軍事インフラと軍を使用する権利
 ・互いの政府機関が発行する文書の承認


 つまり特別軍事作戦は国連憲章51条で明確に定められた集団的自衛権の発動であるとロシアは主張している。

 国際法も国内法もNATO憲章すらお構い無しに他国に爆弾を落としまくるNATOと違って、ロシア軍は特別軍事作戦の法的根拠を整えた上で出撃している。

目撃証言は、ロシアとの戦争でウクライナが先に発砲したことを示している(抜粋)

ドン・ハンクとジェレミー・クズマロフ両氏の記事より抜粋。多少補足した。
Eyewitness Reports Indicate Ukrainian Army Fired First Shots in War with Russia



 2014年以来続くドンバス戦争はミンスク合意の後も一度も停戦に至ることは無かったのだが、一応キエフ軍による砲撃の数は減っていた。だが2022/02/17(アナリストのジャック・ボー氏に拠れば02/16)以降、キエフ軍による砲撃は急増し、ルガンスクとドネツクとその周辺で数千件の停戦違反と爆発が地上のOSCE(欧州安全保障協力機構)監視達から報告された。

 OSCEの2022/02/18時点での地図は、停戦協定に違反する砲撃は主にウクライナ政府によって行われたことを示している。


 キエフはこの告発を全否定し、ドネツクとルガンスクで爆発が起きたことは認めたが、「占領者自身が占領地のインフラ施設を爆破し、入植地への常軌を逸した砲撃を行ったり、状況をエスカレートさせるその他の挑発を行ったりしている」と、現実には居もしないロシア軍の偽旗作戦による凶行だと断定した。

 02/18にはドネツクとルガンスクの指導者達は民間人に対し、数千人の難民の受け入れを開始しているロシアへ避難するよう呼び掛けた。西洋の評論家達はこれらはロシアの侵略に備える策略だと主張した。

 同02/18にバイデン米大統領は停戦違反が「大幅に増加」していることを認めたが、それらは全て「ドンバスでウクライナを挑発しようとしているロシアの支援を受けた戦闘員」の所為だと主張し、キエフがドンバスへの攻撃計画を立てていることを否認した。

 02/21にロシアは、ウクライナとの国境付近のロストフでロシア領土に侵入したウクライナ兵1人を拘束し、5人を殺害したと発表した。

 フォトジャーナリストのパトリック・ランカスターのドンバスからの報告も、最初に砲撃したのがウクライナ軍であることを示している(但し繰り返す様に砲撃は2015年以来ずっと続いている)。
Ukraine Shells 2 Schools In Donetsk Killing One (Location 2)


 ランカスター氏のインタビューで、住民の一人は「何時になったら終わるの? プーチンは何時来るの? 彼は何時私達を助けに来てくれるの?」と疲れた様子を見せて答えた。西洋では2014年以来ロシア軍がウクライナ東部を侵略しようと乗り込んで来ていたと云う話になっているのだが、実際の現地からの報告を見てみれば、ロシア軍など影も形も無い。ドンバスの住民達の多くは寧ろ早くロシア軍に来て欲しいと願っているのにまだ来ていなかったのだ。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

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