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特別軍事作戦に関するラブロフの最新の洞察を分析する(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。西洋が一極覇権は失われたと云う現実を認めない限り、自体は先へ進まない。紛争解決に向けて決定権を持っているのはロシアではなく、(最初からだが)西洋の方だ。
Analyzing Lavrov’s Latest Insight Into The Special Operation


 2023/08/19、ロシア外務省の機関誌であるインターナショナル・アフェアーズ・ジャーナルは、セルゲイ・ラブロフ外相とのインタビューを掲載した。

 彼は多極化へ向けたグローバルなシステム移行や特別軍事作戦について語った。これは全文読むに値するものではあるが、読者の簡便の為に、以下にそのハイライトをまとめてみる。
Foreign Minister Sergey Lavrov’s interview with The International Affairs journal, August 2023



ラブロフの発言

 彼は先ず、「西洋の少数派の軍事的、政治的、財政的、経済的拡大への終わりの無い努力」により、ウクライナに於けるNATOとロシアの代理戦争は避けられないと示唆した。その目標を追求する為に、「アメリカ人とその衛星諸国は、国際関係の自然な進化と多極体制の形成を遅らせようと、或いははその過程を逆転させようとさえしています。」これは、グローバリゼーションが最早西洋のテンプレートに従って進まないのではないかという彼等の恐怖によって駆り立てられている、と彼は付け加えた。

 そして彼は「西洋諸国は我が国を深刻な地政学的ライヴァルとして排除したいと考えています。ワシントンとブリュッセルが我々に対してハイブリッド戦争を開始したのはこの為です」と云う指導部の結論を再確認した。その準備として、「彼等は一世代全ての政治家達を、我々が共有する過去、文化、そしてあらゆるロシア的なものに対して宣戦布告する備えをするように育成することによって、皮肉にも、我々の隣国をロシアに対する敵対的な軍事防波堤に変えて来ました。」

 西洋の目的は、ウクライナを通じてロシアに代理戦争(制裁やテロを含む)を仕掛けることによって、「我々の経済力、技術力、防衛力を可能な限り消耗させ、主権を制限し、独立した外交・国内政策を放棄させること」だ。ラブロフ氏は、現状では「米国には紛争を終わらせる意思は無い」と信じているが、代理戦争を永続させることは米国とウクライナ自身の利益を損う危険が有るとも警告した。

 「武力衝突が長引けば長引く程、西洋の投資家達ははウクライナ紛争後の復興に貢献する意欲は減るでしょうし、またウクライナの戦場での成功や、どんな形でどんな国境内であれ、ウクライナが国家として存続する能力に対する信頼も弱まるでしょう。キエフが政府債務を返済出来るかどうかについては言うまでもありません。西洋諸国の納税者達は未払いの借金を背負わざるを得なくなるでしょうし、それは更なるインフレと生活水準の低下を引き起こすでしょう。」

 ロシアは、2021年末にクレムリンが米国とNATOに送った安全保証要求に詳述された自国の利益を確保する交渉を通じて、紛争を終わらせることを構想している。ラヴロフ外相は、「悪名高いゼレンスキーの和平方式」に屈することは決して無いと強調し、これは「無意味な最後通告であり(略)我々の基本的な安全保障上の利益を損うもの」であり、ウクライナやモスクワの新領土に於ける民族的ロシア人やロシア語話者に対する更なる虐待に繋がる可能性が有ると主張した。
 
 残念なことに、彼は「現段階ではロシアと西洋との間の交渉の見通しは存在しておらず」「キエフ政権の西洋のスポンサー達は絶えず交渉の条件を引き上げるよう圧力を掛けている」と評価している。またこうも言っている、「西洋の偽善的な対話の呼び掛けは、疲弊したウクライナ軍に休息と再集結の機会を与え、より多くの武器と弾薬を送り込む時間を稼ぐ為の戦術的策略であると我々は見ています。」

 しかし、若し米国がロシアと合意に達した場合、米国は突然キエフを見捨てるかも知れない。

 「同盟国への支援に関しては、米国は歴史的に最上の記録を持っている訳ではありません。1973年に南ヴェトナム、そして2021年にアフガニスタンのアシュラフ・ガニー政権に対する軍事援助を突然中止したこと、そしてこれらの動きが直ちに、米国に忠実な各政府の崩壊を引き起こしたと云う事実を思い起こせば十分でしょう。今日、ウクライナは略完全に、西洋の財政配分と武器供与に依存しています。」



ラブロフの発言の分析

 以下は彼の洞察の分析に移る。

 最後の点から再確認しておくと、ロシア指導部は西洋が主張する様に戦争に夢中になっている訳ではなく、交渉による紛争解決の道を模索し続けている。プーチン大統領は6月に、米国がキエフへの武器供与を止めるなら、代理戦争の政治的解決は依然として可能であると示唆しているし、ラブロフ外相もまた紛争凍結への支持を表明している。

 対照的に西洋の方は「(キエフに)ハードルを上げさせ」、益々高品質で現代的な兵器を大量に送り込み、平和を妨げている。その結果としてロシアも対応せざるを得なくなり、こうして自律的なエスカレーションのサイクルが続くことになる。

 但しキエフの反攻が予想通りに失敗した後、責任の所在を巡って見苦しい非難合戦が繰り広げられている。これは西洋諸国の比較的プラグマティックな政策立案者達に、この紛争に対する自国の立場を再考するよう促すかも知れない。

 但し代理戦争を政治的に解決するには、ロシアの国家安全保障上の利益の尊重が保証されることが条件となる。具体的にはラブロフ外相が明らかにした様に、ウクライナ発の正規・非正規型の脅威(軍事侵攻&テロ)が取り除かれ、新領土を含むロシア国内での民族的ロシア人及びロシア語話者の安全が確保されなければならない。

 この為には、西洋は一極覇権が永久に失われたことを受け入れる必要が有る。

 今日西洋諸国の政策決定に影響に最も影響を与えているのがどの派閥であれ、政策立案者達による暗黙の承認が無ければ、西洋諸国が誠意を持ってロシアと交渉し、妥協してロシアの国家安全保障上の利益を尊重すると同意することなど起こりそうにない。

 そこに課題が存在する。前述の派閥の認識は、代理戦争の点でも、多極化へ向けたグローバルなシステム移行の点でも、現実を正確に反映していないからだ。

 ラヴロフ外相はインタビューの冒頭近くでこのことに言及している。「西洋の現世代の指導者達は、歴史発展の論理を受け入れるのを拒否していることを全く隠していません。これは彼等がプロとして劣化し、現在の出来事を正しく分析し、将来の傾向を予測する能力を失っている証拠です。」

 そもそもロシアの特別軍事作戦が開始されたのは、西洋が一極覇権は失われたと云う現実を否認したことが原因だ。この点がクリアされない限りは事態は先へは進まない。
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発覚! 全員グル?:マウイの虐殺(要点)

マウイ火災を巡る不審な状況を解説した動画の要点を纏めてみた。念を押しておくと、以下の諸事実は何等かの具体的な陰謀を証明している訳ではなく、疑わしい点が幾つも有ると云うことを指摘しているに過ぎない。
EXPOSED! They’re All In On it | Maui Massacre





本当の死者数は?

 TV宣教師のパスター・ジャック・ヒブスに拠れば、マウイ島の隣のラナイ島には、183体の死体が打ち上げられた。マウイでは800体の身元不明の死体がID確認作業を進められている。メディアでは全く報じられていないが、死者は2,000名近くに上る可能性が有る。



FEMAの驚くべき贅沢

 火災が起こったマウイ島は言わずと知れた高級リゾート観光地だが、現地に駆け付けたFEMA(米緊急事態管理庁)職員達は、一晩1,300〜4,500ドルもする五つ星ホテルに宿泊している(これはFEMAに確認済みの情報だ)。バイデン政権は被災者1世帯につき700ドルを配ったが、FEMA職員の一晩分の宿泊費にすらならない。

 但しオーシャン・ビューの得られる一晩250ドルの別のホテルも選べる。

 FEMAは250億ドルもの予算を持っているが、ディエン・クリスウェル長官は「予算が足りない」と苦情を言っている。災害対応は高級ホテルに泊まらないと遂行出来ないものなのだろうか。
FEMA administrator says agency's disaster fund is running out of money




マウイの警察署長

 マウイの警察署長ジョン・ペレティアは、2017/10/01にラス・ヴェガスで起こった、58人が死亡、数百人が負傷した米国史上最悪の銃乱射事件で、現場の指揮を担当していた人物だ。この事件の真相は今だに十分に解明されていない。米国史上最悪の銃乱射事件の時の警察署長と、米国史上最悪の森林火災の時の警察署長は、偶然にも同一人物だった訳だ。

 彼は勤務開始僅か50日目で、何故か29%(年205,000ドル)もの昇給を受けた。

 ペレティアは警察署長と検視官を兼任しているが、2023/01/23(ジョシュ・グリーンがハワイ州知事に着任して僅か1ヵ月後)に可決されたばかりの法案HB869では、「透明性を促進し、利益相反を回避し、検視官の裁定に対する信頼を高める」為に、「死亡調査に於て、検死官は法執行機関から切り離され、独立した判断を自由に下すべきである」と定められている。「郡に監察医が居ない場合、その郡の警察署長が検視官を務める」とも書かれているので兼任は違法ではないのだが、ペレティアの場合は利益相反の疑いは免れない。

 ペレティアは火災で金属が融けた為に遺体のID確認が極めて困難になり、DNA判定が必要になったと発表したが、この時問題になっていたのは僅か5.7平方マイルの極く小さなエリアに住んでいる家族だ。どの家に何人の子供が住んでいたのか、彼は正確に把握することが出来た筈だ。



死体の総数は?

 マウイ島には500人近くのFEMA職員の他、270人の赤十字職員、400人のハワイ州兵、200人近くの米陸軍予備役が居る。それだけの職員が居ながら今だに正確な被害者総数を把握出来ない程、彼等は無能なのだろうか?

 ジャーナリストのニック・ソーターは、行方不明の子供達について会見を拒否し続ける市長に質問しようとした際、マウイ警察から妨害を受けた様子の動画を公開している。彼に拠れば、火災が集中したラハイナの4つの学校の生徒総数は3,000人以上で、他の学校に400人が通い、200人が遠隔学習を行っていた。「何人の子供達が死んだんですか?」と詰め寄るソーター氏に対して、市長は黙秘を貫いている。


 ソーター氏に拠れば、マウイの死体安置所は、病院に常設のがひとつ、警察署に仮設のがひとつ有るだけで、どちらも数百の死体で満杯になっている。



謎の汚染物質問題

 08/12、マウイ島の水道当局はラハイナとクラの住民に対し、沸騰させた後でも汚染されている可能性が有る為、流水を飲まないよう警告した。また、化学蒸気への曝露の可能性を避ける為、換気の良い部屋で短時間のシャワーのみにするよう警告した。彼等が言う、水道システムに侵入した「有害な汚染物質」とは具体的に何を指しているのだろうか?

 2022年11月、米宇宙軍はハワイに初の地域司令部を設置した。その後の2023/02/01、宇宙軍は(後に火災が起こった場所である)ハレアカラ火山山頂のマウイ宇宙監視施設に700ガロンのディーゼル燃料を流出させたことを謝罪した。この山はハワイ先住民にとって文化的、宗教的に重要な場所であり、神の住居と考えられており、司祭が儀式を行う場所でもあった。

 この事件の被害調査は、6月になってもまだ継続中だった。続報は出ていないが、仮に調査が継続中だったとしても、山火事によって中断されたことだろう。

 ハワイでは過去にも同様の流出事件が相次いでいる。

 2021年5月と11月:ホノルルの海軍のレッドヒル地下燃料貯蔵施設から数千ガロンのジェット燃料が流出

 2022/11/29、同じくレッドヒルで、1,300ガロンの有毒消火剤が流出

 2023/01/21、ホノルルのマウナケア望遠鏡から冷却剤が流出



全員新任?

 因みにこの時公式謝罪を行った宇宙軍のアンソニー・マスタリル准将は、2022年11月に着任したばかりだ。

 ペレティアがマウイに着任したのは2021年の12月。彼も新任だ。

 ジョシュ・グリーンがハワイ州知事の任に就いたのは2022年の12月。彼もまた新任だ。

ギリシャの火災とアレクサンドルーポリ港の戦略的重要性(要点)

ヴァネッサ・ビーリィ氏の解説の要点。ギリシャで起きた火災に巻き込まれたアレクサンドルーポリ港は、NATOにとって重要な戦略的意味を持つ拠点で、偶然にも「野心的な拡張計画」が予定されていた所だった。
Greek wildfires and the strategic importance of Alexandroupolis port

UK Column News - 25th August 2023



 2023年夏は何やら世界各地で火災の報道が相次いでいるが、今回はギリシャのアレクサンドルーポリで起こった火災を取り上げてみる。2023/07/18に発生した山火事はトルコとブルガリアに近いエヴロス県のアレクサンドルーポリ港にも影響を与えている。

 08/24時点で72,000ヘクタール以上が燃えており、これはここ数年で欧州で起こった記録された火災としては最大のものだ。



 この火災については子供や家畜が火に呑まれたとか、トルコからの難民が意図的に足止めされて焼死した等の個々の痛ましい報告が上がって来ているが、少し視野を広げて、この港の地政学的意味を考えてみよう。

 アレクサンドルーポリ港は2022年からウクライナ戦争景気に沸いている。ギリシャの他の主要な2つの港、テッサロニキとアテネのピレウス港は、それぞれロシアと中国からの投資が盛んだ。なのでNATOは比較的不活発で空き容量の多かったアレクサンドルーポリ港に目を付けた。
(訳注:有料記事だが日本語の関連記事も紹介しておく。ウクライナ戦争で要衝になったギリシャの港

 ここを使えばブルガリアとルーマニアを経由してウクライナへアクセスすることも出来るし、ロシアが哨戒している黒海と、NATO加盟国だが気紛れトルコが管理する難所ボスポラス海峡を迂回する中継基地としても機能させられる。米国は現在ウクライナへの武器供与にこの港を利用しているが、英国とイタリアもこれに続く予定だ。

 港湾当局はギリシャ政府の支援を受け、現在「野心的な拡張計画」を進めていると報じられている。これはより多くの波止場、新しい貨物ターミナル、追加の500mの埠頭、地元の自動車道へのバイパス、それに欧州横断輸送ネットワークに接続する鉄道の11億ユーロを投じたアップグレード等が含まれる。

 「(ウクライナのお陰で)我々は今とは違う回廊を世界に提供出来る様になります。これは戦争が終わった後でも長く残るでしょう。」

 偶然にも大規模火災が起こったお陰で、この拡張計画はやり易くなった訳だ。

 またこの港は間も無くエネルギー・ハブになるとも報じられており、主に米国の天然ガスをギリシャ、ブルガリア、その他の南欧諸国に届け、ロシアのガスへの依存を減らすのを助けると言われている。つまりNATOにとって、欧州のロシアへのエネルギー依存を減らす為にもこの港は重要なのだ。

 2023/02/16にはギリシャとブルガリアが「南東欧のエネルギー地図を変える」覚書に署名したことが報じられ、アレクサンドルーポリとブルガリアのブルガス港を繋ぐガス・パイプラインの建設が発表された。

 ギリシャのミツォタキス首相はこう述べている:「ギリシャとブルガリアは欧州のエネルギー安全保障に於て重要な役割を担っており、EUに対してより広範なサーヴィスを提供出来ます。」「我々はより広範な地域にエネルギー安全保障を提供出来ます。」

 08/21、火災が続く中、ミツォタキス首相はアテネで行われたウクライナとの二国間会談の後、ゼレンスキー大統領と共同記者会見を行い、ギリシャのウクライナ支持を改めて表明した。ゼレンスキーの方では「F-16パイロットの訓練」と黒海からの穀物の安全な輸送を確保するにはギリシャの支援が必要だと述べ、火災については支援の申し出も遺族への弔意の表明も何も無かった。
Μητσοτάκης σε Ζελένσκι: «Έμπρακτη η αλληλεγγύη μας και θα συνεχιστεί»

最近の調査で、若いポーランド人のウクライナに対する見方が大きく変わったことが判明(要点)

アンドリュー・コリブコ氏の記事の要点。キエフは若いポーランド人達の支持を急速に失いつつある。ポーランド与党は政権を維持したければ、この傾向に適切に対応しなければならない。
A Recent Survey Shows How Significantly Young Poles’ Views Towards Ukraine Have Changed



 幅広い国際研究機関から資金提供を受けている学者とジャーナリストのグローバルな協力プラットフォームである The Conversation は、2023/08/01、2023年5〜6月に16〜34歳の若いポーランド人2,000人を対象として行った世論調査の結果を発表し、彼等のウクライナに対する見方が2022年3月からどれだけ大きく変化したかを明らかにした。

 因みにこの研究を行ったのは、ベルリンの東欧国際問題センターの上級研究員2名であり、片方はオックスフォード大学ナフィールド・カレッジの準会員でもある。彼等は完全に西洋エスタブリッシュメントの専門家であって、どう考えても「ロシアのプロパガンダ」など流しそうにない立場の人達だ。



調査結果

 前置きが済んだところで、調査結果のハイライトを紹介しよう。

 ・ポーランド人の若者の半数以上は、ウクライナ難民が自国に永住することを望んでいない。難民はウクライナに帰国することを前提として、一時的な地位を提供されるべきであると考える若者は42%から52%に増加している。

 ・カトリック教徒と保守層は、他の人達より永住を望んでいない(それぞれ10%と13%増)。

 ・ポーランド人の若者の1/3以上は、政府がウクライナに対して中立になることを望んでいる。政府はウクライナを支持すべきだと主張する人は83%から65%まで低下し、34%はポーランドが中立を保つことを望んでいる。

 ・若いポーランド人の中でも年齢の高い層(25〜34歳)や都市部の外(人口50万人以下)に住んでいる人達、或いは過去18ヶ月間にウクライナ人支援に携わって来なかった人達は、より中立を望んでいる。

 ・ポーランドの若者、特に保守的な人達は、益々平和と中立に傾きつつある。ポーランド軍のウクライナ戦争への関与を望んでいるのは僅か2%に過ぎず、人道支援は60%が支持しているが、武器の提供を支持するのは28%だけ。武器の提供に最も強く反対していたのは極右支持者達(回答者の約20%)だった。



調査結果の分析

 1)反体制派の台頭。

 反体制派/反EUの連合党(自由と独立連合)の急速な台頭が、ウクライナ戦争や難民受け入れに関する若者達の態度に極めて重要な影響を及ぼしたことは明らかだ。彼等は無視出来ない政治勢力であって、今秋の国政選挙後にはキングメーカーになる可能性すら有る。

 ポーランド与党はこれに対抗する為、彼等に「ロシアの工作員」と云うレッテルを貼るかも知れない。彼等は既に05/29に「ロシア影響力委員会」なるものを立ち上げたが、これは多くの人々によって、ドイツの代理勢力と見做されているリベラル・グローバリストの野党「市民プラットフォーム」の信用を傷付ける為の試みだと解釈された。現在の社会政治的影響力を考えると、連合党もまたこの現代版マッカーシズムの標的にされる可能性が考えられる。

 2)キエフがポーランドを騙して第3次世界大戦を始めようとした件。

 この調査では触れられていないが、若いポーランド人の見方を変えたもうひとつの要因は、2022/11/15にウクライナがポーランドを誤爆した後、キエフがロシアの仕業だと嘘を吐き、NATO加盟国であるポーランドを騙して第3次世界大戦を始めさせようとしたことだ。この事件は、それまでウクライナ指導部は信用出来ないと主張して来た連合党の様な人々の正当性を証明し、これにより彼等の見方が大きく支持を増やすことになった。キエフへの武器供与を望まない人が増えたのもその所為だろう。キエフの主張が嘘だと判明するまでの短い間、ひょっとしたら彼等は人生のフラッシュバックを経験したかも知れず、その強い印象が、この紛争に対するよりプラグマティックな態度を助長したのかも知れない。

 3)穀物協定を巡る醜い争い。

 この調査が触れていないもうひとつの点は、ウクライナが最近ポーランドを非難したことが若いポーランド人の見方に及ぼした可能性だ。この調査は5〜6月に実施されたものだが、丁度同じ時期の05/09には、ポーランドを含むEU諸国が地元の農民を保護する為にウクライナ産農産物の輸入を一方的に禁止したことに対して、ゼレンスキーが「絶対に受け入れられない」と激怒している(そもそもこれらの農産物は食糧危機に苦しむグローバル・サウス諸国に優先して輸出されるべきものだったのだが、キエフは人道的配慮よりも収益性を重視していることが、これによって図らずも暴露された)。

 欧州委員会の関連協定は09/15に期限切れになる予定だったのだが、07/19にポーランドがその後も禁止措置を継続すると発表した後、キエフは再びポーランドを口撃した。これより報復は急速にエスカレートし、双方が相手国の大使を召喚した。その後両国の指導者達はこの醜聞についてTwitterでお互いを罵り合った。ここではこれ以上深入りしないが、これ以降キエフとポーランドとの関係は非常にややこしくなった。



まとめ

 この最新の調査結果とその分析を念頭に置くと、ポーランドの若者達のウクライナに対する見方が大きく変化したことは否定出来ず、それは今秋の国政選挙の結果に影響を与える可能性が高い。キエフはこの層の支持を失いつつあり、彼等の心は反体制派に傾いている。ポーランド与党は政権を維持したいのであれば、この傾向に適切に対応しなければならない。

ギリシャ

2023/03/21、ギリシャ議会はエネルギー規制庁を廃棄物・エネルギー・水規制庁として改組し、対象範囲を水道や都市サービスまで拡大する法案を可決した。労働組合と共産党は、これが更なる民営化への道を開くだろうと批判し、これは昨年から受け取り始めたEU復興基金の「要件」の一部だと主張している。一連の抗議活動がこれに続き、04/02には抗議の後に音楽コンサートも開催された。ギリシャ共産党は、水は社会的権利であって、商品であってはならないと主張している。EU経済圏に入っても、恩恵を受けるのは強い国ばかりで、弱い国はこうして搾取される側に回る。欧州圏自体が植民地経済化している。

Greek workers intensify protests against further privatization of water utilities

2023/02/28、ギリシャのラリッサ近郊のテンピで旅客列車と貨物輸送列車が正面衝突し、57人が死亡、85人が負傷した。この悲劇に激怒した労働者階級と学生青年団体は、鉄道当局と政府による犯罪的過失、資金不足、民営化が事故を引き起こしたと主張し、全国各地で精力的な抗議行動を開始した。03/08には全国各地で大規模な動員が行われた。
“Never forget, never forgive!”: Massive mobilizations across Greece denounce Tempi train disaster

ウクライナのネオナチのアゾフ大隊の本拠地であるマリウポリでは大勢のギリシャ人が迫害を受けていた訳だが、ウクライナのゼレンスキー大統領はギリシャ議会で支援を求める演説を行った際、無神経にも「自分の親戚は第二次世界大戦の時にナチスドイツと戦った」と主張するアゾフ戦闘員の動画を流したらしい。当初ゼレンスキーを歓迎していた左派(リベラル)のシリザ党でさえ「演説は挑発的」「歴史的な紛い物」とこれを非難し、元財務大臣は「議会と我々の国の人々を侮辱した」と発言した。
 これはギリシャ国民のナチスドイツと、戦後CIAの反共弾圧によって引き起こされた痛み(殺人、失踪、拷問、国内メディア支配)の記憶を呼び覚まし、怒りを買った。米=NATOは強い国民の反対にも関わらず何十年もギリシャ軍の近代化を続け、2014年以降は反ロシア作戦の為の軍事的ハブに作り変えて来た。
“A historic sham”: Zelensky’s speech to Greece’s parliament sparks national outrage, opens WWII-era wounds

 2022年4月に行われたギリシャ人の世論調査の結果では、ゼレンスキーの演説の印象については回答者の50%が「非常に悪い」、15%が「悪い」、16%が「中立」で、僅か11%が「良い」または「とても良い」と答えた。74%は政府のウクライナ支援方針に不満を持っているが、政府はお構い無しにNATOと路線を合わせている。
74% of Greeks disapprove of government’s handling of Ukraine crisis, majority want Greece to be neutral

 2022年3月のMEGA TVの世論調査では、ウクライナに武器を送ると云うギリシャ政府の決定には市民の66%が反対し、賛成は29%。但しウクライナ支持は70%で、制裁支持は60%。52%がEU軍創設を支持。53%は戦争が地域的に限定されると信じているが、40%はそれが世界的な紛争に繋がる可能性が有ると懸念している。
Poll: Greeks oppose sending military equipment to Ukraine

ギリシャでは All Workers Militant Front が組織した抗議者達がNATOがウクライナへ武器を送るのを阻止しようと警官隊と衝突し、8人が拘束された。3月にはアテネのピレウス港へのフランスの戦艦シャルル・ド・ゴールの寄港を阻止するべくデモが行われ、03/01には米露両領事館前でNATOの旗が燃やされた。
Protesters in Greece Try to Block Shipment of NATO Weaponry to Ukraine

関連スレッド。
 Burn Back Better(再建の為の放火)?

BRICSは脱ドル化を望んでおらず、反西洋でもないことを公式に認めた(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。BRICSは脱ドル化を望んでいないし、反西洋でもない。多極化へ向けた変化は段階的に起こる長期的なプロセスであって、急激な変化が起こると過剰な期待を膨らませるべきではない。
BRICS Officially Confirmed That It Doesn’t Want To De-Dollarize & Isn’t Anti-Western



BRICSは脱ドル化を望んでいないし、反西洋でもない

 これまで代替メディア・コミュニティ( Alt-Media Community/AMC)は、BRICSはドルの覇権に対して致命傷を与えようとしていると煽って来たが、2023/07/23にBRICS銀行として知られる新開発銀行(New Development Bank/NDB)の新総裁ジルマ・ルセフ「(NDBは)ロシアでは新たなプロジェクトを計画しておらず、国際金融資本市場に適用される制限に従って運営している」と述べた時、冷や水を浴びせられた

 8月になって「BRICSは脱ドル化を望んでおらず、反西洋でもない」と云う真実爆弾が主要当局者達から投下された時、更なる衝撃が襲った。

 2023/08/10、南アフリカのイーノック・ゴドンワナ財務大臣はロイターのインタビューで、NDBの焦点は脱ドル化ではなく現地通貨の利用拡大であると語った。

 同じ記事でNDBの最CFO(高財務責任者)レスリー・マースドープはこう語った。「当銀行の営業通貨は非常に特殊な理由でドルです。米ドルには最大の流動性プールが存在します。(略)ドルの世界から踏み出して、並行世界で営業することは出来ません。」

 BRICS当局者達は、BRICSは脱ドル化を望んでいないことを確認した訳だが、ここから更に、BRICSは反西洋でもないと云うことが明白になった。

 08/14のインタビューで、南アフリカ大使のBRICS大使アニル・スークラルは、BRICSの世界的役割についての誤った認識を正した。

 「BRICSは反西洋であり、BRICSはG7やグローバル・ノースとの競争相手として創設されたという残念な説が展開されていますが、それは正しくありません。我々が追求しているのは、グローバル・サウスのアジェンダを推進し、より包括的で代表的で公正で公平なグローバル・アーキテクチャを構築することです。」

 これに関連して同氏はまた、ゴドンワナとマースドープ両氏が、BRICSには脱ドル化の意志が無いことについて述べたことを確認した。

 「現地通貨での取引はしっかりと議題に上がっていますが、BRICSのアジェンダには脱ドル化と云う議題は存在しません。BRICSは脱ドル化を求めている訳ではありません。ドルは今後も世界の主要通貨であり続けるでしょう、それが現実です。」



AMCは認識修正が必要だ

 BRICSに関するこれらの暴露は、AMCの平均的なメンバーを打ちのめすことだろう。AMCのトップ・インフルエンサー達は、BRICSは西洋を憎んでおりドルに致命傷を与えようとしているのだと云う話を広めて来たので無理も無いことなのだが、3人の当局者達の発言で確認出来た様に、これは真実からは懸け離れている。西洋大手メディア(Mainstream Media/MSM)がBRICSに対する恐怖を広めたこともまた、逆張りでこの希望的観測の信憑性を高めることになった。

 BRICSは確かに「グローバル・サウスのアジェンダを推進し、より包括的で代表的で公正で公平なグローバル・アーキテクチャを構築」することが出来るが、それは緩やかなペースでの話だ。誤った認識の核心はその点に在る。ロシアはBRICSサミットに先立ち、支持者達の非現実的に過剰な期待によってそのソフトパワー上の利益が脅かされていることに気が付いて、それを正そうと何度か試みた

 BRICS当局者達がサミットに先立って同様に認識修正を試みたのも同じ理由だ。彼等は、支持者達の非現実的な期待が裏切られたと知った時に深い失望に繋がり、その結果敵対的な提案を受け入れ易くなってしまうことを望まなかったし、同時にまた西洋を怖がらせて過剰反応を誘発することも望んでいなかった。

 この認識修正が出来ていないと起こり得るシナリオは次の通りだ。

 1)支持者達は絶望してBRICSに対して無関心になるか、騙されたと感じて反対するかも知れない。

 2)西洋の一部はBRICSを阻止する為に、恐喝、政治的介入、制裁の脅迫等を通じて、BRICSとそのパートナー諸国に対する圧力キャンペーンを強化するかも知れない。

 AMCとMSMはそれぞれ全く異なる目的で偽情報を吐き出して来た訳だが、双方とも同一の疑わしい物語に依拠している為、BRICS当局者達は最悪のシナリオは回避出来るとの確信を深めている。認識修正が成功すれば、支持者達の頭を冷静にし、多極化への移行は長期的プロセスであることを予想させると同時に、西洋が過剰反応する可能性を減らすことになる。



変化は段階的に起こるだろう

 ロシアの特別軍事作戦開始以来、西洋は多極化へ向けたグローバルなシステム移行は不可逆的であることを確信する様になった為、彼等は自分達の覇権モデルを改革しようと積極的に取り組んでいる。ドイツのオラフ・ショルツ首相、米国家安全保障会議の元欧州・局長フィオナ・ヒル、ゴールドマン・サックスのグローバル担当取締役ジャレド・コーエンは、奇しくも同じ2023/05/15に、それぞれこの点を示唆している。

 彼等は、西洋はより平等なレヴェルでグローバル・サウスと関わらなければならないと信じており、中露協商でこれ以上頭を痛めないようにする為には、グローバル・サウスに対する従来の露骨な搾取的慣行の一部を縮小する必要が有ると考えている。その為彼等はBRICSの当局者達が想定している様なグローバルな金融システムへの段階的な変化には前向きになりつつある。但しこの移行を劇的に加速させるリスクのある革命的展開には断固として対応するだろうが。

 簡単に言うと、BRICSは「安全策」を望んでいる。ロシアを除く全加盟国は、西洋と複雑な経済・金融相互依存関係に在るからだ。BRICSが断片的な改革を進めた場合、西洋の政策立案者達もそれは不可避だと考えているのだから、過剰反応する可能性は低いだろう。

 4ヵ国の中では、人民元の国際化を加速し、一帯一路構想との接続を望む中国と、各国の通貨使用を優先してBRICSとBRIの分離を望むインドの学派が優勢だ。だが西洋からの過剰反応を回避する為に、グローバルな金融システムの変化は段階的なものでなければならないと云う点では、両者は一致している。

 今にも急激な変化が起こるだろうと云う主張を今だに広めている人達は、きちんと誠実に事実確認をすべきだろう。

ハワイの火災で全焼したばかりの資産を買い占める狂乱が起きているのは何故?(要点)

マイケル・シュナイダー氏の記事の前半部分の要点。マウイでは災害に付け込んで土地の買い上げに業者が殺到している。
Lahaina: Why Is There Such a Frenzy to Buy Up the Properties that Were Just Burned Down During the Fires in Hawaii?



 2023/08/08に大規模火災を経験したハワイのマウイ島では、土地の買い占め狂乱が起きている。家が全焼したばかりで悲しみに暮れる家族には、市場価格よりも安く土地を買いたいと言う貪欲な不動産業者達からの電話が殺到している。

 被害が大きかったラハイナでは、住民の一人がこの件を訴える動画を投稿して話題になった。

 「こんな時に私達のコミュニティにそんなことするなんて。よくもそんな。」「ラハイナは売り物じゃない。」


 2020年初頭、ラハイナの平均的な住宅の価値は60万ドルだったが、今では100万ドルになっている。

 この件についてはハワイのジョシュ・グリーン州知事も警告を発しており、不動産業者を装った人物から火災で被害を受けた住宅や土地の売却について住民達から相談を受けていることを明らかにした。

 多くの人がグリーン氏のこの警告に喝采を送った。が、彼は同時に、「州でその土地を取得出来ないか検討中」であると発言したところを動画に撮られている。彼はラハイナの再編について独自の構想を持っているのだろうか? 彼は買い上げたそれらの土地を、「労働者用の住宅として使用したり、家族の元に戻したり、失われた人々への記念碑として永久にオープン・スペースにする方法を考えています」と述べている。実際にどうなるかは今後の展開を待つしか無い。

Governor Of Hawaii Already Having Ideas for The Land !

プリゴジンの飛行機事故:陰謀とその結末(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。参考リンクは私が抄訳した分に合わせて多少変更した。プリゴジンの死にプーチン大統領が関与したと云うシナリオは、凡そ有りそうにないし、ワグナーのアフリカでの活動はこれによって妨げられないだろう。
Prigozhin’s Plane Crash: Conspiracies & Consequences



プリゴジンの死を巡る背景
 
 2023/08/23の夜、ロシアの民間軍事会社ワグナーのリーダー、エフゲニー・プリゴジンとその指導部メンバーがモスクワ郊外の飛行機事故で死亡したが、状況はまだ完全には解明されていない

 プリゴジンに関するこれまでの分析の内、現状理解に役立つと思われる主要なものを改めて紹介しておく。

プーチン大統領が慈悲深く彼の命を救う最後のチャンスを与えた後、プリゴジンは観念した(抄訳)
プリゴジンのクーデター未遂に関する陰謀論トップ2のデバンキング(抄訳)
プリゴジンは西洋にとって「役に立つバカ」だった(抄訳)
プリゴジンとその協力者達をベラルーシに追放することはロシアの利益に適っている(抄訳)
クーデター失敗後にプーチンがワグナーの指導者達と会うことに、陰謀論はお呼びではない(抄訳)
プリゴジン暗殺を計画しているのはロシアのFSBではなくキエフのGURである可能性が高い(抄訳)

 簡単に言えば、ワグナーとロシア国防省との長年の対立は6月下旬に制御不能に陥ったが、プーチン大統領は関係者達に事実上の恩赦を与えることで、内戦の危機を平和的に解決した。関係者達にはその後ベラルーシに行く人も居れば、アフリカに行く人も居た。この結果はロシアの国益と一致していたのだが、代替メディア・コミュニティの一部ではこれは「偽旗クーデター」の証拠だと誤って主張された。何れにせよ、ワグナーがロシア国家の道具として機能し続けたことは議論の余地の無い事実だ。

 プリゴジンは死亡する2日前(08/21)にサヘルから動画を公開し、そこで「ロシアを全大陸でより偉大にする! そしてアフリカをより自由に!」と宣言した。

 アフリカでは近年、愛国的な軍事クーデターの形で旧宗主国フランスの新植民地主義支配に対する反乱が相次いでおり、最新のものはニジェールでのもので、現在はフランスの支援を受けたナイジェリアが主導するECOWAS軍による侵攻の脅威に曝されている。

 アフリカに於てロシアの役割が増大している件についての分析はこちらを参照されたい。

アクシオスの記事はフランスのアフリカに於ける対ロシア情報戦を明らかにする(要点)
アメリカ当局者達はアフリカでワグナーに対してハイブリッド戦争を仕掛ける計画をポリティコに語った(要点)

 アフリカの最新の危機についてはこちら。

西アフリカ地域戦争一歩手前(抄訳)
追放されたニジェールの指導者は、当初はテロ組織と戦うと約束したが、最終的には彼等と同盟を結んだ(抄訳)
ヴィクトリア・ヌーランドがニジェールでの議論について興味深い詳細を明らかに(抄訳)

 サヘル諸国が主権を守ることを支援するでワグナーの役割は増大しており、だからこそ西洋はプリゴジンを暗殺したのだと一部で推測されている。この説を裏付ける証拠はまだ出ていないが、前掲の、プーチン大統領とワグナー指導部との会談に関する分析は、何故プリゴジンが指揮を執っていなくてもワグナーのアフリカ作戦が依然として継続するのかを説明している。



プーチン大統領が黒幕なのか?

 次は、プーチン大統領が彼の死に関与したと云う陰謀論について取り上げてみよう。これは代替メディア・コミュニティ(AMC)でも西洋大手メディア(MSM)でも流れている説だ。その根拠は、

 1)古い動画でプーチン大統領は、裏切り者は許せないと語っている。


 2)プリゴジンの命が危険に曝されていると、バイデン政権の当局者達が事前に警告している。

 これらの根拠に基付いて、AMCもMSMも、プリゴジンの氏の責任はプーチンに在ると考えている。AMCはこれは個人的な動機によるものであり、MSMはこれが悪名高いプーチンの「政治的殺害」の最新事例であると信じて貰いたがっているが、これらはどちらも、クーデター未遂の関係者達には国家による報復は行わないことを宣言した06/23の声明でプーチン大統領が「約束を守る」と言ったのは嘘であったことを前提としている。

 それだけではない。これらの陰謀論はまた、プーチンが可能な限り最も劇的な方法のひとつによってプリゴジンの死を命じ、それによって無責任にも地上に居る無実の民間人達にも危害を加えるリスクを冒したと云うことを要求している。

 だがこうした解釈を疑うべき説得力の有る理由が存在する。

 1)この出来事とそれが世論に与える影響は、どちらもロシアの国益にとって不利となる。プーチン大統領がわざわざ自国を弱体化させようと画策したと想像するのは馬鹿げている。

 プーチンがプリゴジンとワグナー指導部を排除することは、彼が宣言した約束を破ることを意味するが、これはワグナーの戦闘員達や支持者達を、反国家的な行動に駆り立てる可能性が有る。この陰謀論を信じた人々は、次は自分かも知れない、だから「自己防衛の為に先に行動」しなければならないと思い込み、自己実現的な予言を実行に移すかも知れないのだ。

 従って、この誤った認識を兵器化することは西洋の利益になる。この陰謀論を利用すれば、高度に訓練された軍やそのシンパを「役に立つバカ」として操って、新たなクーデターや反乱の試み、テロ、そして/またはカラー革命によってロシアを不安定化させることが出来る。

 仮令これらのシナリオが実現しなかったとしても、国際世論への影響を考えただけでも、これはロシア国家やその指導部の評判に大きなダメージを与えている。

 プーチン大統領は6月に、NATOとロシアとの代理戦争の政治的解決に向けた関心を示すシグナルを何度も送っているが、MSMは彼の誠実さに疑念を植え付ける為に、彼がプリゴジンの死刑執行状に署名したと云う憶測を最大限に広めるかも知れない。

 MSMは同様にまた、ロシア軍諜報部の派閥間で、舞台裏で血生臭い権力闘争が行われていると云う話を広めることで、ロシアの政治的安定について国際社会に誤った認識を広めるかも知れない。



事件の影響は?

 これらの洞察を踏まえた上で、プリゴジンの飛行機事故がどの様な影響を齎すかを考察してみよう。

 ワグナーは様々な国で数十の戦術チームを展開しているが、プリゴジンと少数の指導部がこれらをリアルタイムで細かく管理していると考えるのは非現実的だ。従って彼等が居なくなっても、アフリカでの作戦は恐らく影響を受けないだろう。士気は一時的に低下するかも知れないが、最終的には回復するだろう。

 先に挙げた記事で触れた西洋のハイブリッド戦争(内戦やレジーム・チェンジ)が起こる可能性は低いが、仮にそちらの方面で何等かの動きが有ったとしても、ロシアの安全と安定に対する脅威は管理可能だ。「バルカン化」に備えて身構える必要は無い。

 とは言っても、事件の捜査に於ては、これが不正行為の結果なのかどうかは確実に調査されるだろう。これらはキエフが関与したケースや軍諜報部の派閥が関与したケースが考えられるが、どちらも現段階では結論を出すことは出来ない(どちらの可能性も排除は出来ないが)。結論を急ぐ余りに、キエフに無実の罪を着せたり、ロシアの安定性や安全性について疑問を広めたりすれば、どちらも西洋にとっての「役に立つバカ」の役割を引き受けることになる(但し仮に軍諜報部の派閥が不正に関与していたとしても、彼等がロシアを不安定化させるチャンスは無い)。

 結局のところ、プリゴジンの飛行機事故の正確な原因は依然として不明であるが、プーチン大統領が関与していないことは確かだ。AMCの一部とMSMは別のシナリオを仄めかし続けるだろうが。

 事故が仕組まれたものであれば、ロシアの治安当局は間違い無く真相を解明するだろうが、国家レヴェルでは不正行為が有ったとしても認めない方が自国の利益に適うと判断するかも知れない。
 
 何れにせよ、この事件はロシアを不安定化させたり、ワグナーのアフリカでの活動や特殊作戦を妨げたりするものではない。

ギリシャの火災と「世界沸騰化」アジェンダ(要点)

2023/07/18に始まったギリシャの火災について、ヴァネッサ・ビーリィ氏の解説の要点。西洋大手メディアは災害を利用して地球「沸騰化」の恐怖を煽っているが、ギリシャの活動家達は風力発電所建設の為に放火が行われた可能性を指摘している。
Greek fires and the 'global boiling' agenda



煽られる「地球沸騰化」の恐怖

 2023/07/18、ギリシャのロードス島で始まりクレタ島、コルフ島へと広がった火災について、西洋の大手メディアはかなり誇張して伝えている。

 消化活動に当たっていた飛行機が墜落して2名が死亡した事件(後に3名に増えた)は大きく報じられた。

 ギリシャとイタリアの基本は平年通りだと報じられているが、BBC初の気候担当編集者ジャスティン・ロウラットは、「南欧の熱波は気候変動抜きでは考えられない」などと、火災は気候変動の所為だとする主張を行っている。

 BBCはロードス島コルフ島でそれぞれ数千人が避難したことをトップで報じた。

 同時期、国連のグテレス事務総長は、"Global Boiling(世界沸騰化)"なる新語を提唱し、地球温暖化の恐怖を更に煽り立てた。

 Corfu Tourist と云うオンライン観光ハブのアカウントは07/24の投稿で、火は既に消し止められており、BBCの報道が主張する様な「制御不能」の状態ではないと非難した、




火災は土地を奪う為の放火が原因?

 ギリシャの活動家は、放火による大規模火災はここ30年間にギリシャで何度も起きて来たことであり、現在火災が起こっている場所はメディアの面で世界的に影響力の有る観光地であり、且つ風力新しい発電所が計画されている場所だと指摘している。


 因みに北コルフ島の市長は、火災は放火によるものだと語ったが、消防士達も同様の見解を表明している。

 また活動家達の一部は焼けた土地の再森林化を主張しており、ギリシャや欧州当局の立ち入りを禁止して、風力発電所は作らせないと警告している。

マウイの悲劇———グレート・リセット・アジェンダの一環か?(要点)

2023/08/08にハワイのマウイ島で同時多発的に起こった大規模火災について、ヴァネッサ・ビーリィ氏の解説動画の要点を纏めてみた。この火災はスマート・アイラインド構想用の土地を奪い取る為に意図的に引き起こされたものなのか?
Maui tragedy - part of the "burn back better" agenda?




数々の異常な証言

 生存者の証言では、警告は何も発せられなかった。幾つかの報告では、州政府は救助の努力を殆どしなかったばかりか、地元住民達による努力を妨害しさえした。またFEMA(米連邦緊急事態管理庁)でも赤十字でもないと云う理由から地元の寄付を許可せず、連邦から許可されていないと云う理由で医薬品の供給も阻止した。
Maui Wildfires and the Theft of Sacred Hawaiian Land


 5年前のカリフォルニアの山火事と同じ様に、焼け落ちた現場はまるで爆撃でも喰らった様に粉々に破壊されており、建物は全て再建が必要な状態だった。

 体験者のキャシー・J・フォーティ博士の証言では、「私達がラハイナに到着すると直ぐ、全ての電力が遮断されました。携帯電話、インターネット、信号機、GPS、911緊急システム(ダウンする筈が無い)、そして停電」が起こった。普通の火災にしては有り得ない様な被害だ。

 ラハイナ周辺には12マイルの「メディア禁止ゾーン」が設けられ、現地の取材は禁じられた。出回っている情報が少ないのはそれが原因だろう。

 ハワイは世界最大規模の屋外警報システムを持っているにも関わらず、火災発生当日、サイレンは鳴らされなかった。後に辞任した緊急事態管理庁長官は、サイレンを鳴らせば人々が山や内陸に向い、それによって火に巻き込まれることを恐れたと弁明している(実際には多くの人々が数時間海の中に避難した)。

 先のフォーティ博士はまた次の様なことも語っている。
 
 「これらの火災は実に奇妙でした。前夜、私の友人も他の多くの人達も、とても眠れなかったと主張しました。 私は個人的に、発作活動の様な奇妙なエネルギー波が頭に押し寄せるのを経験しました。私はる暗黒エネルギーが入って来ると感じました。このエネルギーの洪水は翌朝も断続的に続き、ラハイナに居た時は悪化しました。これは、この出来事に指向性エネルギーが関与していたと云うことであろうと思います。」



ラハイナの土地問題とスマート・アイランド構想

 「歴史有るラハイナの問題は、開発者にとっては邪魔になる、古くて大規模なハワイ人コミュニティが存在することでした。今、そこは爆心地(グラウンド・ゼロ)の様なもので、災害地域として宣言されており、恐らく連邦と州の規則は無視されることになるでしょう。実に有害な混乱です。 彼等は間違い無く、全部候変動の所為にして開発者達を招き入れ、ブルドーザーで全てを平らにしてしまうことでしょう。」

 ハワイ州知事ジョシュ・グリーンは、州は火災で焼失した「土地の取得」を検討していると発言し、この悲劇を悪用しようとして外国の買い手が押し寄せるのを阻止すると宣言し、その役目は国の方が適していると主張した。

 多くの人が、ハワイは「スマート・アイランド」の候補として標的にされていると指摘している。

 2023年1月には「ハワイ国際システム科学会議」が開催され、09/25には「ハワイ・デジタル政府サミット」が開催されるマウイで開催される予定だったが、火事を受けてホノルルに会場が変更された。公式サイトでは、「スマート・アイランド」の噂は完全な嘘だと否定している。

 だが、マウイのスマート・アイランド構想は存在する。

 2023/10/01〜04には、「システム、人間、サイバネティクスに関する2023 IEEE会議」がホノルルで開催されるが、ここで論じられる話題は例えば次の様なものだ。

 ・パーソナライズされた人間とロボットの相互作用。
 ・AI が医療、政府、司法、日常生活に採用される際に必須の特性である人工知能への信頼。
 ・遺伝プログラミングを使用して説明可能なAIの中核問題を解決する。
 ・自律型AIと人間と機械の共生システムの基礎研究。

 2011〜16年には、"JUMPSmartMaui"と呼ばれる「スマート・コミュニティ」プロジェクトが存在していた(このプロジェクトには日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立が関与していた所為か、日本語版が存在している)。
ケーススタディ:ハワイ州マウイ島における日米スマートグリッド実証

 これは「導入が拡大する再生可能エネルギーを有効に活用するとともに、電気自動車(EV)の普及を拡大すること」を目的としていた。「スマートコミュニティは、先進的な環境・エネルギー技術を統合し、対象とするコミュニティに帰属する市民に持続可能で安心・安全な生活を提供する社会システムであると言える。」

 以下に図を挙げておくが、正に「スマート・アイランド」構想と呼んでも良い位、様々なプロジェクトが関与していることが判る。


 興味深いことに、以前は多くの大学のサイトがこのマウイのスマート・アイランド・プロジェクトを取り扱ったページを公開していたのだが、今は全て削除されて「404」になっている。

 またウォール・ストリート・ジャーナルの記事に拠れば。COVID-19以来、ハワイの住宅価格は6倍に高騰しており、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、ビル・ゲイツ、ピエール・オミダイアの様なビリオネア達が、ハワイの不動産に多額の資金を注ぎ込んでいる。



バイデンの反応


 バイデン米大統領は火災について当初「ノーコメント」と発言して非難を浴びたが、その後マウイを訪問する予定であると発表した。そして緊急援助として1世帯当たり僅か700ドルを提供すると発表したことでまた非難を浴びた(因みにウクライナ代理戦争の資金総額1,130億ドルを拠出する為に、米国の各世帯は約900ドルずつ負担している計算になる)。



マウイ以外の事例

 今回のマウイの火災は奇妙なことだらけだが、似た様な事例は過去にも存在している。

 2023/07/18に山火事が始まったギリシャでは、巨大なウィンド・ファーム計画が環境活動家達から非難されている。
Greek fires and the 'global boiling' agenda


 08/16にはスペイン領カナリア諸島(モロッコ沖)のひとつであるテネリフェ島で「制御不能」の火災が発生している。

 「火災はアラフォとカンデラリアの山岳地帯で発生した。ここは島の中心に位置し、スペイン最高峰で人気の観光名所である有名なテイデ火山を囲んでいる」と報じられいる。下の画像はNASAのものだが、内陸部で発生していることが判る。


 このテネリフェ島と云うのも実は2019年からスマート・アイランド構想が進められている所で、「スマートな観光地」として、観光客のみならず住民の生活の質を高めることが目標とされている。



指向性エネルギー兵器の可能性
 
 大手のメディアは例によってマウイの火災は全部気候変動の所為だと主張しているが、ソーシャル・メディア上では、火災の原因は指向性エネルギー兵器による攻撃ではないかとの噂が飛び交っている。確かに、火山が多いハワイは山火事等の災害の経験も豊富で、災害対処のノウハウは世界で最も蓄積されている筈だ。なのにここまで被害が広がったと云う事実は、当局の不自然な対応と相俟って、これは普通の自然現象ではないのではないかとの疑いを抱かせる。

 英語圏の一部では、COVID-19パンデミック「対策」によって経済と社会が破壊された後、西洋の指導者達が一斉に"Build bak better"と云うスローガンを叫び始めたことをもじって、これは"Burn back better"ではないか、国連のアジェンダ2030に連なる世界再編計画の一部ではないかとの憶測が流れている。

 マウイで実戦使用されたのかどうかは判らないが、指向性エネルギー兵器自体は空想上の産物でもSFに限定されたものでもなく、実在していると想定すべき根拠が有る。英国政府の公式サイトではこう説明されている。
  
 「指向性エネルギー兵器 (Directed Energy Weapons/DEW) は、装置や施設に妨害的、損傷的、または破壊的な影響を与える主な手段として、レーザーまたは高周波 (Radio Frequency/RF) エネルギーを放射する、個別のターゲット選択が可能なシステムである。」

 これは恐らく比較的小さな規模の標的を想定した兵器だが、英国防省と契約しているMBDAと云う企業は、レーザー指向性エネルギー・プログラムの性能向上を謳っている。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

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