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ニジェール兵が西洋と手を組む政府を打倒(要点)

アバヨミ・アジキウェ氏の記事の要点。多少補足した。2023/07/26にニジェールで起きた軍事クーデターの簡単な解説。
Niger Soldiers Overthrow Western Allied Government



ニジェールでクーデター

 2023/07/26、西アフリカのニジェールの首都ニアメでクーデターが起きたと報じられた。大統領警護隊が、米国や西洋諸国の同盟者であるモハメド・バズーム大統領を拘束したのだ。


 バズーム率いるニジェール政府は、AFRICOM(米アフリカ軍や仏軍の軍事作戦に於て重要な役割を果たしている。

 ニジェールのAFRICOM部隊は、表向きはニアメの中央政府と対立するイスラム反乱組織と戦うことを目的として付くられた、国防総省とCIAの2つのドローン・ステーションを運用している。また約1,100人の米特殊部隊がニジェールに拠点を置き、軍事任務とニジェール軍の訓練を行っている。

 クーデターを主導したのは、祖国防衛国家評議会(CNSP)の設立を発表したアマドゥ・アブドラマン大佐の様だ。彼はTV演説で、国内の治安状況が急速に悪化していると述べ、バズーム氏率いる政権の解散を宣言した。更に彼はニジェール国内の劣悪な経済社会状況にも言及した。ニジェールには大量のウラン鉱床が存在するが、この重要な天然資源は、パリに拠点を置く多国籍企業オラノを通じてフランスによって主に管理されている。

 ニジェールはサヘル地域3国(マリ、ブルキナファソ、ニジェール)に於ける最後の親西洋指導者によって率いられていた。アメリカとNATOの帝国主義プロジェクトは、2020年以来5回も軍事クーデターが起こっているアフリカ大陸での影響力を維持すべく必死になっており、3月にはアントニー・ブリンケン米国務長官がニジェールを訪れている。

 サヘル諸国に対して、旧宗主国フランスは長年軍事的プレゼンスと経済的支配を維持して来たが、最近になってマリとブルキナファソは軍事クーデターによってこの路線を変更し、以来ニジェールとフランスとの同盟関係を厳しく批判して来た。

 2022年10月のブルキナファソのクーデターでは、フランスに抗議する大規模なデモが発生したが、参加した若者達は自国の政府に対して、安全保障同盟をパリからモスクワに移すよう要求し、一部の者はロシアの国旗を掲げた。

 アシミ・ゴイタ大佐が率いるマリ軍事政権は、テロ退治には一向に役に立たない仏軍の代わりにロシアの民間軍事会社ワグナーと契約した。フランス政府は当然これに抗議し、仏軍を撤退させるぞと脅迫したが、マリ政府は寧ろこれを歓迎し、仏軍と国連軍の撤退を奨励した。マリ政府はまた国語からフランス語を削除した。



米仏はバズームの返り咲きの為に軍事作戦を支援するのか?

 西洋大手メディアの幾つかの報道は、ニジェール軍内にはバズーム氏に忠誠を誓う勢力が存在していると主張している。これは今後バズーム返り咲きの為に軍事作戦が行われる可能性を示唆している。米国とフランスは、文民行政を復活させるこうした動きを奨励している様だ。

 クーデターに際しブリンケン氏は捕虜となったバズーム氏と会談し、「米国の揺るぎ無い支持を伝えました。米国のニジェールとの強い経済・安全保障パートナーシップは、民主的統治の継続と法の支配と人権の尊重に懸かっています」と述べて彼の即時釈放を求めた。また彼に加えて国家安全保障担当補佐官ジャック・サリヴァンもクーデターを非難している。

 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)もまたこの合唱に加わっており、加盟国のベナン共和国のパトリス・タロン大統領は、仲介の為にニアメ入りしたと伝えられている。またアフリカ連合(AU)も07/26に声明を出し、「共和国としての義務を完全に裏切る軍人によるこの様な行動を強く非難する」としてこうした容認出来ない行為を直ちに中止するよう求めている。

 だが2020年以降に西アフリカで起きた過去の一連の軍事クーデターは、ECOWASとAUから非難されて制裁を課されているものの、まだひとつも覆っていない。またマリ、ブルキナファソ、ギニアから追放された文民政府の正当性は広く疑問視されている。ギニアでは選挙の実施を求める抗議行動も起きているが、ママドゥ・ドゥンブーヤ大佐の軍事政権は依然として権力を掌握している。

 AFRICOMの失敗と、現在はフランスが主導するバルカーネ作戦(対テロ作戦)の失敗に対する広範な不満が、過去3年間の軍事クーデターに対する国民の支持の土台となって来た。マリ、ブルキナファソ、ニジェールの不安定な治安状況は、アフリカに於ける西洋の軍事的プレゼンスの役割が疑わしい性質のものであることを暴露した。彼等の対テロ作戦と称する活動により、旧フランスの植民地諸国には治安の悪化と経済的発展の遅れが生じて来たのだ。
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NATO加盟の為のウクライナのMAP要件の撤廃は、見掛け程重要ではない(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。ウクライナがNATOに加盟する可能性は高いのだろうか? 2023年7月時点で西洋の政府高官達の発しているあらゆるシグナルは、そのシナリオを否定している。
Removing Ukraine’s MAP Requirement For Joining NATO Isn’t As Important As It Seems



ウクライナのNATO加盟への予定が早まる?

 2023/07/10、ウクライナのクレバ外相はTwitterでこう呟いた

 「集中的な協議の後、NATO同盟諸国はウクライナ加盟への道からMAP(Membership Action Plan/加盟行動計画)を取り除くことで合意に達しました。 私は、我々のNATOへの道を縮めるこの待望の決定を歓迎します。これはまた、ウクライナを加盟に招待することについてはっきりさせる絶好の機会でもあります。」

 だが、ウクライナはは既にMAP参加国の典型的な軍事的義務を満たしている為、これは見掛け程重要ではない。ウクライナ軍はロシアに対する代理戦争を遂行すべくNATOから訓練・装備を提供されていて、事実上のNATO加盟国となっている。



ワシントンはウクライナをNATOに加盟させる予定は持っていない

 だがバイデンは2023/06/17には「ウクライナのNATO加盟を容易にするつもりはない」と発言している。

 また07/09、欧州に出発する直前には、「戦争の真っ只中の今この瞬間、ウクライナをNATOファミリーに加えるかどうかについてNATO内で満場一致しているとは思いません」とも語っている。

 同日、国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリヴァンもまた英国へ向かう途中で、ウクライナは加盟する前に広範な「民主主義、安全保障分野、経済改革」に取り組む必要が有ると語っている。

 つまりキエフのスポンサーであるワシントンの方では、ウクライナを急いでNATOに加盟させようとは思っていないのだ。ウクライナは確かに既に事実上のNATO加盟国ではあるが、他の諸改革を成し遂げないことには、この地位を正式に承認されることは無い。

 と云うことはつまり、クレバ外相の発言は事実の表明ではなく、一般の認識を操作することのみを目的としたものだったと捉えるべきだろう。

 これは前記のサリヴァンの発言からも読み取ることが出来る。彼は米国がウクライナに対して「イスラエル式の安全保障」を構想していると語っている。これは具体的には「様々な形の軍事支援、諜報と情報の共有、サイバー支援、その他の物的支援を提供する」一連の二国間協定を意味しているが、これは明らかにNATO加盟の代わりを果たすものとして検討されている。若し彼がウクライナのNATO加盟を本気で考えていたとしたら、こうした話ではなくNATO憲章第5条について論じていたことだろう。

 また07/07のフォーリン・アフェアーズの記事では、中にはこう考える者も居ると述べられている:「既にキエフに提供されている種類の武器、訓練、外交支援はNATO第5条の義務を満たすのに十分であり、新たに軍事力を約束したり配備したりする必要は無いことを意味している。」



NATO諸国はロシア軍と直接戦いたくない

 多くの人が誤解しているが、NATO憲章第5条は武力行使を義務付けてはおらず、攻撃を受けている者達を支援する為に「加盟国が必要と見做した行動」についてだけ規定しているので、この指摘は正当なものだ。つまりNATOの方ではこれ以上の支援は考えおらず、ロシア軍と直接交戦することも無いと云うことだ。

 米国のソフトパワーの観点からすれば、ウクライナがNATOに加盟し、その結果として米国がウクライナの安全保障に直接関与すると云う誤った期待を国民が抱かない方が都合が良い。これは米国が既存のNATO加盟諸国を守る為に武力行使をしないと言っている訳ではない。加盟諸国が攻撃された場合には西洋の団結を維持する為には武力行使せざるを得ないと考えるだろう。但しウクライナの場合はそれらとは質的に状況が異なっているのだ。

 ウクライナはロシアとの紛争が終わり、全ての国境問題が解決されるまでは、加盟資格を無期限に剝奪されることになるだろう。他の加盟諸国はどれもロシアと直接戦うリスクを冒したくはない。「イスラエル式」の回避策を選択した方が遙かにラクなのだ。

 ポリティコは07/09の記事で、米国が英仏独と協力して、ウクライナへの軍事援助を多国間で管理出来る、所謂「傘」の創設に取り組んでおり、これが今回のNATOサミットの最も重要な成果となる可能性が有ると報じた。本質的にはこれはウクライナ軍に代わってロシア軍と戦うと云うことではなく、既にキエフに提供している支援を正式に承認することを意味するに過ぎない。

 ウクライナ人や平均的な西洋市民の期待が現実離れしてヒートアップすることは避けねばならない。若し期待が裏切られれば、NATOの信用は完全にガタ落ちだし、ロシアとの安全保障上のジレンマも解決せねばならない。若しモスクワの方でNATOがキエフに代わってロシアに対して武力行使をして来ると確信すれば、NATOに対して先制攻撃を行いたいと云う誘惑も高くなるかも知れない。ならばそう思われれないようにあらゆる努力を払わねばならない。ウクライナがNATOに加盟し、米国がウクライナの代わりにロシアを攻撃するかも知れないと示唆することは、ソフトパワーと戦略的観点から見て非常に無責任だ。

 従って若しウクライナのNATO加盟が約束された場合、それはプラグマティックな判断の出来る政策立案者達から、イデオロギーによって動いている主戦論者達が影響力を取り戻したことを意味する。

 これまでに西洋の政府高官達から発せられたあらゆるシグナルは、ウクライナはNATOに加盟しないので、NATO憲章第5条の一般的な解釈に従って、ウクライナを支援する為に武力が行使されることを期待すべきではないことを示している。

 NATO加盟の為のウクライナのMAP要件を取り除くことは、従って象徴的な意味しか持っていない。ウクライナは諸改革を成し遂げない限り加盟は出来ない。その代わりに彼等に提供されるのは「イスラエル式」の「傘」だけだ。

首都での抗議集会禁止を受け、ニジェールへのフランス軍駐留に反対する請願が開始(要点)

オレグ・ブルノフ氏の記事の要点。フランス軍はマリを追い出された後、ニジェールに拠点を移したが、これが反発を呼んでいる。
Petition Against French Troops’ Presence in Niger Launched After Protest Rally Banned in Capital



 2017年からテロ対策(バルカネ作戦)の名目で長年マリに居座り続けたフランス軍は、2022年にマリを追い出された後隣国のニジェールに拠点を移した。

 15のNGOで構成されるニジェールのM62公衆運動はこれに反対する抗議集会を開こうとしたが当局に禁止された為、代わりに1日の断食と3日間の祈祷を組織した。

 そして仏軍をニジェールから撤退させることを求める請願を開始したが、この請願書は「我が国とサヘルの資源を不安定化及び/または略奪することを目的とする他​​の悪の勢力」について言及している。

 一方マリの外相はフランスが国内のテログループを支援していると非難し、国連安保理に対し、その証拠を提示する為の緊急会議を招集するよう要請した。

 2022年以来フランスの航空機はマリの空域を50回以上不法に通過したが、これらがテロリスト集団の為の情報収集や、武器や弾薬の投下の為に利用されていたと主張している。

「タンク・マン」を撮影した写真家の証言の行間を読む

天安門事件についての最も有名な写真である所謂「タンク・マン」の写真を撮った写真家ジェフ・ワイルドナー氏の2019年のインタビューを見てみよう。彼自身は「弾圧」の物語を広めている側なのだが、きちんと行間を読んでみれば、事件についての西洋の公式の説明に疑問を差し挟む様な点が幾つも有ることに気が付く。
Tank Man photographer drops TRUTH bomb on MSM




 彼が撮った「タンク・マン」の写真は、天安門事件を象徴する一枚だった。だが、きちんと一部始終を見れば、人民解放軍はこの男性を虐殺をするどころか、殺さないように一生懸命努力していることが判る。

 彼はこの光景を見付けた時に彼が殺されるだろうと思ったが、何時まで経っても何も起こらなかった。なので望遠レンズのカメラを構えて撮影する余裕が有った。人民解放軍の戦車隊はこの男性を虐殺するどころか、彼に危害を加えないようわざわざ全隊停止して、彼がどくのを辛抱強く待っていたのだ。彼がこの光景を撮影出来たのは全くの幸運だった様だったので、カメラの目を気にして軍が虐殺を控えた、と云う可能性は低い(何度も指摘していることだが、虐殺や大量殺戮の決定的瞬間を捉えた写真や動画はひとつも存在していない)。

 ワイルドナー氏は抗議者達が非武装でも平和的でもなかったことをその身で経験したことを証言している。1989/06/03の夜には、装甲車が焼かれたり、人々が石を投げる光景を目撃している。彼自身もまた暴徒に殴られ、カメラも壊されたので、AP通信のオフィスに避難したが、負傷が酷くてそれ以上は撮影出来なかった。それにフラッシュを焚けば標的にされてしまう危険性が有った。

 彼は地面に横たわる人民解放軍の兵士の死体や、炎上する装甲車から降伏して出て来た兵士が、棍棒や棒を持った暴徒達に達に殴られるところも目撃している。勿論そんな行動を「平和的な抗議行動」と見做して放置する国は世界中何処にも無い。

 装甲車が炎上していたことは、暴徒達が火炎瓶を使用していたことを示唆している。実際、当時大量の火炎瓶が使用される光景が多数目撃されている。当時の中国ではガソリンは配給制だったので、常識的に考えれば普通の大学生達に大量のガソリンを手に入れられる筈は無い。また、火炎瓶は当時の中国では全く目新しい武器だった。これらの状況は、国外からの支援が有ったことを強く示唆している。



 「タンク・マン」の一部始終はこれ。断片的なイメージだけを記憶している人が殆どの様なので、きちんとノーカットで見てみよう。
Tank Man (now with more raw footage)


 見ての通り、彼を轢き殺すことなど簡単に出来たのに、人民解放軍の戦車隊はわざわざ停止して、彼がどくまで辛抱強く待っている。

 仮にこの戦車隊がイスラエル軍で、男性がパレスチナ人だったとしたらどうなっていただろうか。何百人だか何千人だかの平和的な抗議者達を平気で虐殺する様な軍なら、たった一人の丸腰の人間を轢き殺すことなど全く躊躇わないだろうに。何故人民解放軍の戦車は、例えばこの米国のパトカーの様に、立ち塞がる男性をさっさと轢いてしまわなかったのだろうか(因みにこの映像は偶々一例として挙げただけで、この種の西洋諸国の警察の蛮行の決定的瞬間を捉えた映像は幾らでも見付かる。例えば "us police car run over" 等で検索してみれば良い。ネットが使えて調べる意志さえ有れば誰でも簡単に辿り着ける情報だ。但しショッキングなものが多いので閲覧する時は要注意)。
Protesters hit by police car as it drives through crowd in Detroit


 補足しておくと「タンク・マン」は所謂「虐殺」の翌日に起こった出来事であって、戦車隊は天安門広場とは逆方向に進んでいる。「天安門広場に虐殺に向かう戦車隊を男性が止めた」瞬間だと記憶している人も居る様だが、実際には逆。戦車隊は天安門広場から戻るところだったのだ。男性はショッピングバッグを持っていて、抗議者にしては奇妙な恰好だ(火炎瓶を持っている訳でもなさそうだが)。男性は戦車に何やら嫌がらせの様なことをしてはいるが、最終的に駆け付けた人々によって連れ去れらており、殺されてなどいない。

 誤解の無い様に言っておくと、「タンク・マン」の写真や映像は、それ自体では「天安門広場で大勢が虐殺された」と云う物語を証明も反証もしていない。これは広場とは別の場所で起こった独立した出来事であり、広場での「虐殺」とは関係無い。そしてこの場面では虐殺は起こっておらず、人民解放軍は彼が傷付かないよう、常識的に考えて最大限の努力を行っている様に見える。

「北朝鮮の人権侵害」の「証言者」パク・ヨンミのスポンサー、ターニング・ポイントUSAとは?

疑わしい「脱北者」の「証言」

 2023/07/26のAFPのKOREA WAVEの報道に拠ると、北朝鮮での人権侵害についての「証言」」を行ってインフルエンサーとして有名になった「脱北者」のパク・ヨンミ氏の「証言」の中身が、辻褄が合わなかったり、誇張されたりしていると指摘されて問題になっている。彼女自身は証言に一貫性が無かったことについて「英語の未熟さと過去のトラウマの為だ」と説明している。

 以前の記事で説明した通り、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)出身者でROK(大韓民国)に住んでいる者は、それが自分の意思に反したことであっても、全て「脱北者」と呼ばれている。これにより全員が自分の意思で「北」から逃げ出したと云うイメージが広まっているが、実態は異なる。パク氏の場合は自発的亡命かも知れないが、全員がそうと云う訳ではない。

 また、DPRKで行われている人権侵害の数々は基本的にこの「脱北者」の「証言」が基になっていてそれ以外の裏付けは無いのだが、彼等には北の人権侵害を捏造したり誇張したり歪曲したりする強いインセンティヴが働いている。日本で言うところの治安維持法である国家保安法がまだ生きているROKでは、当局によってDPRKに好意的であると解釈される様な発言を行うと、思想犯として執拗に迫害を受ける恐れが有る。また「脱北者の証言」は南ではビジネスとして確立しているが、「90年代以降は自然災害と経済封鎖とCIAの妨害工作によって大変な苦労をした」などと云う話を繰り返しても視聴率は取れないし、よりショッキングな話をした方がスポンサーも喜ぶ。しかも外国勢力が「人権」や「民主主義」の名の下でそうした話を積極的に広めてることを支援している。過去にはこうした証言が捏造されていたことが明らかになって度々問題になっている。

 従って「脱北者の証言」は鵜呑みにすべきではない。

 パク氏のYoutubeチャンネル"Voice of North Korea by Yeonmi Park"には113万人物登録者が居るが、番組内容を見れば判る様に、明らかに捏造されたり、誇張されたり、歪曲されたり、本当か嘘か確認出来ない情報が氾濫している。西洋市民は基本的にDPRKについては大手メディアの垂れ流すプロパガンダでしか知らないので、こうした偽情報キャンペーンに引っ掛かる情報弱者も多いのだろう。
 
 パク氏は「ヤング・ダボス会議」と呼ばれるワン・ヤング・ワールドに於て、北朝鮮の強制収容所、政治的処刑、性的人身売買の恐怖について語ったが、この演説は3億2,000万回以上視聴された。BBCはパク氏を「グローバルな女性トップ100」の1人に指名した。DPRKに対する米国政府の侵略行為や裏切り、CIAの犯罪について語っていたら、ここまでのステータスは得られなかったことは確実だろう。



ターニング・ポイントUSAとは?

 KOREA WAVEの記事には「現在、パク・ヨンミ氏は保守キリスト教団体『ターニングポイントUSA』から月6600ドルの報酬を得て人権運動をしている」と書かれている。かなりの高給だ。

 このターニング・ポイントUSAと云うのがどう云う団体かと云うと、右派や保守派の政治家や財団から資金を得て2012年に設立された団体で、米国の若者/学生の教化を主な目的に掲げている。公式サイトは組織の使命として「自由、自由市場、限られた政府の重要性について学生達を教育する」と謳っており、全国の3.500ものキャンパスで活動を展開していると述べている。パク氏も貢献者一覧に専用のページを設けて紹介されている。

 日本では殆ど報じられてないが、米国のキリスト教原理主義やネオコンは次世代の育成に大変力を入れている。これもそうした布教ネットワークのひとつだろう。

 この組織は2020年のパンデミック詐欺の最中に急成長を遂げたが、この時期、10人の匿名の寄付者からの寄付が収入を倍増させている。こうした非政府組織の意味を考える際に最も重要なのは資金源だが、TPUSAは不明の部分が大きい。

 TPUSAは「強力な保守的な草の根活動家ネットワークを構築する」ことを目標に掲げ、以下の3つを信じていると述べている。

 1)アメリカ合衆国は世界史上最も偉大な国である。

 2)米国憲法は、これまでに書かれた中で最も例外的な政治文書である。

 3)資本主義は、これまでに発見された中で最も道徳的で証明済みの経済システムである。

 まぁ頭に脳ミソの入っている若者であれば誰でも気が付く様に、現在の後期資本主義は若者達に優しくないし、道徳的どころかその腐臭は最早耐え難いまでに増大している。資本主義の中枢諸国は、以前はグローバル・サウスでしかやって来なかった様な蛮行を、自国内でも公然とやる様になって来ている。なので自分達の身の回りの現実と正反対のことを信じさせ、現行の資本主義の卓越性を証明しようと思ったら、資本主義下だとどんなに良いことが沢山有るかを証明するより、資本主義以外のシステム(と彼等には見えるもの)がどれだけ劣っていて道徳的に嘆かわしいものであるかを証明する方が手っ取り早いし解り易い。西洋の若者は基本的に西洋以外の国々のことについては殆ど無知なので、他国についての嘘や誇張や歪曲を散々吹き込まれた後で「あいつらに比べたらオレ達の方がまだマシじゃね?」とか言われると、あっさり信じてしまうのだ。

 TPUSAは「アメリカ共和国(American Republic)を回復する」とも謳っている。「アメリカ民主主義(American Democracy))を回復する」ではないことに注意すべきだろう。 Republic/Democracyは単純に共和党/民主党の区別を指すとも解釈出来ない訳ではないが、共和制とは基本的にローマ帝国をモデルとする統治システムで、全国民の平等主義に基付く民主主義よりは、ヒエラルキー構造に基付く寡頭制を指している。実際、筋金入りの共和党員の中には、自分が信じているのは民主主義ではなく共和制であるとはっきり断言する人も珍しくないと聞く。

 「アメリカは国民が等しく同じ様な民主主義の理念を信じている国」だと思ったら大間違いだ。米国の有力な政治家やビジネスマン達が信じているのは「全員が政治的意思決定プロセスに参加する民主主義」ではなく、「ふさわしい人々のみが政治的意思決定プロセスに参加する民主主義」なのだ。だからこうした立場は政治的・経済的弱者に対する差別主義と親和性が高い。その種の差別は理性や論理的思考よりも感情や情動に強く訴えるので、金や権力を持っていない一般庶民であっても、そうしたプロパガンダに釣られてしまうことが多い。共和党と民主党では若干毛色が異なるものの、後者のリベラル・グローバリストが資本主義を「再起動」してテクノクラシーによる新たな封建制を目指している現在では、寡頭制志向はどちらの党も変わらないと言えるだろう。

 興味深いことに、TPUSAはグレート・リセットに反対している。同じ資本主義の推進勢力であっても、リベラル・グローバリスト派とはまた違う系統の様だ。

 共和党サイドのTPUSAは大統領選挙の時にはトランプを支持しており、トランプ自身もこの組織への支持を表明している。またマルコ・ルビオやテッド・クルスの様に人種差別で悪名高い右派の議員達もこの組織への支持を表明しているが、彼等はヴェネズエラや香港に対するカラー革命工作で暗躍していた連中だ。例えばクルスが香港まで出向いて、TVカメラの前で抗議者達に対する警官の暴力に憤慨して見せた前年、彼のお膝元のテキサスではアフリカ系住民に対する警官達の暴力が問題視されて何度も抗議行動が起こっていたのだが、クルスはこれらの抗議に一度も顔を見せなかっただけではなく、公然と警官側を擁護して見せた。国内での人権問題に関心を払わない人物がマスコミの前で他国の人権問題に多大な関心を払って見せる時、その動機は多いに疑ってみるべきだろう。

 先に述べた様に、彼等は資本主義システムの卓越性を、他のシステムがどれだけ劣っているかと示すことによって証明しようとする連中だ。その為になら嘘だって平気で吐くし、プロパガンダ・キャンペーンを展開する為に(屢々市民の血税を使って)多額の資金を投入している。嘘を信じて破廉恥な権力者共にとっての「役に立つバカ」になりたくないなら、嘘を見抜く努力が必要だ。DPRKに関しては、米帝は1945年以来、朝鮮半島の全面支配を一度も諦めたことが無く、自らの侵略行為を正当化する為に、果敢に抵抗し続けるDPRKを貶め続けている。「北朝鮮には困ったものだ」とか言っている日本人は、国際社会に於ては自分達の方がよっぽど困った存在であって、人道と平和に対する脅威であることを、少しは自覚すべきだろう。



付記:パク・ヨンミ氏の怪しい「証言」については、マックス・ブルメンソールとトーマス・ヘッジズ·両氏の記事にも詳しい。日本語訳も見付けたので紹介しておく。
Inside America’s meddling machine: NED, the US-funded org interfering in elections around the
アメリカの干渉マシンの内部:NED、世界中の選挙に干渉している米国の資金提供を受けた組織

天安門事件(1989年)の真相

★天安門事件についての最も有名な写真である所謂「タンク・マン」の写真を撮った写真家ジェフ・ワイルドナー氏の2019年のインタビューを見てみよう。彼自身は「弾圧」の物語を広めている側なのだが、きちんと行間を読んでみれば、事件についての西洋の公式の説明に疑問を差し挟む様な点が幾つも有ることに気が付く。
「タンク・マン」を撮影した写真家の証言の行間を読む

天安門事件についてのテレスールのデバンキング動画に日本語字幕を付けて下さった方が居た様なので紹介しておく。
メディアが捏造した天安門事件


熊猫さん🐼🐷🐶🐻🐰@xiongmao53 による記事。当時現地に居た複数の日本人の証言も紹介されている。
西側メディアが決して報道しない六四天安門事件の真相

★天安門事件の真相について、2011/10/07に発表された龙信明と云う方が書いた記事を紹介してみる。一般向け。但し先入見を持たずに虚心坦懐に読まないと最後まで読み進められないだろう。
1989年の天安門広場について話しましょう:私の伝聞はあなたの伝聞よりも優れています

★「1989年の天安門広場での抗議行動は何を目的としていたのか?」について、簡単に纏めてみた。
天安門広場に集まった人々の思惑

★「天安門事件」の主要な目撃証言の内容をざっと検証してみた。
「天安門事件」の「目撃証言」の信憑性

2020年に機密解除された文書に拠ると、日本は天安門事件に際して、G7による対中国制裁に加担することを拒否していた。中国を国際的に孤立させ、二国間関係が悪化する可能性を懸念してのことで、当初は北京の暴力行為を非難するG7共同宣言の採択にも反対していた(後に賛成に回ったが)。西洋諸国と「価値観を共有」すると言いつつも、取り締まりは北京にとって「国内」の問題であるとも指摘している。この頃にはまだ日本政府にも分別が残っていた訳だ。
Declassified papers show Japan opposed Tiananmen sanctions

★クリスチャン・サイエンス・モニターのロバート・マーカンド記者は2004年の記事から重要な箇所を抜粋して解説を加えてみた。
悪名高い天安門広場の虐殺の新しい物語が浮上する(抜粋と解説)

1989/06/04、天安門広場の「弾圧」を取材中に中国当局に20時間拘束されたCBSニュース特派員のリチャード・ロス氏は、「その場所で最近『虐殺』が発生したことを証明するどころか示唆するものさえ一切存在しなかった」と証言している。
There Was No "Tiananmen Square Massacre"

1989年に天安門広場での抗議が失敗した後、中国政府から指名手配を受けた指導者達はMI6やCIAの支援を受けて香港(当時はまだ大英帝国の植民地)経由で諸外国に逃亡した。彼等は装備や逃亡手段だけではなく、時には武器さえ提供された。この「イエローバード作戦」は香港が中国に返還される1997年まで続いた。「民主主義を守る」と言われれば何となくいいことをしている様に聞こえる知れないが、要は他国に指名手配されたレジームチェンジの為の自分達の政治工作員を、植民地の治外法権状態を利用して逃亡させた訳だ(逆の状況、例えば中国の諜報部が米国で活動させていた政治工作員達を逃亡させる状況を想像してみよう)。
Operation Yellowbird

天安門事件の真相について、2011年と2012年の記事。個々の疑問について詳細に解き明かしてある。私もこの事件については最初から何かが酷くおかしいことには気が付いていたものの、具体的な真相を知ったのはここ数年に過ぎない。2010年代には西洋の大手メディアの大政翼賛化が完成するのに反比例して、それに抵抗する代替メディアがインターネットの普及を背景として急速に発達した為、明確な問題意識を持った者にとっては、点と点を繋いで巨大な嘘を暴く作業が飛躍的に容易になった。「天安門広場での虐殺は絶対に起こった筈だ」と思っている人はメディアや政治家や御用学者から吹き込まれた物語を信じているのであって、具体的な事実を信じている訳ではないので、自分が犯罪捜査官になったつもりで報道の行間を読む習慣を身に付ければ、真相に近付くことは昔よりずっと簡単だ。
June Fourth 1989, another look
Let’s Talk About Tiananmen Square, 1989

2022/12/06に米CNNが公開した、「1989/06/04に中国人民解放軍は多くの若者等を虐殺した」と主張する動画。西側大手メディアが公開している「証拠」が、彼等の主張に対する何よりの反証になる。虚心坦懐に映像を見てみればおかしなことに気が付く。当時大勢の外国の特派員が現地入りしていたにも関わらず、或る程度の混乱が起こったことは映像から確認出来るものの、数百名だか数千名だかの組織的な虐殺と呼べる様な蛮行が行われたことを裏付ける様な映像はひとつも映っていない。全ては言葉(ナレーション)と映像編集による印象操作だ。例えばインタビューに答えている若者達が流暢な英語で答えていること、何百だか何千だかの若者を無慈悲に殺害した筈の戦車隊が、立ち塞がるたった一人の男性を轢き殺さないようにわざわざ全停止していることなどにも注目(「タンクマン」の映像は虐殺が行われたと主張されている日の翌日に撮影されたもので、戦車隊は天安門広場ではなく反対方向に向かっている)。巨大な嘘の存在は、「具体的なエビデンスは何処に有るのか」と云うことを気にしているだけでも結構気が付くことが出来る(とは言っても、演出とエビデンスの違いが理解出来ない人も多い様だが)。
Tiananmen Square: Rarely seen video of the 1989 protests in China


私は元々「天安門広場の虐殺」については判断を保留して来たし(大勢の外国特派員が現地に居たであろうにも関わらず、決定的瞬間を捉えた写真や映像がひとつも無かったから)、海外の代替メディアで事実関係を知ってからは寧ろ疑問の答えが得られてすんなり納得したものの、恐らく当時のニュースを鵜呑みにし、日本語メディアにしか接したことの無い日本人の圧倒的大多数は、今だに虐殺が実際に起こったと信じ切っているだろう。日本語で正しい情報発信を行なっているのは個人のブログかSNS程度しか見当たらない。残念だがこの状況を直ぐにどうにか出来るとは思わない。今騙されている人の殆どは、恐らくこの先も一生騙された儘ではなかろうかと云う気がしている。私もささやかながら真相を伝える為に情報発信は行なっているが、一体どれだけ役に立てているやら。
中国に新自由主義を継続させるため、CIAがMI5と手を組んで仕組んだ天安門事件

1989年の「学生達の民主化運動」は草の根運動ではなく、ジーン・シャープやジョージ・ソロスが趙紫陽の様な工作員を使って仕組んだ、今で言うカラー革命だった。これが成功していたら中国はソ連崩壊後のロシアの様になっていたかも。

The Truth Behind the Myth of the 'Tiananmen Square Massacre' - Opinion Piece By Dr. Dennis Etler

【推奨】この記事も大変よく纏まっている。「1989年の天安門広場に於ける中国人民解放軍による学生達の虐殺」は完全なフェイクニュース。証拠なら沢山有る。西側のメディアも政府も最初から嘘だと知っていた。嘘を吐いているのは中国政府の方ではない。

1989 Tiananmen Square "Student Massacre" was a hoax

天安門事件で失脚した「中国のゴルバチョフ」こと趙紫陽はソロスの工作員で、当時はソロスやキッシンジャーやフリードマンの様な西側のソシオパス達がテクノクラートを通じて中共内部へ浸透を図っていた。1989年のカラー革命が成功していたら中国はどうなっていたことか。
How China’s Gorbachev Was Flushed in 1989
 寺島メソッド翻訳NEWSさんが邦訳されていたのでこちらも紹介。天安門事件の真相について、日本語で読めるものは殆ど存在しない。
1989天安門事件の背景。中国のゴルバチョフは如何に育成され、そして排除されたか。

1989年の「天安門事件」は西側の捏造。検証可能な証拠なら沢山有る。カラー革命の試み自体は失敗したが、今でも中国を中傷する為のネタとして十分に機能しているので、その意味では大成功だったと言える。

Washington’s “Tiananmen” Lies Begin to Fray

【推奨】西側大手メディアが伝えようとしない、1989年に天安門広場で本当に起こったことの優れた概説記事。虐殺も弾圧も無かった。あれは民主化運動などではなかった。嘘を吐いていたのは中国共産党ではなかった。
TIANANMEN SQUARE MASSACRE – FACTS, FICTION AND PROPAGANDA

ドキュメンタリー"The Gate of Heavenly Peace"についての感想記事。天安門事件では、指導者達は実際には下っ端の学生達を裏切って嘘を吐いていたことが明らかにされている。
From the “Tiananmen Massacre” to the “Lhasa Protests”

天安門事件当時、外国メディアの特派員が何人も現地入りしていたのに、虐殺の現場を捉えた写真や映像記録はひとつも存在しない。これが大規模な情報歪曲工作であったことは当事者達の一部も認めている。
Tiananmen “Massacre”? and The Unrelenting Monopoly Media Agenda

日本人論でも知られるグレゴリー・クラーク氏が天安門事件の真相について書いた記事。「虐殺」は英国の“Black Information Operation”の産物だ。
The 1989 Tiananmen Square Massacre Is a Myth: British “Black Information Operation”

アメリカ帝国による侵略や内政干渉については様々な本が出ているが、カラー革命に焦点を絞ったものとしてはこれがお薦め。「カラー革命の戦略目的は何か」と云う根本的な所から説き起こしていて、体系的に学べる。

 同書についての私のレビューも宜しく。
偽の民主化運動であるカラー革命について知りたかったら先ず読むべき本

「天安門広場での虐殺は捏造」の件については、ネット上では色々な記事が出回っているが、本で読む場合はこれが読み易いと思う。kindle版だと千円ちょい。

 因みに同じ著者による別の本は、反中主義者が見たらタイトルだけで引っ繰り返るだろうと思う。

 Wei Ling Chua著、"Tiananmen Square “Massacre”?: The Power of Words vs. Silent Evidence"の紹介記事。天安門事件の真相について知りたいけれども本1冊読んでいる暇が無いと云う人は、要点をまとめたこの記事だけでも読んでみて欲しい。
The 1989 Tiananmen Square Massacre? What Massacre?

「何処の馬の骨とも分からん奴が言っていることは信用出来ん!」と云う人の為に、ワシントンポストの記者 Jay Mathews 氏が1998年に書いた「天安門広場での虐殺は無かった。偽の目撃証言に基付く捏造だった」とする記事。
The Myth of Tiananmen - Columbia Journalism Review

30周年記念に際して天安門事件を振り返る記事。
 ・天安門広場での虐殺
 ・広場に続く通りでの虐殺
 ・抗議活動は自発的
 ・抗議行動の弾圧は間違い
全て嘘。あのカラー革命工作を放置していたら、中国はエリツィン時代のロシアの様な経済的侵略に遭っていただろう。
 violencefromprotestors
Notes for 30th Anniversary of TianAnMen Incident

天安門広場で実際に起こったことは西側メディアの報道とは大きく異なっており、その背後にアメリカ帝国の反革命工作の存在を示唆する記事。
Tiananmen: The Massacre that Wasn’t

WikiLeaksが明らかにした米大使館の秘密通信は、天安門広場で虐殺は起こらず、郊外で武力衝突が起こったことを告げている、とする記事。
Wikileaks: no bloodshed inside Tiananmen Square, cables claim By Malcolm Moore

「天安門事件」については既に捏造であるとの証拠が幾つも出ているのに、冷戦が終わって30年経った今でも、西側では「公式の嘘」が再生産される。西側プロパガンダの情報源が何だったのかなど、最早誰も気にしない。自分で情報を集めに動かない人間は、結局騙されたまま。
What Really Happened in Tiananmen Square 25 Years Ago

これは「天安門広場で虐殺が行われた」と主張する記事だが、きちんと見てみれば判る様に、「天安門広場で人民解放軍が学生達を虐殺した」現場の決定的瞬間を捉えた写真など一枚も無い。偽の証言に基付くこれらの告発は全て言葉によって演出された。ところが一旦物語を信じてしまうと、読者は勝手に脳内でその空白を埋めてしまう。そしてこの種の記事には、学生達によって惨殺された兵士達の写真などは決して出て来ない。事実を伝えることよりも、中国を攻撃することが目的の記事だからだ。「当時の天安門事件報道を見て、私は確かに中国軍が学生達を虐殺する光景を目撃した」と思っている人は、自分自身の思い込みによって記憶を歪めてしまっているだけで、実際にはそうした光景は見ていない。この記事で挙げられている写真を見ても判る通り、そうした映像はそもそも存在しなかったからだ。そうした人達は自覚的にではないだろうが、記憶の改竄、歴史の改竄を行っている訳だ。
中国が歴史から葬り去ろうとしている天安門事件、30枚の写真

ラリー・ロマノフ氏による解説。1989年の天安門事件は米国務省とCIAが筋書きを書いたカラー革命未遂だった。学生運動は「民主化運動」などではなく、天安門広場では学生達の虐殺など起こらなかった。逆に同日木樨地で起こった労働者達の暴動(と云うよりもテロ)で多くの人民解放軍兵士達が惨たらしく殺害された事件は西側では全く報道されなかった。これら関する情報の多くは西側ではアクセスが難しく、無論マスコミでは殆ど触れられない。
burning tank
Tiananmen Square: The Failure of an American-instigated 1989 Color Revolution

南コーカサスに於けるフランス新植民地主義はロシアの安全保障上の利益を脅かす(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の解説の抄訳。アルメニアとアゼルバイジャン間で争われているナゴルノ・カラバフ紛争を巡って、フランスとロシアは真っ向から対立しているが、フランスの新植民地主義的態度は、この旧植民地主義国が本当の意味では反省していないことを示している。
French Neocolonialism In The South Caucasus Threatens Russia’s Security Interests



 2023/07/05、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、首都バクーで開催された非同盟運動(NAM)サミットでの演説で、フランスの新植民地主義的慣行を非難した。

 「フランスは、アゼルバイジャンのカラバフ地域に於けるアルメニア分離主義を支援し、また地政学的なライヴァル関係、外国軍の駐留、『オリエンタリズム』的植民地政策を通じて、(アフリカに於ける新植民地主義と云う)悪しき慣行を南コーカサス地域にも押し付けようとしています。」



カラバフ紛争を巡るフランスとロシアの対立

 カラバフ紛争にそれ​程詳しくない人は、フランスには世界で最も強力でハイパー・ナショナリスト的なアルメニア人のディアスポラのひとつが有ると云うことを恐らく知らないだろう。これはフランスの対南コーカサス政策の主導権を握っている。

 この影響力ネットワークは、フランス政府を国家レヴェルの代理勢力として利用し、アルメニアのパシニャン首相にアゼルバイジャンとの平和条約に同意しないよう圧力を掛ける一方で、アルメニア政府のカラバフに対する非公式の主張を維持するようパシニャンに促してもいる。

 パシニャンは、この30年に及ぶ問題を解決してしまえば、このハイパー・ナショナリスト勢力が彼に対してカラー革命を仕掛けるのではないかと恐れていると同時に、この未解決状態を無期限に持ち堪える為にフランスが国家的支援を続けてくれるのではないかとも考えている。

 そんな中、フランスがアルメニアへの武装を検討している、或いは既に秘密裏に実行に移していると云う噂が広まっている。アゼルバイジャンのアリエフ大統領が今年のNAMサミットでフランス政府を公に非難したのは、こうした文脈に於てのことだ。

 欧州安全保障協力会議が設立したOSCEミンスク・グループは、ナゴルノ・カラバフを巡る紛争に関して中立を保つことを約束しているが、フランスはその加盟国だ。フランスは約束を破ってこの台頭するグローバル・サウス国家の主権に対して挑戦している。アリエフ大統領が黙っていられなかったのは当然のことだ。

 ロシアも同じくミンスク・グループの一員だが、こちらは2020年にアルメニアから支援を要請されて断っている。ロシアは中立原則を守った訳だが、この為に後にパシニャンは、アルメニアがCSTO(集団安全保障条約)からの離脱を検討するかも知れないと脅している。
 
 ロシアが中立原則を守ったのは以下の理由からだ:
 ・それがミンスク・グループ加盟国の義務である。
 ・カラバフはアゼルバイジャンの領土として広く認められている。ロシアは国際法を尊重した。
 ・友好的なアゼルバイジャンを敵にしたくないと云うプラグマティズム。

 フランス側の理由は以下の様なものだ:
 ・ハイパー・ナショナリスト勢力に乗っ取られた。
 ・国際法の軽視。
 ・プラグマティズムより党派主義が優った。

 ロシアとフランスは既にアフリカでの影響力を巡って熾烈な競争を繰り広げている。ロシアの「民主的安全保障」政策はパートナー諸国が植民地解放プロセスを完全に完了する手助けをしている一方で、フランスの新植民地主義は、それらを属国として従属させ続けようとしている。フランスはカラバフ紛争の無期限凍結を支持しているが、ロシアは出来るだけ早急に政治的解決を促す努力をしている。この対立は現在急速に拡大している。



高まるリスク

 フランスが新植民地主義的な分割統治政策を反復しようとするにつれ、戦略地政学的に重要な南コーサカス地域は不安定化するリスクが有る。今後考えられる展開としては、

 1)最悪のシナリオ:パシニャンに対するアメとムチ作戦が熱い戦争の勃発に繋がる。これは計算違いによって起こる可能性が有る。この場合ロシアはウクライナ戦線に集中出来なくなり、予測不可能な結果を​​招く可能性が出て来る。

 2)比較的マシではあるが碌でもないことには違い無いシナリオ:フランスがロシアの「勢力圏」からアルメニアを「引き抜く」。これは「クレムリンの圧力によってカラバフをアゼルバイジャンに売り払ったことへの補償」として展開される可能性が有る。アルメニアがNATO陣営に入れば、南コーカサスが新冷戦の舞台になる。
 
 3)最善のシナリオ:パシニャンを説得して平和条約に合意させる。だがパシニャンが過激派ディアスポラに捕われたフランスからの激しい圧力に曝されている限りは、このシナリオは実現困難だ。この問題に関して単純な解決策は存在しない。アリエフ大統領がわざわざこの問題を公に非難したものも、これは放っておいても自然に消滅するものではないと考えたからだ。

 ロシアはアルメニアと同盟関係を結んでいるので、外交上微妙な立場に在る。何か語れば影響力を失ったのだとか、新植民地主義的意図を持っているのだとかフランスによって曲解されかねないロシアよりも、アゼルバイジャンの方がこの件についてより率直に語ることが出来る。

 但しアリエフ大統領の言葉は旧ソ連地域を脅かしているフランスの新植民地主義意図を暴露している為、フランスに対して発展途上国を団結させていると云う意味では、ロシアの利益と一致している。

 ハイパー・ナショナリスト的なディアスポラは今後もカラバフ地域を諦めないだろうが、今後は真に中立的な政策立案者達に、そのプロジェクトを継続するコストを考えさせることになるかも知れない。



フランスの無責任

 特定のロビー団体を喜ばせるためだけに外国の紛争を煽るのは無責任であり、フランスは外国に於ける自国の利益が彼等によって左右されるのを許すべきではない。折角マクロン大統領が今年のBRICSサミットへの出席に意欲を示し、それによってこれまでのグローバル・サウスとの関わりをリセットしようとしているのに、フランスの政策の信用が傷付くことになる。

 フランスのBRICSへの意欲の動機が疑わしいものであることは以前の記事(123)でも指摘して来たが、アフリカと東欧で継続中のフランスの対ロシア代理戦争は、フランスは新植民地政策に関して本当の意味では何も変わっていないことを証明している。だが殆どの人はこの展開の前向きな面にしか注目していない(123)。

 この希望的観測はアリエフ大統領の警告によって却下された。ロシアとアルメニアの関係は複雑なので、南コーカサスに於けるフランスの有害な役割についての彼の評価をロシアが公に支持するとは期待出来ないが、ロシアの外交官が言えなかったことをアリエフ大統領は率直に語ったので、ロシアが彼に対して賛同のウィンクを送っていることは確かだろう。

ゼレンスキーは第二のサーカシュヴィリになるのだろうか?(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の解説の抄訳。ゼレンスキーはグルジアのサーカシュヴィリと同様、米帝にとっては使い捨ての駒に過ぎない。
Will Zelensky Become The New Saakashvili?



 2023/07/03、刑務所に収監中のジョージア/グルジアの元大統領ミヘイル・サーカシュヴィリの証言映像が出回ったが、その中の彼は大分痩せ細っていた。これを受けてウクライナのゼレンスキー大統領は、ジョージアが彼を「拷問」しているのだと非難し、「ロシアはジョージア当局の手を通してウクライナ市民ミヘイル・サーカシュヴィリを殺害している」と主張した。
WARNING: GRAPHIC CONTENT - Zelenskiy summons Georgia ambassador over ex-president


 「2008年のグルジア紛争は2022年のウクライナ紛争の米国のテンプレートだった」と以前に指摘したが、ウクライナもまたグルジアと同様の運命を辿る可能性が有るので、両国の置かれている状況の類似性は認識しておいた方が良いだろう。両国とも、米国の対ロシア戦争の代理勢力だった。

 当時サーカシュヴィリは南オセチアを急襲するよう命じられたが、彼はその作戦が迅速に成功し、その地域を再征服出来ると確信していた。ところが実際には、ロシアは5日間の平和執行任務を開始するよう促され(所謂「5日間戦争」で、これは西洋の公式プロパガンダではロシアの方から仕掛けたことにされている)、グルジアは南オセチアとそのその近隣のアブハジアを失うことになった。ロシアは両地域を主権国家として承認した後、その状態が今日まで続いている。

 同様に2022年、ゼレンスキーは支援者達からドンバスを急襲するよう命じられ、迅速に成功すると確信していたが、土壇場になってロシアが特別軍事作戦を開始し、これを先制した。キエフはこれらの地域を再征服するどころか、2022年9月に完全に国際法に則って行われた住民投票によって、ドンバスの他2つの地域まで失うことになった。

 グルジアはアッと言う間に敗北したが、キエフはそれ以来16ヶ月も紛争を継続している。が、これもまた失敗に終わるだろう。NATOが支援するキエフの反攻は大惨事でしかないし、キエフ当局者に加えて西洋の主流メディアさえこの件について言い訳を始めている。ゼレンスキーがNATOサミットまでに少なくとも何等かの成果を上げるよう軍に要請したことからも判る様に、彼は時間が無くなって来ていることを解っているのだ。彼は西洋のパトロン達の過剰な期待を批判してすらいて、他のキエフ当局者達も同様に激怒していると報じられている。キエフ軍の最高司令官ヴァレリー・ザルジニーもまた反攻を批判されていることに対して怒りを表明している。

 キエフの意思決定者達が、ウクライナがNATOに招かれない可能性が高いことに気が付いているのは明らかだ。

 そもそも彼等がグルジアのシナリオをウクライナで再現しようとする米国の口車に乗ってドンバスを再征服しようとしなければ、その為に何万人もが無駄死にすることは無かった。また2022年3月の和平プロセスを英米枢軸が妨害しなければ、その後キエフがヘルソンとザポリージャまで失う展開にはならなかった。キエフの置かれている状況はグルジアよりも遙かに悪い。プーチンメドベージェフが指摘した様に、反攻失敗後にNATOがキエフへの武器供与を停止すれば、ゼレンスキーの政治資本は完全に消えて無くなることになる。

 2022年の和平プロセスを貫徹していれば、ゼレンスキーは国民の支持も、軍-諜報-オリガルヒ・エリートの三頭制も維持出来たかも知れないが、ここまで失敗続きの後で今更妥協を強いられたとなれば、最早支持を得ることは事実上不可能だ。余りにも多くの人命が失われ、財産が破壊され、諸地域がロシアと一体化してしまったので、一時的な敵対行為の停止、況してや休戦協定やに平和条約でさえも、最早勝利と呼ぶことは出来ない。キエフの反攻失敗は、西洋文明に於ける最悪の屈辱のひとつになりつつある。挽回のチャンスは日に日に薄れて行っている。

 このシナリオに於て、NATOがウクライナに対する影響力を維持する為に、また起こり得る反乱を先制的に阻止する為に、ザルジニー最高司令官や軍事情報部(GUR)長官ブダノフの様な人気の有る高官をゼレンスキーの後釜に据えると云うレジームチェンジ計画を支持していたとしても驚くべきことではない。この二人にしても西洋のパトロン達にしても、自分達がどれだけ無意味な犠牲を払わされたかを悟った後のウクライナ国民の怒りがゼレンスキー一人に向いてくれた方が都合が良い。

 仮に彼等が国際世論を顧慮してゼレンスキーを権力の座に留まらせると云う賭けに出たとしても、彼は出馬を決めれば厳しい戦いに直面することだろう。
 
 何れにしろ、西洋が和平交渉を強要した瞬間に、ゼレンスキーの政治生命は終わるだろう。

 サーカシュヴィリと同様、ゼレンスキー氏もまた政敵から権力の濫用を問われる可能性が有るし、その場合、国内に留まっていたとしても、サーカシュヴィリの様にカラー革命を実行しようとして国に戻って来たとしても、恐らくは刑務所入りだ。グルジアは最近プリゴジンの反乱未遂に付け込んでソチを侵略する西洋の計略を暴いたばかりだが、これと同じ様にウクライナが失った主権の多くを西洋から取り戻せば、彼が裁かれる事態が起こる可能性は高くなる。

 サーカシュヴィリが投獄されたのは、彼が米国の命令で権力を濫用し、パトロン達の命令で始めたロシアとの代理戦争に敗れた後、比較的主権的な政府が発足し、彼を裁判に掛けるとの公約を果たした為だ。ゼレンスキーもまた米国の命令で権力を濫用し、パトロン達の命令で始めたロシアとの代理戦争に敗れた。彼がサーカシュヴィリの二の舞になる可能性は高い。
 
 米国に同盟国は存在しない。少なくとも、自国の利益を犠牲にしてでも支援しようとする相手は存在しない。ゼレンスキーのウクライナやサーカシュヴィリのグルジアの様な属国か、稀に最終的に対等な相手として扱われるかも知れない、インドの様なパートナーしか存在しない。ゼレンスキーのウクライナは、衰退しつつある米国の一極覇権を回復する為に搾取される属国に過ぎないが、今では最早その目的を果たすどころか、ブローバックのリスクを孕む重荷になりつつある。

 従って、ゼレンスキーはサーカシュヴィリと同様、遅かれ早かれ何等かの形で処分されることになるだろう。残された可能性は、自由の身であり続けるか、裁判に掛けられるか、或いは命を失うかだ。

イランの研究で、あらゆる種類のCOVID-19ワクチン接種後に神経学的副作用が発生することが判明(要点)

ローダ・ウィルソン氏の記事の要点。COVID-19ワクチンはどの種類のものであっても、神経学的な副作用を齎し、中には致命的なものも有る。

 ヒポクラテスの誓いには「患者に害を為すな」と云う原則が含まれているのだが、現代医学のイデオロギーの下では「副」作用と云う言葉の魔力によって、医師が患者に害を為すことが当たり前の様に行われている。人体に於て、害と益との機械的なバーター取引が出来ると想定されているのだ。だが、そろそろこの当たり前の根本的に常識を疑ってみるべきだろう。
Iranian study finds neurological adverse effects occur after all types of covid vaccinations



 2023/02/25に公開された論文で、イランの研究者2人が、2020〜2022年の国際データベース記録されたCOVID-19ワクチンの神経学的副作用についての報告に関する包括的なレビューを行った。はGoogle Scholar、PubMed、NCBIデータベースで検索された研究、レビュー、症例報告が対象となった。
A review of neurological side effects of COVID-19 vaccination

 研究の時点では、世界人口の約68%が、以下の4種類の内のひとつ以上によるCOVID-19ワクチン接種を完全に受けていた。
 ・核酸ベース(DNA-mRNA)
 ・ウィルス・ベクター(複製-非複製)
 ・生不活化(または弱毒化)ウィルス
 ・蛋白質(スパイク蛋白質またはそのサブユニット)

 研究者達は、「COVID-19ワクチン接種の短期的な結果は有望である」と述べた(この場合に有効であるとは、単に抗体産生プロセスが誘導されることを意味し、厳密に言えば感染を予防出来ると云う意味ではない。機械論的世界観に基付くウィルス還元主義イデオロギーが有機的な生命活動を記述し理解する上で適切であると仮定した場合にのみ、この「有効性」は実質的な意味を持つ)。「しかし中長期的には、特に一部のワクチンでは。懸念すべき副作用が報告されている」と述べている。

 「COVID-19ワクチンによる軽度の神経学的影響には、脱力感、痺れ、頭痛、目眩、平衡感覚の乱れ、疲労、筋肉の痙攣、関節痛、下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)等がよく見られるが、震え、耳鳴り、帯状疱疹等は余り一般的ではない。

 他方、重度の神経合併症には、ベル麻痺、ギラン・バレー症候群、脳卒中、発作、アナフィラキシー、横性脊髄炎や急性脳脊髄炎等の脱髄症候群等が含まれる。これらの中で、特にアデノウィルス・ベースのCOVID-19ワクチンによって引き起こされる最も危険な神経合併症は、出産可能年齢の女性に於ける脳静脈洞血栓症である。」

 「COVID-19ワクチン接種の副作用は、免疫関連疾患の既往歴が有る人、または年齢や生理的状態に敏感な人でより頻繁に報告されている。」

 そして、「最も重要且つ最も一般的な合併症」は:

 ・脳静脈洞血栓症(アストラゼネカに多い)
 ・横断性脊髄炎(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンに多い)
 ・ベル麻痺(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカに多い)
 ・ギラン・バレー症候群(ファイザー、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンに多い)
 ・多発性硬化症の初めの症状(ファイザーに多い)

 「これらの影響は多くの場合急性且つ一時的だが、場合によっては重篤で致命的となる場合も有る。」

 例によって著者達は結論として、「OVID-19ワクチンが実際にこれらの症状の原因であることを明確に立証するには更なる研究が必要であると指摘している。

英国がアフリカ難民問題の最終的解決として「浮かぶ監獄」を配備

2023年7月、英国政府は難民対策として「浮かぶ監獄」を運用しようとしている。
UK deploys floating prison as a final solution to their Africa Refugee problem



 2023年7月、幾つもの西洋大手メディアが、英国が英仏海峡のポートランド港に宿泊用のバージを配備したことを報じ、これを「浮かぶ監獄」だとして非難した。
What will life be like on the UK's first migrant barge?
UK slammed for plans to keep irregular migrants on 'floating prison'
UK says barge not 'floating prison' days before it houses migrants
Protests Meet Bibby Stockholm, U.K. Barge for Asylum Seekers

 この船の名はビビー・ストックホルム号。全長93mで3階建て。最大506名まで収容可能で、1976年に建造され、1990年に宿泊客用バージに改装された。

  
 この船は以前はドイツとオランダで、ホームレスや亡命希望者を収容する為に使われていた。

 これは約500人の男性亡命希望者達(非正規移民)に一時的な住居を提供するものと言われており、彼等は申請手続きが完了するまで、3〜6ヵ月収容されることになる。先ずは18ヵ月の試験運用が予定されている。

 ポートランド港には警備員が24時間常駐することになるが、移民達は正式に拘束されている訳ではないので、移動は「法の範囲内で管理」されることになる。

 英国政府はこれまで、失敗に終わったルワンダ計画や、「不法」なルート経由で到着した者全員に亡命申請を禁じる不法移民法案等で、難民に対する人権侵害だと非難されているが、今回の措置では、これによってホテルの部屋代を何百万ポンドも節約出来ると主張している。

 船が港に着いた時には、英国政府の難民政策に反対する抗議者達がこの「浮かぶ監獄」を非難するカードを掲げて抗議した。



 西洋市民の多くが、難民問題の実態をよく理解していない。世界の難民はここ10年で略倍増した。


 だが、危機によって祖国を追われた人々の殆どは、欧州や北米等の高所得国に辿り着くことは出来ない。多くは近隣の国々に避難所を求めている。それは例えばウガンダ、スーダン、エチオピア、バングラデシュ、パキスタン、トルコと云った国々で、これらが世界で発生する難民の80%近くを引き受けている。


 これらの国々は当然欧州よりも遙かに大規模な難民問題を抱えているのだが、それらが西洋大手メディアで取り上げられることは殆ど無い。対照的に、欧州諸国は難民の極く一部を引き受けているに過ぎないのだが、彼等が「難民によって圧倒されている!」と苦情を言えば、それらは大きく取り上げられる。

 ウクライナ難民を例に取ってみても、2022/02/24以降に戦乱を逃れたウクライナ難民のことは大きく報じられるが、それ以前、2014年以降のキエフの政府や軍による迫害を逃れたてクリミアやロシアに逃げたウクライナ人、或いは独立後に経済的に困窮して国を出たウクライナ人のことは殆ど報じられない。政治的思惑によってメディアの注目度には大きな偏りが見られるのだ。

 英国が引き受けている難民は、現在支援を必要としている人々の1%未満に過ぎないのだが、そうした訳で英国政府の今回の措置も、批判者達からは非人道的、人種差別的、外国人嫌悪的だと非難されている。

 難民の多くは、西洋の帝国主義勢力が直接間接的に作り出した危機によって発生したものだ。その極く一部が自国に避難所を求めてやって来た時、彼等は「多過ぎる!」と苦情を言い、差別したり拒絶したり、今回の様に一部を監獄に閉じ込めたりする。西洋の偽善と道徳的退廃は、見えている者には真昼の太陽の様にはっきりと見えている。

 難民問題を根本的に解決したいなら、基本的には方法は単純だ(簡単、とは言わないが)。難民を作らなければ良い。もう少し正確に言えば、大規模に難民が生まれる様な状況を作り出さなければ良いのだ。標的となる国々に対する軍事侵攻や侵略、テロリストや独裁者や民兵組織の支援、制裁や封鎖による経済攻撃、国外資産の押収や国内資源の強奪や搾取、要人の暗殺やカラー革命等、その国を不安定にして普通に生活することを困難にさせる様な非人道的な措置を一切中止すれば良い。話はまぁそれだけでは終わらないのは確かだが、それらを踏まえないと先へ進めないのも確かだ。西洋の帝国システムは難民量産マシンだ。このケダモノをどうにかして無力化しない限り、今後も難民は増え続ける。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

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