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英国の劣化ウラン弾提供の決定は何故大事件なのか?(要点)

劣化ウラン弾について、スコット・リッター氏の解説。劣化ウラン弾を「核兵器」と呼ぶかは微妙なところだろうが、少なくとも「放射能兵器」ではある。ロシアが核の先制使用を企んでいると本気で信じている日本の自称反核主義者達は一体どう反応するのだろう。
Why is Britain’s Uranium Ammo Decision a Big Deal?
Scott Ritter - 2 minutes topic about depleted uranium munitions




 英国国防省は、劣化ウラン(DU)弾は「核兵器とは何の関係も無い」と主張し、「王立協会などのグループの科学者による独立した研究は、劣化ウラン弾の使用による個人の健康や環境への影響は低い可能性が高いと評価している」と述べた。

 他方ロシアは当然これを非難し、プーチン大統領は劣化ウラン弾を「核要素を備えた兵器」と呼び、「ロシアはそれに応じて対応せざるを得なくなる」と警告した。

 劣化ウラン弾の毒性は議論の的だ。1999年、NATOはコソボ爆撃の際に約30,000発の劣化ウラン弾を発射したが、これは「継続的な健康上のリスクを引き起こすものではない」と断言している。

 NATOの立場はIAEAの「劣化ウランによる地表の検出可能な広範な汚染は無かった」と云う、低線量被曝の問題を無視する評価によって補強されている。

 だがこれは国立衛生研究所(NIH)の報告書の結果と矛盾している。この研究は「DU弾の使用が多い地域では、血液悪性腫瘍の発生率が 3.19/100,000 人 (82%) 増加した」と述べているのだ。にも関わらずこの報告書は「因果関係が存在すると云う決定的な調査結果には繋がらない」と、はっきりした結論を避けている。

 米軍はイラクでもDU弾を使用したが、これはコソボの場合とは異なり、もっとはっきりとした結論が出ている。日本を拠点とするヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、「先天性先天性欠損症の異常な状況」が「性質と量の両方で」検出されたと報告しているのだ。

 米軍はDUは基本的に安全だと主張しているが、米軍の保健当局自体が「劣化ウランは、金属の破片や粉塵の様な粒子を介して体内に取り込まれ、量が多い場合、長期に亘って人員の健康を害する可能性が有る」と認めている。

 DUの毒性に関する懸念により、米国防総省は、米国がDU弾をウクライナに提供しないことを発表した。

 曾てのソ連軍は特定の種類の対戦車弾薬に劣化ウラン貫通弾を使用していたが、現在のロシア軍はこれらの武器を在庫から取り除く作業を行なっている。
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ジョージア

★キット・クラレンバーグ氏の記事から、ジョージアのローズ革命に関する部分の要点を纏めてみた。
CIAフロントがジョージアにカラー革命の脅威を齎す(要点)

CIAのフロント組織であるNEDやその同類組織が、2021年にジョージアで「民主主義を促進」する為に費やした予算の概要。メディアへの浸透や人材育成、若者達の教化等がメイン。ロシアや中国の諜報部が同じ様なことをやらかしたら、ワシントンは絶対に許さないだろう。ジョージアには外国のエージェントであることを秘密にしておきたい連中がわんさか居る。
GEORGIA 2021

2023/03/02、カラー革命組織USAIDの長官サマンサ・パワーの呟き:「ジョージアが提案している外国エージェント法は、ジョージアのユーロ-大西洋の未来と、ジョージア人が自らの経済的、社会的、その他の願望を実現する能力を深刻に脅かしています。私はジョージア議会に対し、これらの法案を取り下げるよう要請します。」米国にも同様の登録法は存在するし、明らかな内政干渉で国際法違反行為なのだが、彼女は何を言っているのだろう。
Samantha Power @PowerUSAID

★ジョージアの「外国の影響力」法案の撤回を巡る展開について、ブライアン・バーレティック氏の解説。
ジョージアの抗議:米国はロシアに対して第二戦線を開こうとしている(要点)

★2023年3月、ジョージアではカラー革命が進行中。
マイダンの谺:ジョージアには西洋が資金提供する巨大なNGO部門が存在し、暴力的な抗議活動が定期的に発生している。その関連は?(要点と補足)

★ウクライナで戦争犯罪を繰り返している「ジョージア大隊」のルーツについての解説記事。
ジョージア大隊はウクライナでISIS式の処刑を実行している(要点)

★西洋では時に「ロシア軍によるグルジア侵攻」などと称されることも有る、2008年の南オセチア紛争についてのRTの解説記事。
米国が支援する小国の指導者の野望が、現在のロシアと西洋の対立を引き起こした経緯(要点)

ジョージアはウクライナ紛争でウクライナを支持しているが、議会議長Shalva Papuashviliは「ロシアはジョージアを通じて制裁品を密輸している」と云うウクライナ諜報部の主張を「容認出来ないフェイク」「嘘」と非難し、ブチャへ招待されたものの断った。 Dimitri Khundadze首相は「ウクライナ側がセキュリティ・サーヴィスの声明について説明するか、議論が無い場合は謝罪するまで、その様な問題は議論されるべきではない」と発言。
Georgian top official refuses to visit Bucha despite Ukraine’s invitation

ウクライナ国家安全保障防衛評議会長官は、南オセチアとアブハジアの領土を奪還する為にロシアに対する「第二戦線」を開くようジョージアに呼び掛けたが、ジョージア側の反応は概して冷淡。後にオデッサ州知事になったサーカシュヴィリが逃げ出す原因になった2008年の紛争で、ジョージアはロシアに痛い目に遭わされている。
Georgia responds to Ukrainian call to attack Russia

ウクライナ:ブチャの「偽旗」が崩壊:「国際社会」はICC主任検察官カリム・カーンを呼んだが、反応無し(要点と補足)

Ukraine: Bucha “False Flag” Falling Apart: “International Community” Calling ICC Chief Prosecutor Karim Khan … No Response



国際刑事裁判所の不作為

 予備知識として国際刑事裁判所(ICC)とは何かを説明しておくと、NATOが仕組んだ冤罪に基付いて、加害者が被害者を一方的に裁く見せ物裁判であったルワンダやユーゴスラヴィアの国際戦犯法廷を発展させて2002年に設立された組織であって、国際法を代表すると云うより、国際法を愚弄する様な組織だ。これはローマ規程と呼ばれる条約に基付くもので、従ってこの条約に批准していない国に対しては有効ではない。

 2022/02/28、ICCの主任検察官カリム・カーンはウクライナで犯された戦争犯罪と人道に対する罪について正式な調査を開始する許可を要請し、03/03に調査官チームがウクライナへ向けて出発したと発表した。

 ここで押さえておくべきポイントは2つ:

 1)カーンの調査は2022年2月に開始されたが、これは2014年4月に開始されたICC検察官の予備調査の過程で以前に収集された情報にまで遡って、裁判所の管轄内の犯罪まで含めるものとされている。つまり2014年以降から2022/2/24のロシア軍の特別軍事作戦開始時までに犯された戦争犯罪も扱うと云うことだ。

 2)2022年4月初めの時点で、カーンはウクライナの調査チームを派遣しており、彼等はブチャで調査を行いたければ数時間で行ける所に居た。

 調査の焦点は、非人道的な武器が使用されたかどうか、また民間人が意図的に標的にされたかどうかだ。カーンは特に子供に対する戦争犯罪については「ゼロ・トレランス(容赦しない)」方針を掲げている。だが2022/03/17のツイートで、「効果的で独立した調査の為に、重要な全関係者と接触する」と発言しているにも関わらず、彼はドンバスを訪れて、2014年以降にキエフ軍の砲撃によって殺害された500人以上の子供達の親達と面会することも、追悼碑を訪れることもしなかった。これは、先ずはあらゆる関係者から話を聞くと云う調査の基本的手順に反している。

 そして「ブチャの虐殺」の告発が為された時、彼のチームは1週間経っても現地に赴いていない。またNYタイムズの主張に従うならば、虐殺が行われてから3週間も調査を放置していたことになる。これもまた通常の調査手続きに従った動きではなく、何故迅速な調査が行われなかったかについての説明は無い。意味不明だ。

 この不作為についての最も穏健な説明は「怠慢による過失」だが、ICCの調査がそもそも組織的に偏向していることは以前から指摘されている。カーンの前任者であったファトゥ・ベンスーダは、米軍やCIAや英軍の告発を求めた為に解任され、更にメディアからバッシングを受けた上に、ワシントンからは制裁の対象にされた。カーンがベンスーダの様にICCの「伝統」を破って、「間違った」相手を告発してしまったらどうなるかは容易に想像出来る。


 
フォン・デア・ライエンの不可解な振る舞い

 一般的な法医学上の事実として、死体と云うものは死後24~36時間以内に腐敗し始め、周囲に不快な悪臭を放ち始める。数十体の遺体が早春に屋外に放置されていたら、死後少なくとも10日は、周囲に耐え難い悪臭を放っていた筈だ。これは上からビニールシートで覆った程度でどうにかなる様なものではない。 

 2022/04/08にウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長がブチャの「集団墓地」だと主張されている場所を訪れた時、対面した死体がロシア軍によって殺害されたものであれば、彼女は衛生上の理由からマスクの着用を義務付けられ、気の遠くなる様な腐臭に顔を顰めていた筈だ。だが動画を見れば判る通り、彼女も随行員達も、誰一人マスクを着けていないし、顔を顰めてもいない。これは死体が死後それ程日数が経っていなかったことを示唆している。
'Unthinkable': Ursula von der Leyen shown mass grave in Bucha


 参考として、人間の死体が分解するタイムラインを挙げておくと、以下の通り。
 ・死後24~72時間:内蔵の分解が始まる。
 ・死後3~5日:体が膨張し始め、 口と鼻から血液を含む泡が漏れる。
 ・死後8~10日:血液が分解され、腹部の臓器にガスが蓄積するにつれて、体は緑色から赤色に変色する。
 ・死後数週間:爪と歯が抜け落ちる。
 ・死後1ヶ月:体が液化し始める。

ブチャの虐殺:衛星画像と動画が捏造され、虚偽の物語が広められた(要点)

2022年4月に起こった「ブチャの虐殺」について、ドンバス・インサイダーの記事。以前紹介した記事の続編だ。推理小説が好きな人にお薦め。
BUCHA MASSACRE – WHEN SATELLITE IMAGES AND VIDEOS ARE MANIPULATED TO TELL A FALSE STORY



 ロシア軍は2022/03/30にブチャからの完全撤退を終えたが、03/31にテレグラムに投稿されたブチャの街中の光景には、死体などひとつも写っていない。また、死体についての言及も無い

 テレグラム投稿から明らかになった別の情報では、キエフ軍がブチャに到着したのは、ボツマン司令官が主張する様に04/02ではなく、実際には04/01だった。これつまり04/01の動画に登場する死体に対してキエフ軍が責任を負っている可能性が高いことを示唆している。

 ボツマン司令官自身が投稿した動画では、男性が「私を殺さないで下さい」と言った後で音がしているが、銃声の様にも聞こえる。これはブチャでキエフ兵が「青い腕章を着けていない者(つまり民間人)」を殺害していたことを裏付ける証拠だ。

 ロシア軍との協力が疑われる人々がキエフ軍から虐待を受けた事実は、ウクライナ人自身が撮影した動画でも確認することが出来る。逮捕された男性達が兵士達に激しく殴られている。

 写真に写っている死体の幾つかの近くには、恐らくロシア軍が民間人に人道支援として与えたであろう食糧が写っている。これはキエフの浄化部隊が、ロシアから支援物資を受け取っただけの人も「ロシアの協力者」と見做して排除(殺害)した可能性を強く示唆している。

 ウクライナ国会議員アレクセイ・ジュラフコは、03/25にブチャを去った女性のインタビュー動画を公開したが、彼女はロシア軍から人道支援を貰ってから1時間後に自宅が爆撃されたと証言している。支援を受けた家はナチに報告されて標的にされたので、彼女は逃げる必要が有ることに気が付いたのだそうだ。



 NYタイムズが公開した衛星写真の問題に移ると、死体が確認されたと主張されている03/19(ロシア軍がまだブチャに居た時期)の写真は、それ以前の02/28の写真に比べて、何故か解像度が大分粗く、死体と言っても黒いシミが写っているだけで、本当に死体なのかどうかは不明だ。
 

 仮に03/19の時点で死体が存在していたとすると、それらの死体が発見されるまでに2週間は屋外に放置されていたことになる。死体は普通死後2〜3日で腐敗が始まる。しかも03/22〜23には気温は16℃まで上昇しており、腐敗は十分に進行していた筈だ。そうであれば発見された時点で、死体は内臓の腐敗ガスで膨れ上がり、赤黒い腐敗液が滲み出して周囲に強烈な悪臭を放っていた筈だ。そしてその間、蛆、野良犬、ネズミ、腐肉を漁る動物達が死体を貪り食う時間は十分に有った筈だ。だが死体は無傷でそこに残っていた。

 そして2週間も有れば周囲の住民達は、死体を放置せずに埋葬した筈だ(マリウポリの人々は爆撃の中でもそうした)。そしてロシア軍は、人々が埋葬を行うのを妨害しなかった

 またこれらの衛星写真が撮影された日付を、Rybar ブロガーチームは疑問視している。この衛星写真を提供した Maxar Technologies は、03/31のものしか提供出来なかったと証言している。だとすればそれはロシア軍がブチャから撤退し、キエフ当局がブチャに乗り込んで来た後の写真だ。



 ロイターが撮影した写真もかなり奇妙なものだ。死体がまだ真新しいものであることは見れば判る。死後長時間が経過していれば、皮膚は緑に、その後は黒く変色している筈だ。手の部分を見てみると、爪の下には血が溜まり、指の皮膚は暫く水に浸かっていた様にしわくちゃになっているが、掌の部分は普通だ。これは恐らくこの死体は元々仰向けに寝ていて、右手が浅い水溜りに浸かっていたことを示唆している。そして手を縛っている包帯も服も、非常に綺麗だ。2週間も路上に放置されていた死体がこれ程綺麗であることは有り得ない。
 

 死亡したサイクリストの写真も奇妙だ。手の部分をよく見ると、グローブがしっかり嵌っていない。普通はこんな状態で自転車には乗らない。恐らく死後硬直した後でグローブを嵌めようとしたので、指が曲がらなかったのではないだろうか。


 また、殆ど全ての死体は頭の上にフードを下ろしているか、俯せになった状態で撮影されている。彼等が頭を撃たれていたのなら、フードには血が付き、穴が開いている筈だが、その様な形跡は一切見られない。そして衣服の状態は良好で、これもおかしい。



 お次は、キエフ軍のドローンが、2022/03/03に、ロシア軍が民間人を撃った様子を撮影したと伝えられている動画。
Російські військові стріляють у бік людини в Бучі — відео з дрона | Суспільне Новини


 前提として、03/03にはそもそもブチャはキエフ軍の支配下に在った。

 天気予報では03/02〜03は雪が降っていたことになっているが、この動画の地面は乾いている。

 そして03/03の気温は1〜2℃程度で、気温が上昇して来るのはもっと後になってからだが、動画の男が移動している通りの左右の家々の庭では、草が緑に色付き始めている。

 従って、この動画は03/03に撮影されたものではあり得ないし、03/03だったとしたらそこに居たのはロシア軍ではなくキエフ軍だ。

パリとヴォルノヴァハ:NATOテロリズムの野蛮な顔(要点と補足)

国際弁護士クリストファー・ブラック氏の著書より、シャルリ・エブド襲撃事件の地政学的な意味について書かれた部分の要点を纏めてみた(細かい間違いは修正した)。




 2015/01/07、イスラム教徒に対する差別的な「風刺」で知られていたフランスの週間新聞、シャルリ・エブドが武装グループに襲撃され、12人が死亡した。普段は米軍やNATO軍が肌の黒いイスラム教徒を何十万、何百万と死に追いやっても全く気にしない西欧の政治指導者達が何十人もパリに集まってこれ見よがしに横断幕を掲げて行進し、何百万人もの市民がこの「表現の自由」の侵害に対して抗議の声を上げた。このテロに対しては後にアル=カイダが犯行声明を出した。

 襲撃事件から数日後、2015/01/13、ウクライナのドネツク南西に位置するヴォルノヴァハ市の検問所で、民間のバスが爆発して12人が死亡した。だが西洋メディアは連日シャルリの事件を一面で大騒ぎするばかりで、こちらの事件の方には全く反応はなかった。

 バスの運転手の証言では、バスの下で地雷が爆発したことが原因だった。キエフ政府は例によって地元の分離主義の武装グループの犯行だと断定し、爆発はグラッド・ミサイルによるものだと主張した。だがOSCE(欧州安全保障協力機構)が調査を行ったところ、爆発と同時に検問所に撃ち込まれたミサイルは、反ファシスト民兵が居た東ではなく、北から発射されたものだと判明した。

 パリでの殺人は世界中を震撼させたが、ウクライナでの殺人に対してはキエフ政府の国家テロを非難する声は上がらず、真相究明を求める大規模デモも起こらなかった。西洋諸国が支援するキエフ政府が、ドンバスの民間人、病院、学校、発電所や各種インフラに文字通り毎日砲撃を加えている現実は、西洋では全く無視された。



 ここで引っ掛かるのが、そもそもイスラム過激派は西洋の産物だと云うことだ。西洋の諜報部は自分達の次の標的が「道徳的に」劣った存在であることを示す為に、これら過激派を利用して来た歴史が有る。NATO軍や米軍に攻撃される標的は、予め必ず悪者としてプロパガンダ攻撃を受ける。手口は毎回同じで、騙される人は何度でも騙される。そうすることで「邪悪な敵」に対する攻撃は正当化されるか、黙認される。少なくとも市民からの抵抗は無力化される。

 シャルリの事件ではイスラム教徒がテロリストとして描かれた。ヴォルノヴァハの事件ではウクライナの分離主義者達がテロリストとして描かれた。構図は同じで、攻撃を正当化する為に、「標的を攻撃しなければならない道徳的な理由が存在する」と云うメッセージが人々の頭に叩き込まれるのだ。

 パリでのテロ事件を契機に、テロリストたるイスラム過激派の掃討を名目とした「対テロ作戦」が声高に叫ばれ始めたが、最も過激なイスラム過激派であるISISIが、主にシリアとイラクに展開していたことを考えると、ここから地政学的には非常に興味深い点が浮かび上がって来る。「対テロ作戦」を名目とした西洋諸国の軍事展開は、実質的には無法なシリア侵略に他ならない。そうなるとシリアはロシアの重要な同盟国なので、ロシアはシリアを守る為にアクションを起こさなければならなくなる。それと同時に、ロシアはNATOの東方拡大に対して自国の国境を守らなくてはならないし、それと連動してキエフ政権の国家テロの脅威に対して、隣接するドンバス地域の人々の安全をも確保しなければならない。偶然にも、パリとヴォルノヴァハでの2つのテロ事件は、ロシアに対して二正面作戦を迫ることになったのだ。

 この前年にはマイダン・クーデターやMH17便墜落事件、ソチ・オリンピックでのロシア・バッシング等、西洋でのロシア悪魔化キャンペーンが激化したことも思い起こしておくべきだろう。



 当時の西洋諸国の軍事状況を振り返ってみると、以下の様になる。

 ・シリアに展開するイスラム武装グループに関するプロパガンダが増加していた。

 ・NATO加盟国であるカナダと同盟国であるオーストラリアでも、イスラム教徒によるテロ事件が起こっていた。

 ・米議会は米帝自らの産物に他ならないISISと戦うと云う口実で、8万人の米兵をイラクに送るよう要求していた(本当の理由は東からシリアを侵略する為だ)。

 ・カナダの戦闘爆撃機部隊が中東に配備されていた。
 
 ・シャルリ襲撃事件の丁度前日、フランスの空母が中東に到着していた。
 
 ・2015/01/16、数々の国際戦犯法廷で「独裁者の戦争犯罪」を捏造した功績を買われて米国の戦争犯罪問題担当大使に任命されていたスティーブン・ラップが辞任した。彼はその後のインタビューで、アサド大統領を追放しない限り、シリアに平和は訪れないと発言した。

 ・2015/01/18、イスラエルはイラン革命防衛隊の将軍とヒズボラの戦闘員達を暗殺した。

 ・2015/01/20、バラク・オバマ米大統領は議会演説で、シリアのISIS掃討と、この取り組みの助けとなる「穏健な反体制派(moderate opposition。実際には中身はISISと地続き)」の支援について発言した。実質的にシリアに対して改めて宣戦布告した訳だ。

 


 これらの全ての展開は、シリアを指し示していた。他方ドンバスでは、ミンスク合意についての新たな話し合いの場が01/21に設けられる予定だった。だが、

 ・キエフ政権は60歳までの男性の動員を発表した。

 ・2015/01/07、キエフ政権のアルセニー・ヤツェニュク首相は、ソ連赤軍によるナチスドイツからのウクライナと欧州の解放は、「ロシアの侵略」だと発言した。

 ・NATOはキエフに武器とアドヴァイザーを送り続けた。

 ・2015/01/19、ロシアのグリゴリー・カラーシン外相は、ウクライナに問題に対して軍事的解決を図るのは大きな間違い、戦略的に見ても間違いであって、国家としてのウクライナにとって取り返しの付かない結果を齎すことになると警告した。

 ・2015/01/20、パリ警察はチェチェン出身の5人のロシア男性達を、テロ攻撃を計画していた容疑で逮捕した。

 ・NATOのファシスト達はロシアと交渉するフリをしながら、ロシア本国への攻撃に備える為の時間稼ぎを行なっていた。



 シャルリ襲撃事件が西洋の諜報部によって仕組まれたことを証明する直接的な証拠は無い。だが全てが偶然だと考えるには、NATOにとって余りにも都合の良い状況が揃っていた。事件は西洋の戦争屋共にとって実に恰好のタイミングで起こった。2001年の9.11後、ブッシュ政権(実質的には既にフセイン排除を決定していたPNACのメンバー)が事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した様に、西洋諸国の指導者達は、襲撃事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した。

中国は米国の主権侵害に対してソロモン諸島を助けている(要点)

ソロモン諸島に対する内政干渉の現状について、ブライアン・バーレティック氏の解説。
How China is Helping the Solomon Islands Fight Against US Encroachment



 2023/02/07、ソロモン諸島のマライタ州内での中国企業の活動を禁止し、ソロモン諸島との曾ての同盟相手であった台湾と緊密な関係を結んでいた州の首相ダニエル・スイダニ首相が、同国の中国との関係強化を批判したと云う理由で議会から追放された。

 ソロモン諸島は曾ては台湾の中華民国を承認していた数少ない国のひとつだったが、2019年からは中韓人民共和国こそが中国の正当な政府であると方針を切り替えている。その理由は経済的なもので、同国は中国がやがては米国を抜いて世界一の経済大国になると見ている。

 ソロモン諸島の最大の取引相手は中国。中国への輸出は65%で、米国は1%にも満たない。他方、中国からの輸入は32%。ソロモン諸島は中国との取引で多大な利益を上げている。


 米国は中国がソロモン諸島を侵害していると主張しているが、実際にはソロモン諸島の国益を無視して自らの中国包囲網に取り込もうと同国に圧力を掛けているのは米国の方だ。

 2022年、政府は総選挙を延期したが、野党側はこれを批判。マナセ・ソガヴァレ首相が、選挙に資金を提供すると云うオーストラリアからの申し出を断ったことを取り上げ、これを外国の干渉によるものだと批判した。だがこれは全く矛盾した話で、他国が選挙に資金提供することが「外国の干渉」でなかったとしたら何だと云うのだろう?

 ソロモン諸島政府は公共放送であるソロモン諸島放送公社を国有企業から外して商業的自由を与える代わりに、政府が完全に所有し資金提供することにして、メディアに対する権限を強化した。また政府は外国メディアが「反中国感情を広めている」と非難し、中国との関係を巡って政府が「不当に標的にされ」「中傷された」と訴えた。これは米国が同国の国益に反して、メディアを通じて台湾政府を承認するよう圧力を掛け続けていることに対応した措置だ。

 西洋諸国は2022年4月に中国がソロモン諸島と安全保障協定を結んだことを非難し、これにより野党が弾圧される、民主主義の危機だ、中国がこの地域に軍事的な足場を作ろうとしている、などと主張している。が、この非難からは文脈が抜け落ちている。

 首都ホニアラでは、「民主主義の為のマライタ(Malaita for Democracy/M4D)」と云う米国が支援する組織が暴力的な抗議行動を繰り返し、破壊活動や中国企業の焼き討ち等を行なっているので、治安を強化する必要が有るのだ。M4Dの要求は、台湾政府の再承認だが、M4Dはそのメンバーが最近の暴動で重要な役割を果たしたと云う理由で、違法組織に指定されている。ダニエル・スイダニもまた米国から支援され、資金提供を受けている。

 西洋諸国政府は「民主主義を破壊している」としてソロモン諸島政府を非難しているが、実際には非難されている中身は、外国の影響から自国の主権を守ろうとすることだ。

 米国は2020年に、分離を求めるマライタ州に2,500万ドルを提供することを約束した。この支援は内閣の承認を素っ飛ばして州に直接送られる為、当然ながら中央政府はこれに抗議し、支援を政治化しないよう求めている。これは2018年に州があらゆる国から受け取った支援額の50倍以上で、ソロモン諸島政府が台湾政府から中華人民共和国政府へ乗り換えてから支援が急増したことは、当然ながらワシントンが中国に対抗する為に、地政学的利益からやっていることなのではないかと云う懸念を生んでいる。M4Dが引き起こしている暴動はマライタ州の分離独立を巡って内戦に発展する可能性が有るので、米国はソロモン諸島に戦争を引き起こすことを躊躇ってはいないと云うことだ。

 暴動の後でスイダニは「ソロモン諸島は民主的な価値観を共有している為、台湾と提携すべきだ」とお決まりの文句を述べたが、AP通信が伝えた彼の写真を見ると、堂々と米国務省のフロント組織であるUSAIDのシャツを着ている。彼はUSAIDと行動を共にしている米国のNGO、ワールド・ヴィジョンからも資金提供を受けている。
Daniel Suidani

 M4Dは2020年に、米国のカラー革命組織のひとつである国際共和党研究所(IRI)を訪れている。この組織はCIAのフロント組織であるNEDを通じて米国政府から資金提供を受けており、世界中の標的とされた国々の反体制派メディアや野党政治家に資金提供を行なって、情報空間を支配することで選挙を乗っ取って、ワシントンの望む様な結果を導き出すことを仕事としている。この報道はIRIがマライタ州内で学校の指導者の育成、コミュニティ・ガヴァナンス、市民社会のネットワーキングに関連するプログラムに関与しており、住民投票をも支援していことを認めたと伝えている。これが他国による違法な内政干渉でなかったとしたら何なのだろう。

 2021年11月にマライタ州で起こった抗議行動は、大抵の抗議行動の様に自分達の生活に関わることについてではなく、ソロモン諸島中央政府がそれまでの台湾承認を翻して中華人民共和国に乗り換えたことに対してのものだった。ロイターの報道は、この暴動がM4Dによって引き起こされたものであることを伝えているが、この暴動によってチャイナタウン区域が破壊され、中国人の民間人達が殺害された。スイダニ首相は中国企業の立ち入りを禁止し、米国からの開発援助を受け入れているので、これはマライタ地方政府の方針とも一致する動きだった。

 IRIは暴動の後でマライタを訪れ、2022年に中国の影響力の拡大を警告する報告書にその成果を纏めているが、実際にはソロモン諸島の主権を侵害しているのは米国の方で、中国は寧ろエンパワーメントを行なっている。報告書は州に住む中国人少数派の腐敗について警告しているが、彼等は何世代も前からそこに住んでいる人々であって、別に最近になって中国から移住して来た訳ではないので、これは欧州で「ユダヤ人が全てを操っている!」と主張する様なものだ。米国は少数派差別を煽ってもいる訳だ。

 スイダニは公然とマライタ州の独立自治を呼び掛けているが、IRIはこれを支援していることを認めている。この明らかな内政干渉を「民主主義」とか謳っているのだから、彼等の考えに付き合うには、新しい辞書が必要になる。

 もうひとつ、この分離主義を煽り立てている偽人権団体 CIVICUS を見てみると、その2021/22年の年次報告書には、西洋諸国政府機関やカラー革命NGOから資金提供を受けていることがはっきりと記載されている。


 ソロモン諸島政府はこうした主権侵害の動きに対して抵抗しているのであって、中国が脅かしているのは米国の領土ではなく、米国のこうした他国に対する内政干渉工作だ。他のアジア諸国も多かれ少なかれ同様の選択肢を迫られており、それに応じて中国は益々近隣諸国の主権を守る為に活動することを求められることになるだろう。

 米国が他国を政治的に乗っ取る手口の基本パターンは大体決まっているので、例えば冷戦末期から特にこの20年近く、米国がウクライナで何をして来たかを理解しておくことは、今後アジア諸国や世界中で何が起こるかを予測する手助けになる。

南アフリカの英国の強制収容所(要点)

知られざる大英帝国の強制収容所について。
South Africa and the British concentration camps




 「強制収容所」と云うとナチスドイツが発明したかの様な印象が罷り通っているが、大英帝国はそれよりもっと前に強制収容所を作っている。

 第二次ボーア戦争(1899〜1902年)の際、英帝は難民キャンプを、村や町に残されたボーア人の女性と子供を収容する為の強制収容所に変えるよう命じた。

 被収容者達は意図的に殺害された訳ではないが、病気が蔓延したキャンプには食料が殆ど無く、状況の悪化が放置された結果、約26,000人のボーア人の女性と子供が死亡した。

 そしてリベラルな英国のメディアは白人のボーア人が被った苦難については憤慨して見せるが、先頭に巻き込まれた黒人達が収容されたキャンプについては殆ど語られることが無い。

 黒人収容所では約14,000人が死亡した。

 大英帝国の20世紀は、南アフリカでの大量殺戮で幕を開けた。

ウィンストン・チャーチルの人種観(要点)

人種に関するウィンストン・チャーチルの見解を纏めたWikipediaの記事の要点。
Racial views of Winston Churchill



 チャーチルは「より強く、より高度で、より世知に長けた」「アーリア人の」「文明国」が、「野蛮」で「未開の部族」「下等な存在」である非白人達を支配する責任を負っていると固く信じていた。

 非白人達は自らを統治する能力を持たず、「権利」「権力」も持っておらず、従って植民地帝国が彼等に対してどんな仕打ちをしたとしても(例えばイラク人に対する毒ガス使用)、それは「不正」ではあり得なかった。

 第二次大戦後になってこうしたあからさまな差別主義が世論の反感を買う様になってからも、チャーチルは例えば移民問題に関して"Keep England White(イングランドを白人だけのものに)"と云うスローガンを支持した。

 「史上最高の英国人」に選ばれたことも有るチャーチルは、紛れも無く大量殺人や人権弾圧を何とも思わない白人至上主義者だったが、当時の大英帝国では彼の様な差別主義者は有り触れていた。

 21世紀の今では、「劣った人種や民族」を直接名指しで差別することはNGの場合が多いが、これをロシアや中国やDPRKやイラン等の「劣った国」と云うオブラートに包めば、幾ら差別したところで殆どの英国人は全く気にしない。

英国諜報部がスンニ派聖職者階級を兵器化する手口(要点)

キット・クラレンバーグ氏の記事の要点。
How British intelligence weaponizes the Sunni clergy class



 The Cradleが入手したリークされた文書に拠ると、英国外務省は「暴力的過激主義への対抗」と云うキャンペーンの支援の下に公然と、イスラム教スンニ派のイスラム学者、イマーム、信徒に資金を提供し、訓練し、影響を与えようとして来た。より具体的には:

 ・表向きは「独立」したメディアやソーシャルメディア資産によるオン/オフラインの多チャンネル・プロパガンダ活動。

 ・「人工芝(草の根に見せ掛けた)」NGOやキャンペーン・グループの創設。

 ・過激派のメッセージに対する、事前に承認された「対抗物語(counter-narratives)」を公に広めるコミュニティ・リーダーへの資金提供。

 これらの支援は決して公にされず、参加者自身も自分が利用されていることに気が付いていないことが多い。

 2016年、"Imams Online"の親会社は英国政府の支援を受けているのではと云う疑惑に対してこれをきっぱり否定したが、これは全くの嘘だった訳だ。

 メッセージの目的は一例としてはパレスチナ問題に関するもので、西側が支援するイスラエルの民族浄化に対する正当な大衆の怒りを「宗教的義務としての非暴力と平和の追求」と云った美辞麗句によって抑え、シオニスト国家に対する暴力的な報復を抑止することだった。

 冷戦時代には同様の、宗教的指導者に対する信徒達の信頼を利用した「宗教活動の兵器化」プログラムによって中東の反共プロパガンダが広められたことが確認されている。

 外務省の請負業者のひとつは、スーダンだけで「300人以上のイマームを訓練」したことを自慢しているので、全体として相当広範なプロパガンダ・ネットワークが張り巡らされていると推測される。

アフガニスタンでの英国の軍事行動で64〜135人の子供が死亡:MOD補償金支払いの分析が明らかに(要点)

英軍はアフガニスタンでどれだけの子供を殺したのか?
Between 64 and 135 Children Killed in British Military Action in Afghanistan, Analysis of MOD Compensation Payments Reveals




 英国国防省の以前の発表では、アフガニスタンで確認された子供の死亡者は僅か16人に過ぎなかったが、情報開示請求によって英国軍が死亡補償金を支払ったケースを調査した結果、2007年4月から2012年12月までの間に、38の事件で64人の子供の死亡が確認された。

 但し「子供」とは明記されていないが、「息子」「娘」「甥」等と書かれているケースまで含めると(アフガニスタン人口の年齢の中央値は18歳!なので、未成年である確率は高い)、子供の死亡者数は約47件の事件で135人に上る可能性が有る。

 合計すると子供または子供と疑われる者を含む、大人と子供164人が、英国軍の攻撃によって死亡した。

 これらの攻撃が民間人や子供を意図的に標的にしたと云う証拠は全く無いが、各事件の状況の記録がそもそも杜撰だ。

 年齢が判明している子供の内、最年少は1歳、最年長は15歳で、平均は6歳。死因の約半数は空爆によるもの。

 大人を含む補償金の支払い総額144,593ポンドだが、子供だけに絞ると(27件の事件で36人死亡)、一人平均1,656ポンド(総額を割った平均2,380ポンドより低いが、双方の平均には怪我や物的損害への補償も含まれる)。

 日本円だと30万円にも大分足りない。人一人の値段としては信じられない程低い額だ。

 しかもこの数字は、骨の折れる補償プロセスを知っていて、それをパスする能力があり、地域の請求局の職員が請求を受け入れるのに十分な証拠を持っていたケースに限られるので、実際の死亡者数はこれより遙かに多いと推測される。

 しかも881件の申し立ての大部分は却下され、支払いを受け取ったのは1/4に過ぎない。英国軍が2014年に作戦を終了してからも、アフガニスタンの子供達は苦しみ続けている。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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