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南シナ海「侵略」の真相

労働者連盟の記事の抄訳。「中国は南シナ海を侵略しようとしている!」と云う西洋大手メディアや政治家達の主張は真実なのか? 結論ら言うと嘘。このプロパガンダに引っ掛かる理由は、この地域の歴史に関する知識の欠如、状況を相対化してみる想像力の欠如、周辺諸国の動向に関する情報の不足、と云ったところだろう。その点この記事は的確に纏めている。
“Aggression” in the South China Sea


 
 西洋の企業メディアの報道を額面通りに受け取るなら、中華人民共和国は南シナ海で「過剰な」海洋権益を主張し、同じく領有権を主張する近隣諸国をいじめ、紛争を引き起こしていることになる。

 が、西洋の企業メディアは米国が主導する帝国主義勢力の代弁者のひとつだ。彼等は反転した世界を描き出している。実際には、南シナ海はその名が示す通り、今まではずっと主に中国の領土内に収まっていた。

 このことは国際的に認知されて来たことだ。南シナ海が「突然」国際的な関心事になったのは、チベット、香港、新疆ウイグル自治区を巡る反中プロパガンダ・キャンペーンが事実上失敗したことを受けて、米国が中国に対する軍事的・政治的包囲網を拡大してからのことだ。

 西洋の支配層エリート達は、容赦無く台頭する中国の巨大な社会主義経済が2030年までに自分達の経済を超えるだろうと予測している。西洋のメディアが今南シナ海について懸念を示しているのは、そうした背景の中でのことだ。



漁業紛争

 南シナ海の領有権を主張する国同士の沿岸警備隊の間の衝突が度々騒がれているにも関わらず、漁船や沿岸・海域を巡る争いは世界中で比較的よく有ることだ。これらが激しい戦争にエスカレートすることは、仮令有ったとしても滅多に無い。

 南シナ海では、中華人民共和国、台湾(台湾は中国の一部であると云うのが国際社会の合意だ)、フィリピン、ヴェトナム、マレーシア、ブルネイの政府が、様々な地域に対して重複する領有権を主張している。

 南シナ海周辺諸国だけでなく、多くの国々の海事当局が長年に亘り、認められた海域内で違法漁船を発見し、体当たりしたり護送して退去させたり、更には沈没させたりして来た。

 これらの違法漁船は、東南アジア諸国から人身売買された労働者を使って、現代の奴隷制に従事していることが多い様だ。

 時々違法漁船を沈没させているのは中国当局だけではない。実際のところ、中国は近隣諸国と比較して、違法漁船の沈没数が圧倒的に少ない。

 ・2017年、インドネシアの特別海事部隊が、密猟漁船81隻を爆破、沈没させた。ボートの殆どはヴェトナム、フィリピン、マレーシアからのもので、中国から来たのは1隻だけだった。

 ・2021年、オーストラリアの海事当局が、同国のアッシュモア礁付近で漁業中のインドネシア船16隻を拿捕。13隻はその海域から護送したが、3隻は沈没させた。

 ・2023年、マレーシア海事執行局は裁判所によって(収穫物を含めて)押収されたヴェトナム漁船7隻を沈め、人工礁に変えた。これ以前は、侵入したトロール船に放火するだけの処分を行っていた。

 ・2023年、インドネシア海事当局は北ナトゥナ海とスラウェシ島海域で違法操業したとして船舶6隻を拿捕。内5隻はフィリピン船、1隻はヴェトナム船だった。

 ・2019年、ヴェトナム沿岸警備隊の船がインドネシア海軍の艦船に体当たりする事故が起きた。インドネシア海軍はヴェトナム漁船の進入を阻止しようとしていた。

 つまり南シナ海で洋生物資源を使用する権利を巡って、インドネシア、ヴェトナム、マレーシアの海軍や沿岸警備隊等の間で、比較的頻繁に衝突が続いているのだ。殆どの場合、近隣諸国の漁船に対して、体当たりしたり、沈没させたり、焼却したりと云った措置が行われることになる。これはもう何年も続いているのだが、中国はこの種の行動に関しては比較的マイナーな役割しか果たしていない。

 だが、西洋の企業メディアは、南シナ海でのインドネシア、マレーシア、ヴェトナムの「侵略」について騒ぎ立てたりはしない。彼等に拠れば、南シナ海で好戦的なのは何時も中国だけなのだ。



フィリピンの新たなる代理人

 ロドリゴ・ドゥテルテはフィリピン史上最も人気の有る大統領だった(最高支持率91%!)にも関わらず、米国とリベラル派は彼を権威主義的独裁者として批判した。

 ドゥテルテは任期の間は一貫して、如何なる状況に於ても中国とは戦争・紛争をしてはならないと強調し続けた。リベラル派と多くの自称「左派」はこれについて批判したが、その努力は最終的に実を結ぶことになった。

 ドゥテルテの後を襲った新大統領、フェルディナンド・マルコスJr.(独裁者マルコスの息子)はこの方針を転換し、対中国の戦争用に、米軍がフィリピンに新たに4つの基地を設置することを許可した。曾ては米国の植民地だった独立国家フィリピンは再び、米国に従属する代理国家にまで身をやつすことになった。
 
 1999年、フィリピン軍は第二次世界大戦時代の揚陸艦BRPシエラマドレ仁愛礁(Ren'ai Reef)で故意に座礁させた。恐らく何等かの基地を築く為だろう。


 1935年、当時の中華民国は仁愛礁を中国の不可分の領土であると公に宣言していたが、1983年に中華人民共和国は正式にその名称を仁愛礁(Ren’ai Jiao)に変更した。

 2023年8月、フィリピン軍は、BRPシエラマドレの孤立した隊員達に食料を供給すると云う中国との一時協定に従うフリをして、秘密裏に建築資材を移送していたことが発覚した。これは中国に対する明らかな挑発行為であって、中国海警局は補給船2隻とフィリピン沿岸警備隊の船2隻を追い払った。

 2021年に遡って、フィリピン政府は、係争中の南沙諸島内のウィットサン礁に中国漁船200隻が停泊していることに抗議した。中国当局は、漁船は強風から避難しているだけで漁業活動を行っておらず、これは極く普通のことだと主張した。だが米国政府と日豪加はフィリピン政府を支持し、中国の「海上民兵(maritime militia)」が集結することに懸念を表明した。言うまでもなく、この「海上民兵」と云うのは単なる漁船のことだ。

 ハーグの常設仲裁裁判所の2016年の判決については、西側の企業メディア報道では、南シナ海の一部に対する中国の主張を却下し、フィリピンを支持したと云うことになっている。しかし、当時のドゥテルテ大統領はこの判決は「誰を排除するものでもない」と述べ、全てのASEAN諸国に対し、自制と南シナ海の非軍事化を定めた2022年の締約国行動宣言を遵守するよう求めた。

 そもそも、仲介裁判所にはそうした問題に対する管轄権は無いし、この訴訟は(西洋メディアが主張している様に)フィリピン政府によって持ち込まれたものでもない。

 実際には、この裁判を率いていたのは米国に本拠を置く法律事務所フォーリー・ホーグの米国人弁護士、ポール・S・ライヒラーだった。つまり米国は中国封じ込めの為にフィリピンを利用したのだ。



国連海洋法条約(UNCLOS)

 国連海洋法条約に基付いて、海岸線を持つ国は海岸から12海里の領海と、200海里の排他的経済水域を有する権利を持つ。

 この条約は全ての東南アジア及び太平洋諸国を含む150ヵ国か国によって署名・批准されている(カンボジアだけは除く。こちらは署名はしたが批准はしていない)。

 最も注目すべき脱落は、41年間に亘ってこの条約から距離を置き続けている米国だ。

 だが、米国は南シナ海全域で軍艦による「航行の自由作戦」(FONOP)を実施する権利を主張している。米国は中国の「行き過ぎた海洋主張」に異議を申し立て、原則として全ての国に対する所謂「航行の自由」の権利を支持すると主張している。その法的根拠は米国自身が参加していない国連海洋法条約であるにも関わらず!!

 しかし、米国帝国主義の呆れた偽善はこれで終わらない。

 2023/08/24、米国国防総省はインドネシアとの共同報道声明を発表し、インドネシアと米国は中国の「広範な」海洋権益の主張が国際法、特に国連海洋法条約に違反するとの見解を共有したと述べた。

 が、これは全くの捏造だった。

 インドネシア国防大臣は、米国との共同声明や共同記者会見は無かったと釈明する羽目になった。そしてインドネシアは中国と良好な関係に在り、米国を尊重し、ロシアとの友好を求めていると強調した。インドネシアは非同盟国であって、全ての国と友好関係に在るとのことだった。

 米国に加え、英国、オランダフランスオーストラリアの帝国主義勢力は軍艦を使って、絶え間無く中国を煽り続けている。彼等は「航行の自由」の権利などと云う馬鹿げたことを主張しながら、絶えず南シナ海を行ったり来たりしており、台湾海峡を通るなどと云う暴挙も辞さない。

 仮に中国やロシアの軍艦が「航行の自由」を掲げて米国の東海岸を通過したり、英仏海峡を通過したり、オーストラリアの東海岸を行ったり来たりした場合、西洋諸国はどんな反応を示すだろうか。それは想像するしか無い。

 帝国主義勢力のやり口は、あらゆる手段で中国を軍事的に挑発し、その後中国が何等かの形でそれらに反応した瞬間に、「侵略だ!」と金切り声を上げると云うものだ。



戦争反対!

 2023/08/28に中国が「九段線」を十段線に延長した様に見える領土地図を発表した時、西洋メディアはびっくりしたフリをして警鐘を鳴らした

 実際には、余分な段線(ダッシュ)は台湾の北東側に描かれたものに過ぎなかったので、描かれている範囲が別に大きく変更した訳ではない。全ての西洋諸国を含む国際社会は、「ひとつの中国」原則の下、台湾は中国の一部であると公式に認めているので、大騒ぎしなければならない様なことは何も無かった筈だ。

 西洋政府のプロパガンダは、南シナ海の島々やサンゴ礁はこの地域の他の国々に近いから中国の領有権の主張は「行き過ぎ」だと主張しようとしているが、繰り返す様に南シナ海は南中国海(South China Sea)だ。中国はそこで2,000年前から活動している。
 
 更に中国は第二次世界大戦後、日本が占領していた島々を取り戻した。その後日本も、南シナ海の島々を中国の一部であると明記した地図を発行した。

 1950〜60年代、米国政府は南シナ海の測量を中国に繰り返し要請したが、これは南シナ海に於ける中国の主権を公に認めていたことと同義だ。

 その状況は今日、逆転している。

 中国は、広大な製造基盤と科学技術の進歩を土台として急速に世界第一の大国になりつつありるが、米国の帝国主義はライヴァルの台頭、況してやライヴァルに抜かれることを容認することは出来ない。

 中国は米国の利益追求第一主義とは異なり、主に人々のニーズに応える計画経済を実施しており、その社会主義経済政策は人類の明るい未来を予感させるものだ。

 残念ながら、ワシントンとその衛星諸国は、中国に対して戦争を準備することで対抗している。それは何億もの人々の死と、世界経済の事実上の崩壊、そして史上空前の危機を引き起こすことだろう。

 南シナ海で西洋が強化し続けている挑発行動は、どんな犠牲を払ってでも中国とのこうした軍事衝突を引き起こそうとする取り組みの最近のものに過ぎない。世界資本主義の基盤そのものを救うには、ワシントンは中国の社会主義支配に終止符を打たなければならないのだ。

 米国主導の帝国主義が世界戦争以外に齎すものが殆ど何も無いのであれば、そんな時代は最早過去のものとなるべきだ。東西の労働者達がこれに抗して団結すれば、戦争の脅威は消えるだろう。
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ベンガル湾に於けるロシアの軍事外交は地域安全保障のジレンマを緩和する(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023年11月現在、バングラデシュ、ミャンマー、インドの安全保障上のジレンマを緩和する上で、米国と中国には仲介役を務めるのは無理だが、ロシアなら出来る。
Russian Military Diplomacy In The Bay Of Bengal Alleviates The Regional Security Dilemma



 バングラデシュ、ミャンマー、インド。ベンガル湾を挟むこの3ヵ国全てと良好な軍事関係を築いているのはロシアだけだ。

 ロシアの最近の動きはこうだ。

 ・バングラデシュをロシア軍が半世紀振りに訪問
 ・ミャンマーとは初の軍事演習を実施
 ・インドともベンガル湾で演習を実施

 他方、米国と中国はどうかと言うと、

 ・米国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとは軍事関係を持たず、インドとの関係を優先している。

 ・中国:軍事的権益はバングラデシュに集中している。ミャンマーとの軍事関係を優先し、インドとは関係を持っていない。
 
 バングラデシュの現職のシェイク・ハシナ首相は、米国が自分に対してレジーム・チェンジ工作を画策していると非難したが、1月の次の選挙によって、彼女は追放されることになるかも知れない。

 同時に、ミャンマーの反国家勢力が数十年に及ぶ内戦に於て初めて首都を制圧した。この為軍指導部は、自国の「バルカン化」について警告した。

 両国についてはまた、物議を醸しているロヒンギャ問題の所為で関係が緊張した儘であることも思い出しておくべきだろう。

 南アジアに於けるこうした地政学的な不確実性の中で、他国の正当な利益を犠牲にすること無く全ての当事者達がプラグマティックに協力する為には、責任有る地域外の利害関係者の存在が不可欠だ。だが米国も中国も上で指摘した様にこの役割を果たすことは出来ない。その責任を果たすことが出来るのはロシアだけだ。

 ロシア海軍が3国と軍事協力していると云う事実は、ロシアがベンガル湾に何の利害持たない、責任有る地域外の利害関係者であることに、全員が同意していることを意味する(米国と中国の政策に対しては、彼等の一部は疑念を抱いている)。これは相互の信頼醸成に役立つ。

​ バングラデシュに関しては、ハシナ首相の警告にも関わらず、依然として米国及び中国との緊密な軍事関係を維持している。2024年初めに彼女が(民主的な投票にせよ非民主的なカラー革命にせよ)退陣する場合、外交政策がどう変わるかは不明だが、とにかくバングラデシュ国軍は現在、両国の間でバランスを取ろうとしている。

 ミャンマーとインドに関しては状況が全く異なる。ミャンマーは中国と軍事関係を持ち、米国との関係は無いが、インドは中国と間に領土問題を抱える一方、米国との関係は曾て無い程良好になっている(米国の属国に戻ったと云う意味ではない)。従ってミャンマーはインドと米国の軍事関係を脅威と考える可能性が有り、また逆にインドはミャンマーと中国との軍事関係を脅威と見做すかも知れない。これにより地域の安全保障上のジレンマが悪化することになる。

 にも関わらず、インドとミャンマーの関係は依然として友好的だ。これは部分的には、ロシアとの軍事関係が証明している様に、両国が互いのプラグマティズムに安心感を抱いていることが原因だと考えられる。軍事戦略上の共通点を得たお陰で、互いに対する疑念が緩和されたのだ。

 中国と米国の新冷戦の対立は、この地域を分断し、3国全ての客観的な国益を損なうかも知れなかった。が、このシナリオは、ロシアとの軍事戦略的関係を育むと云うプラグマティズムによって回避された。これは地域の安全保障のジレンマを管理する上で役立つ。

何故ゼレンスキーは突然、プーチンが少なくとも5回は自分を殺そうとしたなどと言い始めたのか?(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/11/20、ゼレンスキーは自分に対する「5、6回」の暗殺計画を生き延びたと主張したが、これは恐らく、パトロンである西洋を脅して軍事援助を続行させ、自分を切り捨ててザルジニーを支持することを思い止まらせ、ロシアとイスラエルとの関係に楔を打ち込もうとする為の嘘だった。
Why’d Zelensky All Of A Sudden Claim That Putin Tried To Kill Him At Least Five Times?



 2023/11/20、ゼレンスキーはサン紙のインタビューで、プーチン大統領による「5、6回」の暗殺計画(コードネームは「マイダン3」)を生き延びたと主張した。そして最初はCOVID-19の様に怖く見えたが、その後はCOVID-19の様に怖くなくなったと自慢した。
Zelensky reveals he's survived SIX assassination attempts since Russian invasion of Ukraine


 が、この芝居掛かった主張は、イスラエルのベネット元首相の証言と矛盾している。彼は2022年3月にキエフとロシアとの和平交渉の仲介役を頼まれた際、ゼレンスキーを殺したりはしないと云うプーチンの約束をゼレンスキーに電話で伝えたと報じられている。

 「彼はあなたを殺すつもりは無い。(そのことを)100%(確信している)。」

 ゼレンスキーの今回の発言を疑うべき理由は他にも有る。若しゼレンスキー暗殺計画が事実ならば、西洋大手メディアは間違い無くそれを吹聴して回るだろうからだ。何かにつけロシア全般、特にプーチンについて恐怖を煽りたがる彼等がこの話に飛び付かなかったこと自体が、この発言内容が単に真実ではないことを示唆している。

 では何故、ゼレンスキーは今、この様な主張をしたのだろうか。



 1)背景として、キエフの反攻が失敗し、西洋の備蓄が減少した結果、「ウクライナを使ったNATOの対ロシア代理戦争は終息しつつある模様」だと云うことだ。ゼレンスキーはパトロンの西洋を脅して、状況が変わっているのにウクライナに対する軍事援助を維持させようとしているのかも知れない。



 2)補足的な動機としては、ゼレンスキーはザルジニー総司令官との対立が深まる中、低下する国民の支持率を政権に繋ぎ止めようとしている、と云うのが考えられる。

 実際、彼は今回のインタビューでもその件に触れているし、サンはその部分はわざわざ別記事として纏めて読者の注目を惹こうとしている。ゼレンスキーはその別記事で、この対立が国を分断すると恐怖を煽り、政治的野心を持っているとされる無名の将軍達を叱責した。

 ゼレンスキーの今回の発言のタイミングを考えると、ゼレンスキーは西洋に、自分が反ロシアの手駒として有効であるとアピールすることで、自分が排除されるシナリオを抑止したかったのかも知れない。自分はプーチンが「5、6回」も暗殺したがる様な人物なのだから、若し西洋が自分ではなくザルジニーを支持する様な真似をすれば、それはプーチンの命令に従っているのも同然だと云う訳だ。



 3)可能性は低いが、排除は出来ないもうひとつの動機としては、ゼレンスキーは、プーチンがベネットに嘘を吐いた様に見せ掛けることで、ロシアとイスラエルとの仲を裂こうとしたことが考えられる。最新のイスラエル・ハマス戦争に於て、イスラエルはロシアに味方をするよう圧力を掛けているが、ロシアは中立の原則を維持している。ゼレンスキーがこの食い違いに付け込んで、相互不信を煽ろうとした可能性も考えられる。



 纏めると、ゼレンスキーのこの最新の嘘は、パトロンである西洋を脅して軍事援助を続行させ、自分を切り捨ててザルジニーを支持することを思い止まらせ、ロシアとイスラエルとの関係に楔を打ち込もうとするものだった。彼の主張に少しでも真実が含まれていたなら、西洋大手メディアはとっくの昔にこの陰謀を大々的に宣伝していただろうから、彼の発言は誰も信じるべきではない。

米国はウクライナでバイオラボの建設を再開(要点)

2023/04/07、ロシア国防省は、ウクライナのバイオラボで押収した米軍の軍事活動と生物活動に関連する文書の分析に関する説明会を行った。長いので今回は途中までだが、ざっくりその要点を並べてみる。
US Resumes Construction of Biolabs in Ukraine

 図1)。米国の生物兵器計画への参加者を示した図:米国国防総省の職員、国防総省の請負業者、米国のバイオテクノロジー企業、ウクライナの政府機関、民間企業が含まれている。
US military and biological activities1

 これらの関係者達の多くは2022/02/24のロシアの特別軍事作戦開始以降、責任から逃れてウクライナ領土を離れた。ペンタゴンの違法行為に関する情報漏洩を防ぐ為、米国政府はそれらを追跡し、連れ帰る為の次の2つの緊急措置を講じている。
 1)逃亡したスタッフの所在に関するデータの収集。
 2)大量破壊兵器開発の分野に於ける新たな専門家の探索。

 202304/24〜26には選ばれた候補者達が参加するオンライン訓練が開催され、ワルシャワで対面会議が予定されている。訓練キャンプ中、参加者達はウクライナ領土内及び国外での非公開プロジェクトに引き続き取り組むよう招かれる。

 米国国防脅威軽減局(DTRA)は少なくとも2025年までこの取り組みを続ける予定であり、ウクライナだけではなく、中央アジアとトランスコーカサス諸国の生物学者も活用するつもり。

 図2)ビッグファーマと米政府機関との共謀。
US military and biological activities2

 米大手製薬企業(ビッグファーマ)は、「指向進化(directed evolution)」とワクチンの開発及び生産に関連して、米国政府機関と共謀している。規制当局は安全性と品質基準を犠牲にして企業の商業的利益のためにロビー活動を行っており、規制手続きを経ずに医薬品の使用を許可することで、連邦政府機関職員はその後、製薬企業の重要な地位を占めることになる。

 この腐敗によって重篤な副作用を伴う医薬品の流通が可能になったが、非公開の報告書に拠れば、ファイザーやモデルナと云ったCOVID-19ワクチン・メーカーは、ワクチン接種後に重篤な心血管異常のリスクが高まることを最初から知っていた(つまり遺伝子ワクチンが有害であることを、今やロシア政府は把握しているし、そしてその事実を公にしている)。

 「副作用のリスクが未調査の非常に有毒な薬物に関するこの様な研究は、DTRAの要請により、ウクライナ国民とウクライナ軍兵士を対象に、如何なる倫理規範も無視して実施されたことに留意して下さい。利益の最大化を目指すアメリカの製薬業界にとって、こうしたアプローチは常態化している様です。そしてその実施は米国民主党によって強力に支持されいます。」

 2022/10/20付けの米宇専門家による作業部会の議事録に拠れば、ロシアの特別軍事作戦によってウクライナに於ける「生物的脅威削減プログラム」は強制停止された筈だが、現在は活動再開している。ワシントンはこの事実を隠蔽する為、プログラムの名称を「生物監視研究(Research on Biosurveillance)」に変更した。呼び方が変わっても中身は一緒で、軍部は危険な病原体の研究を継続し、生物材料を収集して米国に送る予定。

 同時に2023/03/14、米国務省は暴かれたこれらの情報を「ロシアの偽情報」と非難する速報をウェブサイトに掲載した。また米大手メディアは注意を逸らす為に、1950年代初頭にDPRKと中国に対する軍事的生物攻撃が準備されていたと云う確立した歴史的事実を正面から否定する国務省の声明を伝え、ロシア国防省が発表した情報は黙殺した。

 米軍のバイオラボやそこの危険物質に対する抗議行動は、ROK、アルメニア、キルギス、セルビア等、近年は活発化している。

 COVID-19パンデミックは武漢のバイオラボからのウィルス漏洩の結果発生した可能性が有るとする米国の声明は、奇妙なことにエネルギー省から出された。ロシア国防省の見解では、エネルギー省は軍事生物活動の分野に於て、国防総省と同等の存在だ。エネルギー省はまた2023年だけでも、「バイオハザード準備の為の仮想研究環境」プロジェクトの研究に1億500万ドルを注ぎ込んでいる。

 入手された情報を基に判断すると、米国指導部は軍事生物学プログラムの実施に保健分野に直接関係しない非中核政府機関を関与させることで、主な受益者である国防総省から注意を逸らしている。

ウクライナを使ったNATOの対ロシア代理戦争は終息しつつある模様(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023年11月下旬現在、急速に収束しつつあるあらゆる力関係を考慮すると、NATOの対ロシア代理戦争が終焉を迎えていることには、殆ど疑いの余地は無い。但し、それはに紛争が自動的に直ちに凍結することを意味する訳ではない。恐らく秘密交渉も含めて和平交渉は続くだろう(ちゃぶ台返しになる事態が起こらない限りは)。だが、この代理戦争のテンポは今後は異なったものになるだろう。
NATO’s Proxy War On Russia Through Ukraine Appears To Be Winding Down


 
 ウクライナを捨て駒にしたNATOの対ロシア代理戦争は、以下の条件が重なったことで危機に陥っている。

 ・キエフの反攻が大失敗
 ・「兵站競争/消耗戦」に於てロシアがNATOに圧倒的勝利。
 ・最新のイスラエル・ハマス戦争により、西洋がキエフよりもイスラエルへの援助を優先
 ・米国議会が機能不全
 ・もう直ぐ選挙シーズン



 今までの主な分析をざっとお浚いしておくと、

 ・08/18、A Vicious Blame Game Is Breaking Out After The Counteroffensive Predictably Failed

 ・08/20、米国の政策立案者達はキエフの反攻失敗後、自業自得のジレンマに陥っている(抄訳)

 ・08/25、The NYT & WSJ’s Critical Articles About Kiev’s Counteroffensive Explain Why It Failed

 ・09/03、カナダの一流メディアが、貧相な医療装備が100万のウクライナ部隊を危険に曝していることを暴露(抄訳)

 ・09/07、Poland’s Top Military Official Accidentally Discredited NATO On Several Counts

 ・09/09、WaPo Reported That Ukrainians Are Distrustful Of The West & Flirting With A Ceasefire

 ・09/14、Why Was Zelensky Overly Defensive In His Latest Interview With The Economist?

 ・09/14、ニューヨーク・タイムズは、ロシアが兵站競争/消耗戦に於てNATOを遙かに凌駕していることを認める(抄訳と補足)

 ・10/31、タイム誌がウクライナについて「政治的に不都合な」真実を明らかに(要点と補足)

 ・11/03、ウクライナ総司令官は最後の頼みの綱として米国の援助を請うている(抄訳)

 ・11/05、ニューヨーク・タイムズは、ゼレンスキー大統領とザルジニー総司令官との対立について皆に知って貰いたい(抄訳)

 ・11/08、最新の報道は、米露間で秘密協議が行われていることを示唆(抄訳)

 ・11/14、西洋市民は元NATO最高司令官のウクライナに関する言葉に耳を傾けるべきだ(抄訳)

 ・11/19、ゼレンスキーは今後自分に対して起こり得る抗議行動の信用を落とそうと必死だ(抄訳)


 
 そして、最近の一連の報道も、状況が劇的に変化したことを裏付けている(*リストが長いので英文記事を確認したい方は元記事のリンクを辿って下さい)。



 重要なのは以下の点だ。

 1)キエフに対する西洋の財政・軍事援助は消え去りつつある。
 2)ビクついたウクライナは支援継続を求めて今後の展開について恐怖を煽っている。
 3)ウクライナでは政治的対立が激化している。
 4)西洋はウクライナに対し、紛争を凍結させる為にロシアとの和平交渉を再開させるよう、圧力を掛けている。
 5)ゼレンスキーに対する草の根の抗議運動が近い内にウクライナ全土で勃発するかも知れない。

 何もかも、キエフが約束していたこととは全く異なっている。ほんの半年前、西洋はキエフの反攻の大成功について誇大宣伝を繰り返していた。だが9月の時点でニューヨーク・タイムズは、「ロシアは現在、今年初めに比べてウクライナの領土を200平方マイル近く多く支配している」と認めている。
 
 バイデンは11/18に「50ヵ国以上」が米国に加わってウクライナを武装させたと自慢したが、その「50ヵ国以上」の代理戦争の猛攻に、ロシアはたった1国だけで耐えることが出来たのだ。しかもロシアは支配地域を維持するだけではなく広げることに成功した。それに加えて西洋の備蓄は枯渇しており、残っている分はイスラエル行きだ。

 西洋の新冷戦ブロックが、この代理戦争に注ぎ込んだ1,600億ドル以上を無駄にしたくないと思った場合、通常型の現地介入(つまりNATO軍の違法な直接派遣)を行えと云う圧力を感じるかも知れない。その場合、計算違いによって第三次世界大戦が勃発するリスクは急増するだろうが、責任有る政策立案者であれば誰しも、その様な事態が起こることは望んでいない。結局のところ、西洋のエリートは過激かも知れないが、自殺願望が有る訳ではない。

 ロシア側は、ウクライナ側の前線が崩壊してロシア軍が突破口を開く事態になれば、どんなリスクが出来するであろうかを理解している。だからこそロシアは和平交渉再開に関するシグナルを送り続けている。

 だがゼレンスキーはこの点で西洋のパトロン達の要求に従うことを頑として拒んでおり、しかもザルジニー総司令官と対立を深めている。ザルジニーは今後西洋の承認を得て軍事クーデターを画策するか、それともゼレンスキーが和平交渉を再開する見返りとして解任される可能性が有る。前者の場合は彼は「ヒーロー」になり、後者の場合は「悪役」になるだろう。

 現在急速に収束しつつあるあらゆる力関係を考慮すると、NATOの対ロシア代理戦争が終焉を迎えていることには、殆ど疑いの余地は無い。但し、それはに紛争が自動的に直ちに凍結することを意味する訳ではない。恐らく秘密交渉も含めて和平交渉は続くだろう(ちゃぶ台返しになる事態が起こらない限りは)。だが、この代理戦争のテンポは今後は異なったものになるだろう。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

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