ドルの覇権
2023/11/27、ロシアのラブロフ外相は米国がドルを兵器化している現状について改めて警告を発し、西洋によって「自由競争や財産の不可侵と云った世界経済関係の基本的な法的基盤は破壊された」と指摘した(実際その通りだ)。そして対ロシア制裁がロシアを孤立させ、経済を麻痺させるどころか、寧ろ「「国際情勢に於ける多極化を強化」していると主張した。これは世界全体にとっては喜ばしい展開だろう。
US weaponizing dollar for global trade wars – Lavrov
2023/11/02の報道では、ロシアの金準備高は9月に過去最高を記録して2,360tとなった。これは米独伊仏に次いで世界第5位の保有量であり、中国の2,200tを上回る。別の報告では、今年第3四半期の世界最大の金購入国は中国であり、他の新興諸国の中でもインド、トルコ、ロシアが準備高を著しく増加させた。
Russia’s gold reserves hit record high – RIA
★RTの記事の要点。2023/10/05のヴァルダイ討論クラブに於けるプーチン大統領の、ドルについての発言のハイライト。プーチンは実に率直に「王様は裸だ」と指摘している。
プーチンはドル・ベースの金融システムは「徐々に崩壊」すると予測(要点)
ベン・ノートン氏のインタビューで、マイケル・ハドソン氏がポール・クルーグマンのドル擁護論をこてんぱんにやっつけている。クルーグマンはドルが兵器化されている現状を完全に無視しており、且つトートロジーによって「ドルが強いのはドルが強いからだ」と強弁している。
NY Times is wrong on dedollarization: Economist Michael Hudson debunks Paul Krugman’s dollar defense
マイケル・ハドソン「クルーグマンは、通貨の”言葉のあや”にしがみつく」
★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。BRICSサミットを控えてラブロフ外相が発表した記事は、BRICSが脱ドル化を推進している訳でも「反西洋」でもないと云うメッセージを再確認している。BRICSは西洋と違ってグローバル・サウス諸国にゼロサムの判断を強いている訳ではない。
ラブロフはBRICSのグローバルな役割についてロシアがどう構想しているかを説明した(抄訳)
2023/08/24にBRICSが一気に6ヵ国も拡大したことを受けて、アンドリュー・コリブコ氏は、これが使い易い人民元を重視する中国ブロックと、自国通貨を優先するインド・ブロックに分裂する可能性を指摘している。拡大自体は良いことだが、不安要因が無い訳ではない。
BRICS’ Expansion Is Beneficial But It Also Isn’t Without Strategic Challenges
★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。BRICSは脱ドル化を望んでいないし、反西洋でもない。多極化へ向けた変化は段階的に起こる長期的なプロセスであって、急激な変化が起こると過剰な期待を膨らませるべきではない。
BRICSは脱ドル化を望んでおらず、反西洋でもないことを公式に認めた(抄訳)
【推奨】米国の保守メディアの代表格であるFOXニュース内で、最近どんどん変わり種化して来ているタッカー・カールソンが、何故脱ドル化が米国にとって重要なのかを解説しているが、それに日本語字幕を付けて下さった方が居たので紹介する。基軸通貨としてのドルの覇権の崩壊が何故世界全体にとって非常に重要であるのかが初心者でも理解出来る。ドルの覇権のお陰で、米帝は無謀な軍事的冒険の天文学的費用を他国に広く薄く肩代わりさせたり、通貨自体を兵器化して他国を脅迫したり出来ていた訳だが、そうした魔力は2022年から急速に失われつつある(カールソンの言う様にいきなり始まった訳ではないが)。これを引き起こしていた連中が本気でロシアを倒せると思っていたのなら底抜けのバカなので、だからこそ事情を理解していた人達は、対ロシア制裁なるものはグレート・リセットのフェーズ2なのではないかと騒いだ訳だ。
タッカー・カールソン:米ドルが基軸通貨でなくなるとどうなるのか?
西洋諸国から非人道的な経済制裁を課されているジンバブエでは、現地通貨がドルに対してその価値の2/3以上を失って、アフリカで最も弱い通貨になってしまった為、深刻なインフレへの対策として金貨の使用を決定した。「民主主義の回復」とやらの為にジンバブエの人々を経済的に殺したい米国の思惑は頓挫した。
Zimbabwe fast-tracks de-dollarization of its mineral sector
2023年4月、今度はインドとバングラデシュが部分的な脱ドル化を発表。二国間貿易に於て、バングラデシュからインドへの輸出(2022年には20億ドル相当)は完全にルピーとタカに切り替わり、インドからバングラデシュへの輸出(2022年には136億9.000万ドル相当)の内20億ドル分はルピーで支払われる。手続き上の問題は残っているが、両国の銀行は互いに口座を開いて自国通貨での取引に備えている。この他インドはイランからの原油輸入とマレーシアとの貿易をルピー決済メカニズムに切り替えている。インドは現在、ロシアを含む18ヵ国のルピー貿易メカニズムを持っている。ルーブル、人民元に加えてルピーまでがドル離れを宣言したことの意味は大きい。
India and Bangladesh ditching dollar in trade – media
2023/03/31、インドは新たな対外貿易政策を発表。米ドルからの転換とルピーの世界通貨化を目指すのだそうだ。
India set to reduce use of US dollar in cross-border trade
2023/03/29、中国とブラジルは二国間貿易でドルを使用せず、互いの自国通過(元とレアル)で決済することで合意に達したと発表した。ドル離れが進めば通貨が兵器化されて無法な経済攻撃が横行することも減るので、これは世界の平和と繁栄にとっては間違い無く良いニュース。
China, Brazil strike deal to ditch dollar for trade
マイケル・ハドソン教授の分析。2023/03/08にシルバーバンク銀行が破綻、続く03/10にシリコンバレー銀行が破綻。史上最大の取り付け騒ぎが起き、後者は米国史上2番目に大きな銀行破綻だったが、ハドソン教授はこれを2008年のオバマ政権の銀行救済の必然的な帰結だったと見ている。FRBの異常な量的緩和とゼロ金利政策で金融部門は息を吹き返し、それどころか経済の二極化が更に進んだが、金利が上がって債権価格が下落したことでこの路線は行き詰まった。2023/03/10にはFRBの準備預金の急落が報じられているが、この先金利を大幅に引き下げること無くどうやって支払い能力を回復するのかは不明。そしてデリバティブ(カジノ資本主義の象徴)の規模は2008年より遙かに大きくなっている。
Michael Hudson: Why the US banking system is breaking up
2023/02/11の報道では、南スーダンの中央銀行である南スーダン銀行はドルの使用を禁止し、全ての商業契約を現地通貨である南スーダン・ポンドで行うよう指示したが、これは各方面に大打撃を与えていると報じられている。これは同国の経済危機への対策の一環だそうだ。
ADVERTISEMENT The East AfricanNewsEast Africa South Sudan abandons US dollar for local currency
コリブコ氏の論説。中国は、BRICSやSCOに参加従っているサウジアラビアのモハメド・ビン=サルマン皇太子の推進する包括的経済改革政策「ヴィジョン2030」を、一帯一路構想を補完するものとして見ている、と指摘している。これはサウジを石油輸出への依存から実体経済への投資へと重点を切り替える(健全な)戦略であり、これは悲惨なイエメン戦争の結果ではあるが、2022年12月に中国が500億ドルの投資を約束した後は全てが軌道に乗った。南北輸送回廊(NSTC)がイランとロシアを接続し、中国-中央アジア-西アジア経済回廊(CCAWAEC)がイランと中国を結ぶ状況に於て、サウジが脱ドル化してペトロユアン(人民元)を受け入れ、これらの国々を繋ぐのに貢献することは決定的な重要性を持つ。
The Iranian-Saudi Rapprochement Will Deal A Deathblow To The Dollar
★ドルの覇権の没落を更に確実するロシアとイランの動きについてのペペ・エスコバル氏の解説記事。
どうにも止まらない:ロシアとイランはドルをゴミ箱へ(要点)
ペトロダラー体制の終焉については、田中宇さんの解説も解り易い。中国憎し、ロシア憎しで世界の流れを読み損ねると、中長期的に見て日本にとっても本当に碌なことにはならないだろう。経済的主権を確立出来なければ、日本は依然として属国の儘だ。
中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める
ペペ・エスコバル氏の論説。2022年12月に世界最大の原油輸入国である中国の習近平主席がサウジアラビアを訪問したことで、石油とガスの取引を人民元で支払う「ペロトユアン」の時代の幕開けが宣言された。1971年にニクソンが金本位制から離脱し、1973年のオイルショックの後でワシントンが確立した「ペトロダラー」体制は、基軸通貨としてのドルが世界の石油取引をバックとして「フリーランチ」を享受することの出来る巨大通貨詐欺とも呼べるものだったが、それが遂に終焉へ向かって動き出した訳だ。SDGsは所詮詐欺なので、世界各国が所謂「化石燃料」から脱却することが有り得ない以上、新自由主義経済と資本主義の金融化、そしてアメリカ帝国の一極覇権を支えたこの仕組みは何時までも安泰の筈だったのだが、皮肉なことに2022年の狂った様な対ロシア制裁の暴威を目の当たりにして、世界の多くの国々は教訓を学ぶことになった:「ドルに頼っていたら危ない。米国の『ルールに基付く秩序』なるものは、最早ルールなど無く、次の標的は自分達かも知れない。」今やグローバルサウス諸国はBRICS+やSCOに殺到してこの巨大な地殻変動に乗り遅れないようにと懸命で、それぞれの経済的主権を確保しようとしている。「主権強化の基礎としてのユーラシアの選択」でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が述べた通り、西洋全体がこの流れを止めようとしても、今更止められるものではない。
Xi of Arabia and the petroyuan drive
2022/10/11、IMF調査局長のピエール・オリビエ・グリンシャ氏の会見より。世界が「恒久的な地政学的再編成」に直面している為、「債務危機の波」がグローバル・サウスに来ている可能性が有り、「世界経済は嵐の海に向かっている。」ドルに対する殆どの通貨の下落と金利の上昇により、政府と企業の両方がドル建て債務を返済するのが難しくなっているが、「最悪の事態はまだ来ていない。」「特に欧州でのエネルギー危機は、一時的なショックではない。戦争後のエネルギー供給の地政学的再編成は、広範かつ永続的。」他の殆どの通貨に対する米ドルの上昇は、世界的な経済危機を助長する可能性が有る。
地政学経済学者のラディカ・デサイ氏の分析では、金融化が進んだ現在の状況は1980年代のボルカー・ショックには程遠く、一部の国は間違い無く金融危機に直面する。FRBは金利引き上げを続けてはいるが、インフレ率がそれを上回っているので、実質金利はまだ技術的にはマイナスだ。世界はドル・クレジット主義に代わるより安全な金融システムを必要としている。
IMF warns of ‘wave of debt crises’ coming in Global South, with war, interest rate hikes, overvalued dollar
★マイケル・ハドソン氏のインタビュー。ドルの覇権は確実に終わる。それは既に昨年決まっていたことだ。
マイケル・ハドソン氏のインタビュー:『文明の運命』(抜粋)
2022/10/06、ドルの覇権の変遷を語る上で避けては通れない賢人、マイケル・ハドソン教授のインタビュー。「世界は二つの全く異なるタイプの経済に分裂しつつ」ある。つまり経済的自殺によって世界の頂点に立つことを目指す米帝と西洋のその属国諸国と、金融化ではなく「実体農業と産業資本形成を促進」する新たな国際通貨準備体制を支持する残りの国々とだ。
Michael Hudson: A roadmap to escape the west’s stranglehold
No. 1585 マイケル・ハドソン: 西側の支配から逃れるためのロードマップ
2022/10/26ロシアのプーチン大統領は、米国と西側諸国全体は「ドルを兵器として使用し、国際金融準備制度の信用を失墜」させたと非難。世界の取引基準通過としてのドルの覇権の衰退を公然と指摘した。まぁ通貨と云うのは信用が第一な訳で、それが米帝のその時々の政治的な思惑によってコロコロ操作されるなら、こんな危ない通貨を準備金に使いたくないと思う国が増えるのは当然だろう。そんなことすら理解出来ないアホ共が権力を握っているのが今の西側諸国だ。信用は失うのは簡単だが取り戻すのは難しい。
US discredited dollar by weaponizing it – Putin
★ニューズウィークの社説を解説したベン・ノートン氏の記事の要点と補足。他ならぬ帝国自身の蛮行によって、ドルに対する信頼が揺らいでおり、脱ドル化を求める声が高まっていることは最早隠し様が無い。
新冷戦を支持しているのは世界の13%だけ(要点と補足)
プーチン大統領はBRICSのビジネス・フォーラムで演説し、ロシアはブラジル、インド、中国、南アフリカと協力し、国際決済の信頼できる代替案を開発していると発言。BRICS諸国の銀行はSWIFTに代わるロシアの金融メッセージ転送システム(SPFS)に自由に接続出来る。またBRICS通貨のバスケットに基づいて国際準備通貨を作成する作業が進行中。制裁等の心配をすること無く安心して利用出来る法を守る通貨システムが整えば、西側の強盗金融システムは今までの様な好き勝手が出来なくなる。
Russian SWIFT replacement ready for BRICS – Putin
ロシアは外貨公債の支払いに関する新しい一時的なルールを設定。ロシアが負っているユーロ債は外貨価値に相当する額のルーブル(現在の外国為替レートで計算)で支払われれば履行されたものと見做す。1917年のボルシェビキ革命の後は、帝政ロシアの負債をボルシェビキ政権が払うの払わないので外交関係が大いに揉めたが、プーチン政権は信頼出来る借り手としての評判を守ることを重視している様だ(多少の金融動乱には耐えられる程の強い経済を持っていると云う自信が有ると云うことだろう)。
Russia sets rules for foreign debt payments
★現在のドルベースの経済システムから新しいより健全なグローバル経済システムへの移行を説く、セルゲイ・グラジエフ氏のインタビューの要点。
独占:ロシアのセルゲイ・グラジエフが新しいグローバル金融システムを紹介する(要点)
ロシアに対する西側の制裁は最早完全にロシア経済を健全な形で再確立すると共に欧州経済を破壊する方向に突き進んでいるが、ロシアの石油収入は3月の1.2兆ルーブルから4月の1.8兆ルーブルへと、約50%も跳ね上がった。ペトロダラーのカラクリは轟音を立てて崩壊しつつある。
What Sanctions? Russian Oil Revenues Soar 50%, Hitting A Record High
マイケル・ハドソン教授のインタビュー:
「これまでの国際法や金融政策の常識が通用しなくなった今、どのような通貨資産であっても完全にコントロールする必要がある。」
「我々がこの議論をしている間に、新しい多国間金融システムが構築されつつある。」
「対決というよりは、米国以外の世界は金融化された新自由主義に代わるものを開発するため、全く異なる2つの運営哲学が出来ることになる。」
「ロシアはすべて国際法に従って行うよう、非常に注意を払っています。」
「プーチン大統領やラブロフ氏は、欧州があまりに非文明的な行動をとることに嫌悪感を示している。つまり、ロシアにとって、そしてますます他の国々にとってもNATOヨーロッパと北米は、新たな門前の野蛮人なのである。」
「しかし全体的な解決はパッチワークではなく、システム全体のものである必要があります。国際金融システム、世界貿易、世界法廷、米国の拒否権のない国連など、広範囲に及ぶ制度的再編成なしにはこれらの具体的な問題を本当に解決することはできない。そして、このような制度改革にはその基本原理を提供する経済ドクトリンが必要です。新しい国際経済秩序は、非新自由主義的な原則に基づいて構築されるでしょう。それはかつて人々が、産業資本主義の進化を期待したときに社会主義と呼ばれていたものの延長線上にあるのです。」
No. 1427 マイケル・ハドソンへのインタビュー
The Saker interviews Michael Hudson
マイケル・ハドソン、リチャード・ウルフ両教授のインタビュー。ロシアへの制裁を巡って起きているのは脱ドル化による一極世界から多極化世界への歴史的地殻変動で、新自由主義vs産業資本主義と言い換えても良い。米帝が衰退するゴリアテ(GDP21兆ドル)ならロシアは台頭するダビデ(1.5兆ドル)だが、中国(14兆ドル)は数年以内に米帝を抜く。ウクライナに関しては、中立(非同盟)を許さない米帝のジャカルタ方式はロシア相手では通用しないので、ウクライナは中立化される。ウクライナのISISとナチを支援する為に国民に多大な犠牲を強いている米帝には先は無い。ツケを払わされるのは99%の無知で認知的に閉じ込められた市民達だ。
Consortium News Joe Lauria interviews Michael Hudson and Richard Wolff
【重要】天然ガス取引のルーブル建てへの切替えを発表するプーチンのスピーチ全文(英訳)。制裁によって傷付くのはロシアよりも寧ろ欧州で、軍産複合体以外の市場は下落し、資本は米国に流入している。そしてフォールアウトによって多くの人々が市民の利益を無視する為政者達の愚行のツケを払わされることになる。
President Putin’s Full Remarks at the Oil for Ruble announcement
ドル支配のカラクリを解き明かした主著"Superimperialism"の新版を出したばかりの経済学者、マイケル・ハドソン教授による論説。
「1945-2020年の戦後世界秩序がこれほど早く崩壊するとは誰も思っていなかった。どのような形になるかはまだ分からないが、真に新しい国際経済秩序が生まれつつある。しかし、「熊を突ついた」結果生じた米・NATOの対ロシア攻撃による対立は臨界質量レベルを超えてしまった。もはやウクライナだけの問題ではない。それは、世界の多くを米国・NATOの軌道から遠ざけるための引き金、触媒に過ぎない。」
アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか
エスコバル氏の論説。「ハロー、ロシアの金、中国のペトロユアン」。そのものズバリなタイトル。変動相場制とペトロダラーに基付くアメリカ帝国の経済的覇権はいよいよ終わりの始まりを迎えているのか?
Say Hello to Russian Gold and Chinese Petroyuan
ドルの覇権についての私のTwitterスレッド。
川流桃桜@UnmasktheEmpire @kawamomotwitt
US weaponizing dollar for global trade wars – Lavrov
2023/11/02の報道では、ロシアの金準備高は9月に過去最高を記録して2,360tとなった。これは米独伊仏に次いで世界第5位の保有量であり、中国の2,200tを上回る。別の報告では、今年第3四半期の世界最大の金購入国は中国であり、他の新興諸国の中でもインド、トルコ、ロシアが準備高を著しく増加させた。
Russia’s gold reserves hit record high – RIA
★RTの記事の要点。2023/10/05のヴァルダイ討論クラブに於けるプーチン大統領の、ドルについての発言のハイライト。プーチンは実に率直に「王様は裸だ」と指摘している。
プーチンはドル・ベースの金融システムは「徐々に崩壊」すると予測(要点)
ベン・ノートン氏のインタビューで、マイケル・ハドソン氏がポール・クルーグマンのドル擁護論をこてんぱんにやっつけている。クルーグマンはドルが兵器化されている現状を完全に無視しており、且つトートロジーによって「ドルが強いのはドルが強いからだ」と強弁している。
NY Times is wrong on dedollarization: Economist Michael Hudson debunks Paul Krugman’s dollar defense
マイケル・ハドソン「クルーグマンは、通貨の”言葉のあや”にしがみつく」
★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。BRICSサミットを控えてラブロフ外相が発表した記事は、BRICSが脱ドル化を推進している訳でも「反西洋」でもないと云うメッセージを再確認している。BRICSは西洋と違ってグローバル・サウス諸国にゼロサムの判断を強いている訳ではない。
ラブロフはBRICSのグローバルな役割についてロシアがどう構想しているかを説明した(抄訳)
2023/08/24にBRICSが一気に6ヵ国も拡大したことを受けて、アンドリュー・コリブコ氏は、これが使い易い人民元を重視する中国ブロックと、自国通貨を優先するインド・ブロックに分裂する可能性を指摘している。拡大自体は良いことだが、不安要因が無い訳ではない。
BRICS’ Expansion Is Beneficial But It Also Isn’t Without Strategic Challenges
★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。BRICSは脱ドル化を望んでいないし、反西洋でもない。多極化へ向けた変化は段階的に起こる長期的なプロセスであって、急激な変化が起こると過剰な期待を膨らませるべきではない。
BRICSは脱ドル化を望んでおらず、反西洋でもないことを公式に認めた(抄訳)
【推奨】米国の保守メディアの代表格であるFOXニュース内で、最近どんどん変わり種化して来ているタッカー・カールソンが、何故脱ドル化が米国にとって重要なのかを解説しているが、それに日本語字幕を付けて下さった方が居たので紹介する。基軸通貨としてのドルの覇権の崩壊が何故世界全体にとって非常に重要であるのかが初心者でも理解出来る。ドルの覇権のお陰で、米帝は無謀な軍事的冒険の天文学的費用を他国に広く薄く肩代わりさせたり、通貨自体を兵器化して他国を脅迫したり出来ていた訳だが、そうした魔力は2022年から急速に失われつつある(カールソンの言う様にいきなり始まった訳ではないが)。これを引き起こしていた連中が本気でロシアを倒せると思っていたのなら底抜けのバカなので、だからこそ事情を理解していた人達は、対ロシア制裁なるものはグレート・リセットのフェーズ2なのではないかと騒いだ訳だ。
タッカー・カールソン:米ドルが基軸通貨でなくなるとどうなるのか?
西洋諸国から非人道的な経済制裁を課されているジンバブエでは、現地通貨がドルに対してその価値の2/3以上を失って、アフリカで最も弱い通貨になってしまった為、深刻なインフレへの対策として金貨の使用を決定した。「民主主義の回復」とやらの為にジンバブエの人々を経済的に殺したい米国の思惑は頓挫した。
Zimbabwe fast-tracks de-dollarization of its mineral sector
2023年4月、今度はインドとバングラデシュが部分的な脱ドル化を発表。二国間貿易に於て、バングラデシュからインドへの輸出(2022年には20億ドル相当)は完全にルピーとタカに切り替わり、インドからバングラデシュへの輸出(2022年には136億9.000万ドル相当)の内20億ドル分はルピーで支払われる。手続き上の問題は残っているが、両国の銀行は互いに口座を開いて自国通貨での取引に備えている。この他インドはイランからの原油輸入とマレーシアとの貿易をルピー決済メカニズムに切り替えている。インドは現在、ロシアを含む18ヵ国のルピー貿易メカニズムを持っている。ルーブル、人民元に加えてルピーまでがドル離れを宣言したことの意味は大きい。
India and Bangladesh ditching dollar in trade – media
2023/03/31、インドは新たな対外貿易政策を発表。米ドルからの転換とルピーの世界通貨化を目指すのだそうだ。
India set to reduce use of US dollar in cross-border trade
2023/03/29、中国とブラジルは二国間貿易でドルを使用せず、互いの自国通過(元とレアル)で決済することで合意に達したと発表した。ドル離れが進めば通貨が兵器化されて無法な経済攻撃が横行することも減るので、これは世界の平和と繁栄にとっては間違い無く良いニュース。
China, Brazil strike deal to ditch dollar for trade
マイケル・ハドソン教授の分析。2023/03/08にシルバーバンク銀行が破綻、続く03/10にシリコンバレー銀行が破綻。史上最大の取り付け騒ぎが起き、後者は米国史上2番目に大きな銀行破綻だったが、ハドソン教授はこれを2008年のオバマ政権の銀行救済の必然的な帰結だったと見ている。FRBの異常な量的緩和とゼロ金利政策で金融部門は息を吹き返し、それどころか経済の二極化が更に進んだが、金利が上がって債権価格が下落したことでこの路線は行き詰まった。2023/03/10にはFRBの準備預金の急落が報じられているが、この先金利を大幅に引き下げること無くどうやって支払い能力を回復するのかは不明。そしてデリバティブ(カジノ資本主義の象徴)の規模は2008年より遙かに大きくなっている。
Michael Hudson: Why the US banking system is breaking up
2023/02/11の報道では、南スーダンの中央銀行である南スーダン銀行はドルの使用を禁止し、全ての商業契約を現地通貨である南スーダン・ポンドで行うよう指示したが、これは各方面に大打撃を与えていると報じられている。これは同国の経済危機への対策の一環だそうだ。
ADVERTISEMENT The East AfricanNewsEast Africa South Sudan abandons US dollar for local currency
コリブコ氏の論説。中国は、BRICSやSCOに参加従っているサウジアラビアのモハメド・ビン=サルマン皇太子の推進する包括的経済改革政策「ヴィジョン2030」を、一帯一路構想を補完するものとして見ている、と指摘している。これはサウジを石油輸出への依存から実体経済への投資へと重点を切り替える(健全な)戦略であり、これは悲惨なイエメン戦争の結果ではあるが、2022年12月に中国が500億ドルの投資を約束した後は全てが軌道に乗った。南北輸送回廊(NSTC)がイランとロシアを接続し、中国-中央アジア-西アジア経済回廊(CCAWAEC)がイランと中国を結ぶ状況に於て、サウジが脱ドル化してペトロユアン(人民元)を受け入れ、これらの国々を繋ぐのに貢献することは決定的な重要性を持つ。
The Iranian-Saudi Rapprochement Will Deal A Deathblow To The Dollar
★ドルの覇権の没落を更に確実するロシアとイランの動きについてのペペ・エスコバル氏の解説記事。
どうにも止まらない:ロシアとイランはドルをゴミ箱へ(要点)
ペトロダラー体制の終焉については、田中宇さんの解説も解り易い。中国憎し、ロシア憎しで世界の流れを読み損ねると、中長期的に見て日本にとっても本当に碌なことにはならないだろう。経済的主権を確立出来なければ、日本は依然として属国の儘だ。
中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める
ペペ・エスコバル氏の論説。2022年12月に世界最大の原油輸入国である中国の習近平主席がサウジアラビアを訪問したことで、石油とガスの取引を人民元で支払う「ペロトユアン」の時代の幕開けが宣言された。1971年にニクソンが金本位制から離脱し、1973年のオイルショックの後でワシントンが確立した「ペトロダラー」体制は、基軸通貨としてのドルが世界の石油取引をバックとして「フリーランチ」を享受することの出来る巨大通貨詐欺とも呼べるものだったが、それが遂に終焉へ向かって動き出した訳だ。SDGsは所詮詐欺なので、世界各国が所謂「化石燃料」から脱却することが有り得ない以上、新自由主義経済と資本主義の金融化、そしてアメリカ帝国の一極覇権を支えたこの仕組みは何時までも安泰の筈だったのだが、皮肉なことに2022年の狂った様な対ロシア制裁の暴威を目の当たりにして、世界の多くの国々は教訓を学ぶことになった:「ドルに頼っていたら危ない。米国の『ルールに基付く秩序』なるものは、最早ルールなど無く、次の標的は自分達かも知れない。」今やグローバルサウス諸国はBRICS+やSCOに殺到してこの巨大な地殻変動に乗り遅れないようにと懸命で、それぞれの経済的主権を確保しようとしている。「主権強化の基礎としてのユーラシアの選択」でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が述べた通り、西洋全体がこの流れを止めようとしても、今更止められるものではない。
Xi of Arabia and the petroyuan drive
2022/10/11、IMF調査局長のピエール・オリビエ・グリンシャ氏の会見より。世界が「恒久的な地政学的再編成」に直面している為、「債務危機の波」がグローバル・サウスに来ている可能性が有り、「世界経済は嵐の海に向かっている。」ドルに対する殆どの通貨の下落と金利の上昇により、政府と企業の両方がドル建て債務を返済するのが難しくなっているが、「最悪の事態はまだ来ていない。」「特に欧州でのエネルギー危機は、一時的なショックではない。戦争後のエネルギー供給の地政学的再編成は、広範かつ永続的。」他の殆どの通貨に対する米ドルの上昇は、世界的な経済危機を助長する可能性が有る。
地政学経済学者のラディカ・デサイ氏の分析では、金融化が進んだ現在の状況は1980年代のボルカー・ショックには程遠く、一部の国は間違い無く金融危機に直面する。FRBは金利引き上げを続けてはいるが、インフレ率がそれを上回っているので、実質金利はまだ技術的にはマイナスだ。世界はドル・クレジット主義に代わるより安全な金融システムを必要としている。
IMF warns of ‘wave of debt crises’ coming in Global South, with war, interest rate hikes, overvalued dollar
★マイケル・ハドソン氏のインタビュー。ドルの覇権は確実に終わる。それは既に昨年決まっていたことだ。
マイケル・ハドソン氏のインタビュー:『文明の運命』(抜粋)
2022/10/06、ドルの覇権の変遷を語る上で避けては通れない賢人、マイケル・ハドソン教授のインタビュー。「世界は二つの全く異なるタイプの経済に分裂しつつ」ある。つまり経済的自殺によって世界の頂点に立つことを目指す米帝と西洋のその属国諸国と、金融化ではなく「実体農業と産業資本形成を促進」する新たな国際通貨準備体制を支持する残りの国々とだ。
Michael Hudson: A roadmap to escape the west’s stranglehold
No. 1585 マイケル・ハドソン: 西側の支配から逃れるためのロードマップ
2022/10/26ロシアのプーチン大統領は、米国と西側諸国全体は「ドルを兵器として使用し、国際金融準備制度の信用を失墜」させたと非難。世界の取引基準通過としてのドルの覇権の衰退を公然と指摘した。まぁ通貨と云うのは信用が第一な訳で、それが米帝のその時々の政治的な思惑によってコロコロ操作されるなら、こんな危ない通貨を準備金に使いたくないと思う国が増えるのは当然だろう。そんなことすら理解出来ないアホ共が権力を握っているのが今の西側諸国だ。信用は失うのは簡単だが取り戻すのは難しい。
US discredited dollar by weaponizing it – Putin
★ニューズウィークの社説を解説したベン・ノートン氏の記事の要点と補足。他ならぬ帝国自身の蛮行によって、ドルに対する信頼が揺らいでおり、脱ドル化を求める声が高まっていることは最早隠し様が無い。
新冷戦を支持しているのは世界の13%だけ(要点と補足)
プーチン大統領はBRICSのビジネス・フォーラムで演説し、ロシアはブラジル、インド、中国、南アフリカと協力し、国際決済の信頼できる代替案を開発していると発言。BRICS諸国の銀行はSWIFTに代わるロシアの金融メッセージ転送システム(SPFS)に自由に接続出来る。またBRICS通貨のバスケットに基づいて国際準備通貨を作成する作業が進行中。制裁等の心配をすること無く安心して利用出来る法を守る通貨システムが整えば、西側の強盗金融システムは今までの様な好き勝手が出来なくなる。
Russian SWIFT replacement ready for BRICS – Putin
ロシアは外貨公債の支払いに関する新しい一時的なルールを設定。ロシアが負っているユーロ債は外貨価値に相当する額のルーブル(現在の外国為替レートで計算)で支払われれば履行されたものと見做す。1917年のボルシェビキ革命の後は、帝政ロシアの負債をボルシェビキ政権が払うの払わないので外交関係が大いに揉めたが、プーチン政権は信頼出来る借り手としての評判を守ることを重視している様だ(多少の金融動乱には耐えられる程の強い経済を持っていると云う自信が有ると云うことだろう)。
Russia sets rules for foreign debt payments
★現在のドルベースの経済システムから新しいより健全なグローバル経済システムへの移行を説く、セルゲイ・グラジエフ氏のインタビューの要点。
独占:ロシアのセルゲイ・グラジエフが新しいグローバル金融システムを紹介する(要点)
ロシアに対する西側の制裁は最早完全にロシア経済を健全な形で再確立すると共に欧州経済を破壊する方向に突き進んでいるが、ロシアの石油収入は3月の1.2兆ルーブルから4月の1.8兆ルーブルへと、約50%も跳ね上がった。ペトロダラーのカラクリは轟音を立てて崩壊しつつある。
What Sanctions? Russian Oil Revenues Soar 50%, Hitting A Record High
マイケル・ハドソン教授のインタビュー:
「これまでの国際法や金融政策の常識が通用しなくなった今、どのような通貨資産であっても完全にコントロールする必要がある。」
「我々がこの議論をしている間に、新しい多国間金融システムが構築されつつある。」
「対決というよりは、米国以外の世界は金融化された新自由主義に代わるものを開発するため、全く異なる2つの運営哲学が出来ることになる。」
「ロシアはすべて国際法に従って行うよう、非常に注意を払っています。」
「プーチン大統領やラブロフ氏は、欧州があまりに非文明的な行動をとることに嫌悪感を示している。つまり、ロシアにとって、そしてますます他の国々にとってもNATOヨーロッパと北米は、新たな門前の野蛮人なのである。」
「しかし全体的な解決はパッチワークではなく、システム全体のものである必要があります。国際金融システム、世界貿易、世界法廷、米国の拒否権のない国連など、広範囲に及ぶ制度的再編成なしにはこれらの具体的な問題を本当に解決することはできない。そして、このような制度改革にはその基本原理を提供する経済ドクトリンが必要です。新しい国際経済秩序は、非新自由主義的な原則に基づいて構築されるでしょう。それはかつて人々が、産業資本主義の進化を期待したときに社会主義と呼ばれていたものの延長線上にあるのです。」
No. 1427 マイケル・ハドソンへのインタビュー
The Saker interviews Michael Hudson
マイケル・ハドソン、リチャード・ウルフ両教授のインタビュー。ロシアへの制裁を巡って起きているのは脱ドル化による一極世界から多極化世界への歴史的地殻変動で、新自由主義vs産業資本主義と言い換えても良い。米帝が衰退するゴリアテ(GDP21兆ドル)ならロシアは台頭するダビデ(1.5兆ドル)だが、中国(14兆ドル)は数年以内に米帝を抜く。ウクライナに関しては、中立(非同盟)を許さない米帝のジャカルタ方式はロシア相手では通用しないので、ウクライナは中立化される。ウクライナのISISとナチを支援する為に国民に多大な犠牲を強いている米帝には先は無い。ツケを払わされるのは99%の無知で認知的に閉じ込められた市民達だ。
Consortium News Joe Lauria interviews Michael Hudson and Richard Wolff
【重要】天然ガス取引のルーブル建てへの切替えを発表するプーチンのスピーチ全文(英訳)。制裁によって傷付くのはロシアよりも寧ろ欧州で、軍産複合体以外の市場は下落し、資本は米国に流入している。そしてフォールアウトによって多くの人々が市民の利益を無視する為政者達の愚行のツケを払わされることになる。
President Putin’s Full Remarks at the Oil for Ruble announcement
ドル支配のカラクリを解き明かした主著"Superimperialism"の新版を出したばかりの経済学者、マイケル・ハドソン教授による論説。
「1945-2020年の戦後世界秩序がこれほど早く崩壊するとは誰も思っていなかった。どのような形になるかはまだ分からないが、真に新しい国際経済秩序が生まれつつある。しかし、「熊を突ついた」結果生じた米・NATOの対ロシア攻撃による対立は臨界質量レベルを超えてしまった。もはやウクライナだけの問題ではない。それは、世界の多くを米国・NATOの軌道から遠ざけるための引き金、触媒に過ぎない。」
アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか
エスコバル氏の論説。「ハロー、ロシアの金、中国のペトロユアン」。そのものズバリなタイトル。変動相場制とペトロダラーに基付くアメリカ帝国の経済的覇権はいよいよ終わりの始まりを迎えているのか?
Say Hello to Russian Gold and Chinese Petroyuan
ドルの覇権についての私のTwitterスレッド。
川流桃桜@UnmasktheEmpire @kawamomotwitt
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