安倍改憲勢力が改憲発議を行おうとする際には、それを通過させる為に周到な戦略を錬って来ます。それには国民の多くの理解が及んでいない、比較的抵抗の少なそうな条項から提出した方が成功の確率は高いです。いきなり「9条を改正して自衛隊を国防軍に」などと言うと反発も覚える国民も多いでしょうから、先ずはそうした反発を呼び込まない「理解を得易い」所から改正しようとするでしょう。両院2/3以上の議席が安倍改憲勢力で占められていますから、発議されれば先ず間違い無くその儘通るでしょう。そして国民の多くが「何だ、改憲なんて言っても実は大したことが無かったんだ」と安心したところで、徐々にハードルを上げて外堀を埋めて行き、頃合いを見計らって最後に本丸を攻めて行く筈です。
真っ先に候補に挙げられる条項は幾つか有りますが、最も危険なのは緊急事態条項です。これは憲法学者の木村草太氏が「内閣独裁条項」と呼んでいるもので、日本国内に於て安倍首相に全ての法を超越した無制限の権力を与えることを可能にする条項です。ナチスが1933年、政権獲得後に提出した「全権委任法」に匹敵するものだとも言われ、他の先進諸国の憲法に含まれる緊急事態条項の枠からは大きく逸脱したものです。緊急事態条項は現在のところ災害救助を名目にして国民の前に差し出され、現在その反応を伺われている状況ですが、どうも世論の危機意識は低いと云う印象を受けます。
恐らくはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用成績が発表される7/29までには、アベノミクスの大失点から国民の目を逸らす為に、何等かのショック・ドクトリンが連発される可能性が高いのではと私は見ていますが(安倍政権が支持されている最大の理由はやはり経済問題ですから)、その際緊急事態条項が発議されるシナリオは十分に考えられます。その場合も、国民の関心が薄い、抵抗の小さな部分から先ず通して行って、段階的にハードルを上げて行くと云う戦略が採られるのが妥当なところでしょう。
そんな中、東京新聞の以下の様な記事を見付けました。選挙期間中のこととて私も完全に見落としていたのですが、改憲へ向けての動きは既に選挙終了前から始まっていた様です。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016070801001728.html?ref=rank 「国会議員の任期延長」は直ぐには国民生活に影響を与える様な項目ではないので、国民に改憲の免疫をつけさせるにはうってつけです。ですが何等かの口実を設けて任期延長を繰り返せば、実質上無期限の独裁体制が可能となります。政権交代どころか選挙自体が無くなるのです。非常に警戒してこの動きに注目して行かなければなりません。